半導体関連で大型投資が相次ぐ中、半導体製造装置の分野で高いシェアを誇る関西企業が生産拡大に向けた投資を加速させている。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に進出したことに加え、生成人工知能(AI)用のサーバー需要拡大や中国の半導体内製化の動きもあり、「需要に追い付いていない」として増産を急ぐ企業が多い。半導体需要が回復するとされる今年後半以降を見据えて市場拡大の波に乗る狙いもある。
古くから化学製品、繊維などの製造が盛んな関西には、ここ数年で半導体関連が事業の主力に取って代わった企業が複数ある。半導体製造装置のガス流量を制御する計測機器で世界シェア60%を握る堀場製作所はその代表格の一つだ。
かつては自動車向けの機器が主力だったが半導体向けにシフトし、10年で売上高は2倍以上になり、利益の8割以上を半導体関連が占める。京都府福知山市に過去最大となる約170億円を投じて新工場を建設予定で、同社の担当者は「TSMCの進出や中国の需要増で製造装置の需要が上がり、対応しきれなくなっている」とする。
繊維大手のクラボウも半導体分野に注力する姿勢を鮮明にする。6月に社長に昇格予定の西垣伸二氏は3月の会見で「市場成長以上の拡大を目指す」と強調。同社は製造装置向けの高機能樹脂加工品の生産・開発を担う熊本事業所(熊本県菊池市)に31億円を投じて新棟を建設する。
バルブ大手のフジキンも今や売上高の大部分が半導体関連。大阪府東大阪市に製造装置向けのバルブ機器を生産する工場を55億円を投じて新設する。昨年時点で「人手不足もあり需要増に間に合わず納期が遅くなることがあった」といい、生産工程の効率化の検討も進める。
製造装置の需要が高まる背景には、半導体需要の回復がある。昨年の半導体市場は、設備投資を控える動きもあり低調に推移した。しかし、生成AI用のサーバー需要の拡大などで最悪期は脱し、今年後半に向けて拡大が予測されている。
日本半導体製造装置協会が今年1月に発表した令和5~7年度の需要予測によると、日本製半導体製造装置関連の売上高は7年度には5年度比で約1・4倍の4兆4383億円になるという。
一方で懸念されるのが中国依存度の高まりだ。半導体の洗浄装置で世界トップシェアのSCREEN(スクリーン)ホールディングス(HD)は、半導体製造装置部門の売上高の中国比率が4年度の19%から5年度は43%に急上昇した。米国による半導体輸出規制で中国は半導体の国産化を急いでおり、規制の対象とならない旧機種の製造装置の輸入を増やしているためだ。
東京エレクトロンなど関西以外の半導体装置メーカーでも中国比率が4割前後となっているほか、堀場製作所のような装置向けの製品を手がける企業でも中国比率が上昇している。
スクリーンHDの担当者は「地政学リスクや事業継続計画(BCP)の観点から依存度が上がりすぎないよう分散していく」としている。 (桑島浩任) 産経新聞
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