1999

~外れた予言~

脳出血後遺症(6)

2006-10-28 19:42:14 | Weblog

(あら、あんたって・・・)

(こういう話、興味あったの?)

(あはははは!)

中年女性は、私の心の動きを見事に捉えた。

そうなのだ。
私はこの中年女性を誇大妄想狂とみなす反面、
もしかしたら、
ずっと私が知りたかったことの、
重要な生き証人なのかもしれないと感じてしまっていた。
ほんの少しだけだが。


(いいわ、教えてあげる)

(ここで話すと長くなるから・・・)

(あんたが夢の中で見れるようにしとくわ)

(起きてからじっくり思い出しなさい)

私は夢をほとんど見ない。
いや、寝るたびに絶対に夢は見てるはずだが、
目覚めてから夢の内容を覚えていることは少ない。

しかし、
夢と関係があるのかどうかは不明なのだが、
私は、意識がある時間帯に、
ふっ、とほんのなにげない一瞬に、
何かの情報の大きな広がりがイメージとして浮かぶ、
そんな経験をよくすることがある。

中年女性から夢の中で情報を受け取ったならば、
おそらく、
日常を暮らしながら、何週間かかけて、
広がりをもったインスピレーションとして、
それらの情報を思い浮かべることになるだろう。


(200人以上で、8年がかりで・・・)

(破局を食い止めたわ)

(でも、最後に大きな難関があって・・・)

(仲間のほとんどは、死ぬか廃人になってしまった)

(無事に生き残ったのはたった一割だけ)

この中年女性が脳出血で倒れたのは2001年のことだ。
私がこの女性に会ったのは、その数年後にあたる。

(違う、私は生き残り組だった)

(私がやられたのは、その後の別件だから)

(あの争いでは、私は五体満足で生き残った)


私はとっさに仮説を構築してしまった。
思考というよりは直感に近い。

1980年代の終わりから1990年代中頃までの8年間、
多くの人たちが知りえた数々の出来事の裏側で、
異能者たちの間で、壮絶な戦争があったのではないか?

これまで人類が築いてきた現代文明を、
このまま存続させるか、破壊してリセットさせるか、
どちらの道を進むのかをめぐって、
命を削るような争いがあったのではないだろうか?

そして、
その戦いの結果、存続させようとする側が勝利し、
日本が、そして世界が、
壊滅的破局を迎えることなく済んだのではないか?

日本における、
存続させようと守る側は当時200人以上いて、
彼らは、自分たちの命や暮らしや人生と引き換えに、
数え切れないほど多くの人たちの、
命や暮らしや人生を死守したのではないか?

誰に感謝されることもなく、
誰に評価されることもなく、
歴史の闇に埋もれ、何の栄光も名誉もなく、
ひっそりと消えていったのではないか?


この中年女性は、
自分は五体満足で生き残った少数派で、
その後、別件で倒されたといった。

おそらく、
2001年9月以降の世界の流れを決める争いがあって、
この女性は、
それに敗れてしまったのかもしれない。


(あんた、いい線いってるわよ)

(あんたも私みたいにならないようにね)

(まあ、せいぜい頑張りなさい)

私はこの日の訪問で、
夫さんに勧められるままに、
コーヒーを五杯くらいは飲んでしまった。

夫さんのみならず、
インコや熱帯魚にも別れのあいさつをして、
私はそそくさとその家を出た。

この怪しげな中年女性が、
あとどれくらいこの生き地獄の状態で生きるのか、
私にはわからないし、
決して知りたいとも思わない。