塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」
新型コロナウイルスの感染が増加傾向にあり「第9波」が始まった可能性も指摘される中、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」の使用が広まっている。国内のクリニックなどで処方される新型コロナ飲み薬でのシェアは5~6割。先行して承認された米国製2剤と違い、若者を中心に重症化リスクのない患者も服用でき、使いやすいとの評価が医療現場で高まっている。 医療従事者向けサイトを運営するエムスリー(東京)は独自のデータベース「JAMDAS」から、全国のクリニックなど中小規模の医療機関約4100施設の処方データを分析した。その結果、新型コロナ飲み薬の処方全体に占めるゾコーバの割合は6月19~25日の1週間平均で57・8%、米メルクの「ラゲブリオ」が35・8%、米ファイザーの「パキロビッド」が6・4%だった。 ゾコーバは3剤のうちで最も後発で昨年11月に緊急承認された。政府が購入した分を指定された医療機関や薬局に供給していた今年2月上旬までは10%台にとどまっていたが、一般流通が始まった3月末から急速に伸び、4月中旬には50%に達した。年齢別では18~39歳が約40%を占め、60歳以上が約50~60%の米国製2剤と対照的に、若年層に集中する傾向にある。 感染者数が急増している沖縄県内の医療機関でもゾコーバへの関心は高い。大浜第一病院(那覇市)で診療する藤田次郎・おもと会グループ特別顧問が1日に診療する新型コロナ陽性者数は約10人で「経験したことのない(多い)数」という。多くは基礎疾患のない軽症の20~30代で、特にのどの痛みなどの症状が強い場合にゾコーバを処方している。 ゾコーバは早期に投与すれば症状が消えるまでの期間を短縮するほか、倦怠(けんたい)感や集中力の低下などの後遺症のリスクを低減させる効果も確認されている。藤田氏は「処方できる患者の範囲が広く、飲み薬を積極的に使う医師にとっては使いやすい」と指摘する。 ゾコーバが「広く使いやすい」理由は薬の特性にある。3剤とも軽症・中等症患者向けだが、米国製2剤は処方対象が高齢者のほか、心疾患や糖尿病などの重症化リスクのある患者に限られるのに対して、ゾコーバは若年層などリスクがない場合も服用できる。 塩野義によると新型コロナ陽性者の7~8割は重症化リスクがないとみられ、ゾコーバの利用拡大につながっていると考えられる。一方、服用のリスクについて患者からの同意書取得が義務付けられ、併用できない薬が多いパキロビッドはシェアが低迷している。 ただ、ゾコーバは妊婦には処方できず、併用できない薬も多いため同意書取得が必要で、医療現場では引き続き注意が求められる。治療薬代は9月末まで全額公費支援だが、3割負担の支払額はゾコーバが約1万5千円、米国製の2剤は約3万円となる。(牛島要平)
産経新聞
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