囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

黒白つける?白黒つける?

2020年06月04日 | 雑観の森/芸術・スポーツ

 

「物事の正邪、善悪、是非をはっきりさせる」

という意味で、古くから使われてきたのは

黒白(こくびゃく)をつける」だった。

いまはどうか。

白黒(しろくろ)をつける」の方が一般的か。

どこで、どうなったのかは浅学にして不知だが、

どうやら、どちらも正解のようである。


 

なぜ下手が黒を持つようになったのか ~ 色にはイロがイロイロあってカオスの世界 の巻】
 

 

■20世紀の初め、百年前まで。

中国の碁は、下手がを持って打っていた。

古代中国では、「白衣」は無位無官の平民服。

白人」「白丁」は、普通の人を指した。

平凡・その他大勢・下位の者、というニュアンスの色。

 

だってエラソーなことはいえない。

」の原義は、炊事や暖房にあって

「煙が窓から出て、くすぶった色」からきている。

パッとしない色だったのである。

 

■しかし「」は「玄」に通じる。

「玄」という色は、赤みががかった黒。

天の色、奥深い色、といつしか考えられるようになった。

「奥深く、はかり知れない状態」を「幽玄」と言う。

現在の日本棋院の最上等対局室は「幽玄の間」と命名され、

最高峰の芸を展開する場である。

 
「素人」「玄人」という言葉もある。

「素」は色の付いていないい布から

「モノゴトの経験が乏しい状態」にと後退した。

「玄」は何度も染め返したい色という解釈から

「モノゴトの経験豊富なさま」と評価された。

素人はアマ、玄人はプロの意である。

 

■中国から発し、日本の江戸期に急発展した囲碁は

昭和の頃までは世界をリードする立場にあった。

下手(弱い方)がを持ち先番、

上手(強い方)がを持ち後手番、

と古くから決まっていた。

世襲制名人は必ずを持った。

 

日本人の好きな色がだったことによる。

万葉集の中に使われているは四割を占め、

御撰和歌集では半数を超えているという研究者もいる。

昭和の頃まで、は上位の色だったのだ。

 

ファッションの世界で

の価値を劇的に浮上させたのは

ココ・シャネル(1883~1971年)だが、

世界的潮流のなかで日本も例外ではなく、

ここにきて混沌としているといえようか。

 

         ◇

 

■最後に、囲碁の話に戻しておきたい。

あなたは盤を前にして

を持ちたい?

を持ちたい?

コミ6目半の今

わたしはを持ちたい。

は焦ってしまい、どこかでしくじる。

はゆっくり落ち着いて打てるからだ。

もしコミが7目半にでもなったら、

いったいどうなってしまうのか。

 

 


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