見守っているヤツがいる、
唯見守っているヤツがいる。
楽しいときに一緒に楽しみもせず、
苦しいときに励ましもせず、
ひたすら見守っているヤツだ。
だからって観察している訳じゃない、
ただただ見守っているヤツがいるのさ。 . . . 本文を読む
都会に行けば自分の夢を叶えられる、
あのコはそう言い残して町を飛び出した。
妥協して夢を見付けて幸せになるのと、
叶わない夢を追い続けて幸せになるのと。
あのコは追い続けることを選んだのさ。 . . . 本文を読む
日常に骨の髄まで浸かり切っていると、
例えば水の味が変わったり、
空気が余所余所しかったり、
少し環境が変わっただけで大慌てさ。
見てご覧よ、
足の形が変わったら靴も要らないから。 . . . 本文を読む
近くで見ればあれ程汚れている都会も、
夜空から遠く眺めれば、
漆黒の中僅か輝く一握の星に過ぎない。
遠く眺むれば美しい星界の輝石も、
内から見れば汚れきっているのだろうか。
Schredinger の猫の如く、
何物にも関わらぬことに拠ってのみ安穏と居る意志、
或いはautomatonの様に、
干渉を受けねば自身の無為を証明してしまう恐怖。 . . . 本文を読む
未だか未だかと待っている、
首を長くして待っている。
何を待っているのかも忘れ、
いつまで待つのかも知れず、
唯待ち続けている。
待つという、眺める作業が楽しいのか、
唯待ち続ける。 . . . 本文を読む
コンパスはいつも真面目だ。
その針はいつだって頑なに真っ直ぐだから、
みんなは少しばかり苦手に思ってる。
けれどひたむきに真っ直ぐなその針は、
誰もが曲がったときでも変わらないから、
みんな実は頼りにしてるんだ。 . . . 本文を読む
そんなことも知らないの? そう言ってキミは笑う。
ボクの知っていることなんてほんの僅かだし、
ボクが一生を懸けて知ることだってちっぽけなもんさ。
そんなことも知らないよ! そう言ってボクも笑う。
そうしてボクとキミと、寝転がって大笑い。 . . . 本文を読む
冬の魔女が支配する荒野は、死が支配する世界だ。
生物は死に絶え、どこにも見当たらない。
しかし地の底には潜んでいるものがいて、
春が来るのを静かに待っている。
少しでも死が油断したならば、暴れてやろう、
そうして虎視眈々と狙っているのだ。
春はもう二度と来ないかも知れないのに。
唯そうして待ち続けることができるのは、
醒めない夢はない、そう信じる希望があるから。 . . . 本文を読む
ボクの未来はこっち、と
指し示すものがあったらどんなにか楽だろう。
だって、何も考えずとも良いじゃないか、
黙って従っていれば成功するわけだ。
失敗したって、結局ボクの所為じゃない、
そいつが変なことをいうから悪いんだもの。
ボクの未来はあっち、と
指し示すものがあったらどんなにか苦痛だろう。
だって、どんなに足掻いても徒労に過ぎない。
幾ら抵抗しても、悲劇の結末が口を開けて待 . . . 本文を読む
読みかけの推理小説を開くと、挿し絵の男がこちらを向く。
「犯人は、探偵の友達だぜ」
読む気も失せ、腹が立って力一杯本を閉じる。
「ぎゃあ!」
中からの悲鳴に少しだけ溜飲が下がったかと思えば、
「…おっと、被害者の真似だからな」
口の減らない奴だ。 . . . 本文を読む
海淵の更に奥底から幽かに響いてくる声がある、
オマエは何物か、そう問い掛ける声がある。
未だ答えを知らないモノは唯立ち尽くすしかない、
その声に怯え嘖まれ、力尽き息絶えるしかない。
天空の更に高くから微かに響いてくる声がある、
オマエは何を為すものか、そう問い掛ける声がある。
既に答えを知る者は強く答えを叫ぶ、
その声を凌駕する自身と自信を蓄えている故に。 . . . 本文を読む
キミに良く似た人は、勿論世の中にたくさんいるさ。
でもそれは違う。
例えば、毎日使っているボールペン。
一所懸命書き物をしている合間に、ふとしたことから落としてしまう。
ぶつかった拍子に、先のボールが詰まってインクが出なくなる。
特注のペンだけれど、中の芯を買い換えれば良い。
とても高価なものだけれど、また使えるようになるんだ。
注文してから2週間も掛かるけれど、また使えるようにな . . . 本文を読む