夜空に静かに浮かび、冷たくボクらを見下ろし、
昼空に静かに浮かび、隠れてボクらを暖かく見守り、
いつでもボクらを見ている、月。
昼と夜との顔は全く違うけれど、
その厳しさも、その優しさも、
月のもの。
唯厳しいだけでは月じゃない、
唯優しいだけでは月じゃない、
その厳しさも、その優しさも、
抱えているから、
月だもの。 . . . 本文を読む
ゆっくり、ゆっくり、
愛しさは、ゆっくり。
ゆっくり、ゆっくり、
優しさも、ゆっくり。
だけど、たまにはね、
怒りが、パシッと弾けるように、
哀しみが、ジワッと染み込むように、
ゆっくりな優しさや愛しさは、
パシッ、ジワッ、に負けてしまう。
けれど、それでもね、
ゆったり、ゆったり、
愛しさは、ゆったり。
ゆったり、ゆったり、
優しさも、ゆったり。 . . . 本文を読む
所定の順序でスイッチに触り、黒いボタンを軽く押す。
小さく、ピッ、と音が鳴ると、蓋が開く。
定期的にメンテナンスをしなければならない。
レンチとドライバを手に、中を開ける。
ゲージで測ると、矢張り締め具合が弛んでいる。
軽く締め直し、元通りに蓋をした。
鼻のボタンを押すと、漸くこいつは、ニャア、と鳴いた。 . . . 本文を読む
ゆっくりのんびり歩いていると、
一緒に散歩しても良いかね、
何処からとも無く聞こえてきた。
誰だろう、と周りを見渡すと、
こっちこっち、とまた声がする。
探してみても、結局誰か分からなかった。
そんな日もある。 . . . 本文を読む
噂話が嫌いなボクも、偶には聞いてみることにした。
ボクと瓜二つな人が、知らないところにいるという。
不思議なこともあると思ったけれど、
よく考えてみればそんなことは不思議じゃない。
だってそれは、記憶を無くしたボクかも知れないし、
来年のボクが迷い込んできたのかも知れないんだからさ。 . . . 本文を読む
歌ってみよう、
ほら、好きな歌のことを考えてごらん?
恥ずかしければハミングでもいい、
声が出せなければ心で奏でればいい、
歌ってみようよ。
みんなで一緒に歌えれば、
伝わっていくのは歌の中身じゃないんだ、
キミの幸せな気持ちが伝わっていくのさ、
だから、ね?
歌おうよ。 . . . 本文を読む
ずっと近くで見てきたキミ。
キミのことなら何でも知っている、そう思っていた。
でも遠くに離れ、会えなくなった今になって、
何も知らなかったことに気が付かされた。
どうすれば、もっと知ることができるのだろう?
そう思うだけで何かが変わる、そんな奇跡を望んでも、
奇跡は簡単に起こらない、
起こらないからこそ奇跡と呼ぶのだと、
感傷的な涙の輝きだけが悟っている。
今会ったら、ボクに何 . . . 本文を読む
寒い冬がやって来た、
全てを凍て付かせる冬がやって来た。
冬の魔女が凍える程に美しく、
ボクは何だか少し胸が高鳴り、
しかし依然として躯は凍えて動かない。
彼女に凍らされるなら構わない、
全ての命を奪い去る彼女の美貌に、
一瞬の苦痛と永遠の快楽に、
身を委ねんとするボクを、
その甘えを魔女は見透かし、
願いを聞き届けてはくれない。
お前には春の希望が待っているからと、
凍 . . . 本文を読む
幸運の女神には前髪しか生えていないから、
タイミング良く掴むのが重要なのさ、
そう教えられてきたけれど、
掴まれた幸運の女神は幸せなんだろうか?
余計なことを考えるなと叱られたけれど、
向こうの気持ちを無視して幸せになるなんてできやしない。
本当にボクを幸せにしてくれる女神なら、
走るのを止めて立ち止まってくれるだろうさ。
幸せになるのは、それからだって遅くないんじゃない? . . . 本文を読む
自分の気持ちにも自信を持てないボクからは、
キミを好きだという気持ちもあっさり消えてしまった。
ボクの知らないことが世間にはあまりにも多くて、
そうやってボクには新しいことを体験すると、
手は悴み歯は震え躯は凍え心は萎縮して、
ときどき挫けそうになってしまうんだ。 . . . 本文を読む
自分の中にある何か強固なものが壊れていった。
少しずつ少しずつ、ボクの魂は削られていった。
自分が傷付いたと思っていたけれど、
傷付いていたのはボクの魂ではなく、
もっと浅い部分だということに気が付いた。
生き続ける必要は無いけれど、
死ぬ必要はもっと無い。
新しい喜びを探して、
生きていこう。 . . . 本文を読む