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Meister von Grünfelder

日々の出来事を綴ります。たまにまともなことも書くかも知れません。

食道挿管 2

2009-11-23 18:42:10 | Anesthesie
 前回の補足。
 色々なところで大きく報道されているこのニュース。

 1つだけ書き足しておかねばならない。
 人の命が掛かっている問題で、実際に命を落とした人がいるということも分かっている。
 担当麻酔医を庇う訳ではない。


 しかし、100%絶対に安全な気管挿管というものはない。
 それくらい、気管挿管は難しいものなのだ。
 いや正確には、99%以上の患者において、気管挿管は全く安全な処置なのだ。だが、残りの僅か1%以下の中に、気管挿管という処置自体が命がけになる患者がいる。

 僕自身の経験したのは、Treacher-Collins症候群の小児だった。
 頭頸部の構造は教科書に典型的だが、マスクも容易に保持できる顎。それでは、と少量のプロポフォールで鎮静を掛けた途端、患者は意識を消失した。
 その瞬間のことだった。マスク換気が、突然不能になった。それならと喉頭鏡を掛けても、声帯など見えよう筈もない。いわゆるCICV(cannot intuvate, cannot ventilate; 挿管不能、換気不能)だ。簡潔に言えば、医原性の窒息。
 だが幸いごく少量のプロポフォールであったため、患者は速やかに自発呼吸を再開した。
 結局その患者はエアウェイスコープと気管支鏡を併用して難なく挿管が可能であった。

 が、一歩間違えれば患者を失っていたことは事実である。


 100%の安全など、存在しないのだ。
 我々麻酔科医こそ、それを肝に銘じている人種だと思う。

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