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プーチン大統領がウクライナのドネツクとルガンスクの特定の2地域を国家として承認するとした発表に対するOSCEウクライナ担当特別代表キヌネン特別代表の声明の意義

2022-02-22 16:39:25 | 国家の内部統制

 2022.2.22 筆者の手元に欧州安全保障協力機構(OSCE) のリリース「ロシアのプーチン大統領がウクライナのドネツクとルハンスクの特定の2地域を国際法で国家として承認(recognize)すると発表したことにつきOSCEウクライナ担当特別代表であるキヌネン特別代表の声明」が届いた。

 その内容は以下で詳しく述べるが、その前提として「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」なるものがいかなる国?なのかも理解できなかった。(注1)

 現にキヌネン特別代表はドネツクとルハンスク地域はウクライナの特別な紛争地域としており、そこで引用された「ミンスク議定書(Minsk agreements)(注2)は、2014年9月5日にウクライナ、ロシア連邦、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印した、ドンバス地域における戦闘(ドンバス戦争)の停止について合意した文書である。これは欧州安全保障協力機構(OSCE)(注3)の援助の下、ベラルーシのミンスクで調印された。しかしドンバスでの休戦は失敗した。2022年2月22日にウラジーミル・プーチン大統領がドネツク・ルガンスク両州の独立を認める書類に署名したことにより、ミンスク議定書は破綻したといえる。

  今回のブログは、ウクライナの複雑な政治環境の理解に少しでも寄与できるよう急遽まとめたものである。

1.OSCE(Organization for Security and Co-operation in Europe:欧州安全保障協力機構)の概要ならびに「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の国際法上の地位

 OSCE(Organization for Security and Co-operation in Europe:欧州安全保障協力機構)は、北米、欧州、中央アジアの57か国が加盟する世界最大の地域安全保障機構である。経済、環境、人権・人道分野における問題も安全保障を脅かす要因となるとの考えから、安全保障を軍事的側面のみならず包括的に捉えて活動している。

 そこで筆者が気が付いたのは、ウクライナはともかくロシアもOSCEの加盟国である点である。この点に関し、2月22日の読売新聞オンライン版はやや詳しく解説している。すなわち、緊迫するウクライナ東部情勢を巡りロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領が電話会談でウクライナとロシアが全欧州安全保障協力機構を交えた直接協議を2月21日に開催する方向で合意していた、ただし、開催そのものは不透明とある。

 また、OSCEは21日に両国とは別に常設理事会の臨時会議を開き、ウクライナ東部地域の安定化を模索する予定であったと同記事は書いている。

 しかし、ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部の親ロシア派の独立を承認する大統領令に署名した。親ロ派「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の幹部が同日承認を要請していた。大統領令ではロシア軍の派遣も指示。親ロ派と署名した条約によると、ロシアは親ロ派支配地域に軍事基地を建設する権利を持つ。ウクライナ情勢は重大な局面を迎えた。(JIJI .com記事(https://www.jiji.com/jc/article?k=2022022200118&g=int)から一部抜粋)。

  果たして今回ロシアが国連加盟国として初めて正式承認した「ドネツク人民共和国」とはいかなるものか。Wikipedia でみると以下の内容である。

 「ドネツク人民共和国(DPRまたはDNR)ロシア語: Донецкая народная республика)は、ウクライナにある自称離脱国家である。首都で最大の都市はドネツクである。2018年からデニス・プシリンがDPRの国家元首を務めている。

 ウクライナはDPRとルガンスク人民共和国(LPR)の両方をテロ組織とみなしている。 ウクライナはそれらの地域をロシアの軍事介入の結果、クリミア自治共和国とセヴァストポリとともにロシアに一時占領されたウクライナの4地域のうちの2地域と考えている。 DPRとウクライナ政府は、ドネツク州の総人口の半分以上にあたる約200万の人がDPR保有地域に住んでいると推定している。反乱軍は面積的にはドネツク州の大部分を統治しておらず、7,853平方キロメートル(3,032平方マイル)のみを支配しているが、ドネツク(首都)、マキィフカ、ホルリフカなどの主要都市を掌握している。

 2022年2月21日、国連加盟国としては初めて、ロシアが正式にDPRとLPRを独立国家と承認した。 ロシアは以前より、2017年2月からDPRが発行するID文書、卒業証書、出生・結婚証明書、車両登録プレートをすでに承認していた。

2.ロシアのプーチン大統領がウクライナのドネツクとルハンスク地域の特定の地域を承認するという発表に対するキヌネン特別代表の声明

 ウクライナ問題担当のOSCE会長室の特別代表(注4)と三国間連絡グループ(TCG)、ミッコ・キヌネン(Mikko Kinnunen)・フィンランド大使は、次の声明を発表した。

Mikko Kinnunen特別代表

 「三国間接触グループ(Trilateral Contact Group: TCG) (注5)の任務は、ウクライナ東部に関連する紛争への平和的解決を見つけることを目的としたミンスク協定の実施を支援することである。

 2月21日、ロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領は、ドネツクとルハンスク地域の特定の地域を国家として承認する彼の決定について知らせた。この決定は、すでに緊迫した治安状況がエスカレートする中で行われた。

 私は、ドネツクとルハンスク地域の特定の地域が特別な地位を持つウクライナの一部であるという目的を含め、異なる方法で「ミンスク協定」と矛盾していると見ることができるので、このロシアの決定を深く残念に思う。すべてのOSCE参加国として、ロシアはウクライナを含む他の人々の主権と領土の完全性を尊重するというコミットメントを持っている。

 今日の決定が新たな軍事行動や流血につながらないことは極めて重要である。

 外交と交渉に代わるものはない。特別代表として、私は三者間連絡グループの議論に関して、参加者全員と対話を続けていきたいと思う。

*PDFの添付ファイルまたは詳細情報のソースへのリンクについては、https://www.osce.org/chairmanship/512695 サイトを参照。

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(注1) ドネツク州とルガンスク州は、ドネツ炭田の周辺に広がるウクライナ屈指の重工業地帯を抱える。旧ソ連時代に多くの労働者が移住してきた関係で、ウクライナでも特にロシア系の住民が多くなっている。

 ワシントンポストによると、2つの「人民共和国」はそれぞれドネツク州とルガンスク州の全域を自分の領土だと主張しているが、実際に支配している地域は両州の3分の1程度だ。一説では、支配地域は約1万7000平方キロだという。

 「ドネツク人民共和国」には230万人、「ルガンスク人民共和国」には150万人が住んでいると推定される。クリミアを除くウクライナ全体(4159万人)の1割程度の計算だ。住民の多くはロシア系で、日常的にロシア語を話しているという。

 日本の読者にイメージしやすいように例えると、面積・人口ともに四国(面積:1万8301平方キロ、人口:369万人)と同程度だ。

(2月22日HuffPost Japan記事「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」とは何か?ロシアが独立承認して軍派遣へ」から一部抜粋)。

(注2) 独立系ニュース組織Al Jazeeraが詳しく“Minsk agreement”につき一次(2014年9月)、二次(2015年2月)に分けて詳しく解説している。

ミンスク議定書のフォローアップ覚書によって確立されたバッファゾーン地図(Wikipediaから一部抜粋 )

(注3) 2022年1月外務省欧州局政策課「欧州安全保障協力機構(OSCE)について」が概要を解説している。なお、OSCEは世界最大の地域安全保障機構と記されているが、他方でNTOやEUと異なり、平和維持活動等に派遣する実力部隊・実行手段は有さないとある。果たしてロシアに対する有効手段とはならない点が悔やまれる。

(注4) OSCE議長事務局特別代表の任務

OSCE地域の紛争予防、解決、リハビリテーションを主導し、関係者と直接接触し、和解交渉を手配または実施する。危機に対処するため、または特定の分野における参加国の取り組みの調整をより良くするために、議長は個人または特別代表を任命することができる。個人の代表者は、彼らが引き受けると予想されるタスクを概説する明確で正確な命令を持っています。(Wikipedia から抜粋、仮訳)

(注5) ウクライナ問題三者間代表者グループ(TCG)は、ウクライナ東部の状況の平和的解決のための三国間接触グループとしても知られている。ウクライナのドンバス地域での戦争への外交的解決を容易にする手段として形成されたウクライナ、ロシア連邦、および欧州安全保障協力機構の代表者のグループである。いくつかのサブグループがある。

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