ロイター通信によると、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は9日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部ヘルソン州の州都ヘルソンを占領している露軍に、州都があるドニプロ川西岸からの撤退を命じた。防衛線を東岸に後退させる狙いとみられる。ショイグ氏は「我々の兵士の生命と部隊の戦力を守る」と述べた。
また、英国防省は8日、ロシア軍が、東・南部4州の占領地域へのウクライナ軍の進入を防ぐため、「竜の歯」と呼ばれるコンクリート製の障害物で防衛線の構築を進めていると明らかにした。露軍は越冬を意識して、占領地域の確保に重心を移している可能性がある。「竜の歯」は戦車や装甲車両の通行を阻止するピラミッド型の障害物で、露軍は東部ドネツク州の港湾都市マリウポリに設置しているという。南部ザポリージャ、ヘルソン両州にも持ち込んでいるといい、東部ルハンスク州でも防衛線を築く動きが伝えられている。露軍はドネツク、ルハンスク両州の全域制圧を目指してきたが、ドネツク州で従軍するロシア人記者は最近、露国営テレビで露軍の進軍ペースは「1日あたり3センチ」と説明した。露国防省は8日、ショイグ氏が戦地を視察し、セルゲイ・スロビキン総司令官らと戦況について協議したと発表した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日、戒厳令と総動員令を来年2月19日まで延長するよう最高会議(議会)に提案した。いずれもロシアがウクライナを侵略した2月24日に発令し、繰り返し延長してきた。ロシアの侵略とウクライナ軍の反転攻勢は、越年が不可避と判断したものとみられる。 読売新聞