昨年、近江地方に旅行に行った。目的は、私は近江の城めぐり、妻は十一面観音めぐりだ。
私の城めぐりについてはいまさら言うまでもないが、妻は白洲正子のファンでその著作から十一面観音に興味を持ったという。
意外であった。
私の目的である城めぐりは、彦根城、安土城、八幡山城、観音寺城、長浜城、ついでに京都の二条城と100名城に数えられる4城を含めて4日間で6城を攻めることができたのは私としては大きな成果であった。
(ただし、安土城は時間の都合上で本丸を攻め落とすことは出来なかった。)
妻も目当てであったお二人の観音様に拝謁することができ、実り大きい旅であった。
しかし旅日記が本稿の目的ではない。
レンタカーでの行程の最後にどこへ行こうかということになり、地元ゆかりの建築家ボーリーズの設計で豊郷町立豊郷小学校旧校舎というのが人気らしいというので行ってみた。
閉館時間が過ぎていたので、建物内は見学できなかったが一見、まあよくある近代歴史的建造物というやつで、素晴らしいものではあるとは思うが、正直言ってびっくりするほどのものでもない。
で、なぜ人気かというと、どうやら学園ものアニメのモデルになっているらしい。そのアニメとは、女子高生にひそかなバンドブームを起こした「けいおん!」である。で、ここからが本題。、、、、、、、、、、、、、、、、相変わらず、枕が長い、というか、無駄話が多い、というか、、、
ある日、レンタルビデオ屋で「けいおん!」が目についた。ああ、あのボーリーズの小学校がモデルになっているアニメだなと思って通り過ぎた。巻数はかなりあったような気がする。ざっと15-20巻はあったと思う。
別の日にまたレンタルビデオ屋に行った。その時は目的の映画があったのだが、残念ながら貸出し中だった。そしてまた「けいおん!」が目に付いた。今度は手に取ってみた。
1巻の収録エピソード数は30分ものが2話で、再生時間は48分ほど。どうやら、部員が全員卒業して廃部寸前の軽音部に音楽未経験者の平沢唯他4人の1年生が入部し、軽音部を続けるというよくある青春サクセスコメディだ。スイングガールズ、スクールオブロック、フラガールなんかと類似の分野だと思う。
おっさんにはちと恥ずかしかったが、面白そうなので、試しに2巻借りてみた。
で、意外に面白かったので、続けて借りてしまった。
まあ、女子高生があまり練習はしないで部室でお菓子を食べてまったりしていることが多いのは少々だるいが、ところどころマニアックなシーンがちょっとロック世代のおじさんにはしみるところがある。
例えば、
音楽素人のギター担当唯がドラムスの律に
「好きなギタリストは?」
と聞かれて、
「ジ、、」
というと、
「ジミヘン、ジェフ・ベック、それともジミーページ?」
「ギタリストってジで始まる人が多いねえ、、」
と畳み込まれる。これを見ている若い子らの何パーセントがここで笑えるかと思ってしまう。
学生時代のバンド経験を隠している先生がギターを渡さられるといきなり弾きまくり、
「サンバーストでマホガニーのレスポール、ハンバッキンの音がたまらない。」
と満足げにする。若い子らの理解度はさらに下がるな。
さらに1年後、唯たちが2年生になるとギター経験者である新入生の梓が入部し唯と一緒に練習をすることになる。
後輩ながら経験者の梓が唯のギターに、アドバスをする。
「カッティングとチョーキングをするといいですよ。」
「カッティング?チョーキング?それなあに?」
梓はそんな基本テクニックも知らないのかとあきれるが、実は唯は名前は知らないがそのテクニックを習得していることに少々、驚く。
梓が今はやりのクリップ型チュナーを使っていると、唯がそれは何だと尋ねる。
梓はチューナーの説明をして、今までどうやってチューニングをしていたのかと、聞くと
「なんとなく。」
と答えて、チューニングをしてしまう。梓は絶対音感かとおどろく。
音楽初心者でのんびりものの唯だが、ギターは好きで実は相当のポテンシャルを持っているようだ。
一見ダメそうで、やる時はやるっていうキャラは結構はまる。
時代劇でいえば忠臣蔵の大石内蔵助、たそがれ清兵衛等、、、
バンドの練習をバリバリやりたい梓は、それほどうまくもないのに練習をせずだらだらと遊んでいる先輩にいらだつが、なぜか4人そろって演奏すると魅力があることに気付く。
こんなバンドがいたような~~
こりゃROLLING STONESじゃねえか?
世界的なバンドなので、練習をしないことはないだろうが、決してうまいバンドでは無いような気がする。
SHINING ALIGHTというSTONESのライブ映画の中でロンウッドとどっちがギターがうまいかを聞かれたキースリチャーズが
「はんっ!二人ともへたくそだ。でも二人そろえば最強だ。」
と言っていた。短いがSTONESの特徴をよく表しているセリフだ。
ミックも歌は下手だけど、STONESの演奏はものすごいパワーを持っている。
結成50年、一度も解散せずにメンバーもほとんど変わらず最前線でライブを続けてきた奇跡のバンドだ。
けいおん!のまったりバンドとSTONESを比べては(どちらの)ファンからも怒られそうだが、梓が「うまくないのに4人演奏が良いのはなんでだろう。」と言うセリフに、私の頭にはキースの言葉がよみがえってしまったので仕方がない。
というわけで、
賛否両論はあるようで、パッケージは少女漫画っぽくて、内容もまったりしているが、バンド経験のあればおじさんでも軽い気持ちで楽しめると思った。