コメの品薄感が強まっている。昨夏の猛暑に伴う令和5年産米の生育不足による流通量の減少が主因だが、農水省は6年産の新米出荷が始まる9月には品薄は解消するとの見解を示す。しかし、マスコミが連日「令和の米騒動」などと過剰に報道すると、SNSで「コメが買えない」といった情報も拡散され、消費者の買い占めに拍車がかかった。一方で外食やパックのご飯の需給に大きな逼迫(ひっぱく)はみられず、記録的冷夏による凶作でコメを緊急輸入した「平成の米騒動」に比べてもその深刻度は低い。
南海トラフ情報で買い占め加速
「新米は9月までに年間出荷量の4割程度が出回る。品薄は順次、回復していく」。武村展英農林水産副大臣は23日の衆院財務金融委員会の閉会中審査でこう述べ、コメの品薄状態は今後解消していく見通しを強調した。
農水省は、品薄感が顕在化してきた6月ごろから、一貫して「主食用のコメの需給が窮迫している状況ではない」との説明を繰り返してきた。コメの収穫量を示す作況指数(平年=100)は5年産米は101と平年並みで、平成の米騒動を招いた平成5年産米(作況指数74)に比べても凶作とはいえない状況だ。
しかし、この間にさまざまなメディアが「コメ不足」を表題にした報道を連発。給食提供がなくなる子供の夏休みを迎える時期でもあり、不安視する家庭がコメを買い求める動きが急速に広がった。8月8日に南海トラフ地震臨時情報が発表されると、買い占めの動きはさらに加速。台風や大雨といった他の災害への不安の高まりもあってか品薄感は解消されず、一部店舗での購入制限や、ネット上で高額で転売する動きも目立ち始めている。
不足解消も価格上昇懸念
消費者がコメの品薄を痛感する一方で、回転ずしや牛丼チェーンなどの外食産業での不足感はなく、ご飯物のメニューは普通に提供されている。日本食レストランなどを展開する、ある外食大手の担当者は、「今年度末までの必要な量はすでに確保しており、現時点でコメが窮迫している状況ではない」と説明する。
ただ、「リーズナブルな価格で買える品質のよい一等米が不足している」と説明する。「最近は米価の高止まりが続いており、ついにコメにも価格転嫁の波が押し寄せるのでないかという懸念はある」という。
実際、総務省が8月23日発表した7月の全国消費者物価指数でコメ類が前年同月比17・2%上がり、20年ぶりの上昇率を記録した。供給不足に加え、訪日客による外食需要の高まりで、需給が引き締まって値上がりした。
農薬や肥料、光熱費など農家の生産コストが上がり、温暖化による天候不順リスクも高まる中、コメの需給逼迫や価格上昇が今後も続く可能性があり、家計や外食産業の業績にも大きな影響を与えそうだ。
産経新聞
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