不思議活性

ミレーと私  1



  『ミレーと私』

  はじめに

 私がジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)の絵画について、何か書こうと思ったのは、1984年(昭和59年)発行の『Millet』ミレー展図録を本棚から再び手にしたことによるのです。記憶は曖昧で、この『田園の抒情と祈り・ミレー展』を見たのは、1984年の東京展だったか、1985年の甲府展だったか、私が30歳か31歳の時でした。
 リタイア生活の私は、本棚にある若かりし頃、手に入れた絵画関係の本を時々取り出してはその若かりし頃の自分に帰ってみるのでした。
 若かりし28歳から47歳の頃、私は独学で油絵を時々描いていたのでした。そんな絵に対するあこがれの一ページがミレー展との出会いだったのです。実際には、その『ミレー展図録』は、絵の部分を見ていただけで、文字になった解説を、あれから40年になろうとする今、読んでいるのでした。

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 いわゆるミレー的なるものということに関して、バルビゾン派という言葉が浮んできます。バルビゾン派とは 1830年ごろからフランスのバルビゾン村に現れた「イーゼルにキャンバスを入れて風景画や風俗画を描く」集団です。 彼らの特徴はとにかくあるがまま、見たままの姿を描くということでした。 これを「自然主義」といいますと。
 そして、バルビゾン派の中で最も風景ではなく、人物画に専念した画家。 家族など身近な人々を描いた慈しみと愛情あふれる作品が特徴で、農民のリアルな暮らしの生命感あるミレーの画風は、後世の画家に大きな影響をあたえたと。
 また、「農民画家」と呼ばれたミレーは、自然や大地と共に生きる農民の姿を、崇高な宗教的感情をこめて描いたことで、同じく農耕民である私たち日本人には馴染みやすく、大正時代の白樺派の作家たちからも支持されていたほど、日本でも早くから人気のある画家ということ・・・・。
 その、ミレーの油彩画は、約400点と言われて、そのほか、パステル画200点、水彩画300点、素描2000点を描いていると、その数の多さに驚きの私です。

 で、私なりのミレー的なるものですが。

 1840-41年頃制作の『自画像』をみると、アカデミックで古典的ですが、1852-53年頃の制作の『杖に倚る羊飼いの女』には、丸みをおびた羊飼いの女が描かれ、背景の柔らかな描写とともに、まさしく私にとってミレー的であるのですが、これはほとんどの人がそのように思うのではないのでしょうか。
 あまりにも有名なミレーの『晩鐘』(1855-57年)も、二人の丸みをおびた人物がうつむいて祈りを捧げる姿と、傍らの突きたてられた鍬や手押し車なども丸みをおびて柔らかな背景とともに描かれています。
 ミレー自身は知的でストイックであったかも知れませんが、ミレーの描く人物や風景は、なぜか穏やかでやわらかくあたたかな雰囲気に包まれているように思うのです。

 そのことについて、今回、『田園の抒情と祈り・ミレー展』の本のなかに、まさしく、そのことについて、次のように紹介されていました。

 昭和24年『ミレー』を公刊した植田寿蔵氏の言葉より。

「彼の農婦と子供たちは、原則的に丸らかな頭巾をかぶり、農夫は多く縁の萎えた低い帽子をかぶっている。彼らはすべて丸らかな輪郭を持つ木靴をはいている。衣服の輪郭のまがる部分は、最も多くやはらかい丸さをもっている。親しみぶかいやさしさをよび生かす心をもっている。」

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 それでは、いくつかのミレーの絵画作品の紹介ですが、本からの紹介ですので、色彩など原画とはだいぶ違っているかも知れませんが、自分がミレーの絵画に感じた思いのようなものを少しでも感じていただけたらなと。
 尚、解説は、カタログより転載させていただきました。

 『杖に倚る羊飼いの女』  1852-1853年



「杖に倚る羊飼いの女」―樹や岩や柵の陰にひとりの羊飼いの女が立ち、そのうしろの広がった平原で羊は草を食べている― は、ミレーが何度もくりかえすようになった主題である。
 本作品は、ミレーが早くに描いた物哀しげな羊飼いの女の姿に起源を持っている。羊飼いの女は18,19世紀のフランスでは一般的な主題で、性的に犠牲になったものの象徴としてよく扱われた。ミレーはサンシェ宛の手紙で何度でも彼女たちに対する理解の必要性を説いており、作品の上では逆に道徳的正義の概念としてこれを描いている。

・続きは次回に・・・・。



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