教育のとびら

教育の未来を提言 since 2007
presented by 福島 毅

映画”夢見る小学校”を観て気づいたこと

2022-06-18 | 雑感(教育関連)

先日、映画”夢見る小学校”のアンコール上映を観てきました。
きのくに子どもの村学園」「伊那小学校」「世田谷区立桜丘中学校」などが登場。主には、きのくに子どもの村学園の5つの学校が取材されたドキュメンタリーでした。

感じたことや発見をいくつか総括したいと思います。

①「子どもたちが自由にのびのび楽しめるのが第一」という理念
ここは、大人がみんなわかっていながら、そちらの方向には振り切れない今の学校教育がありますね。しかし、「その理念を実際にやってしまいましょう」という理事長の堀さんほか、学校スタッフの思いが現実の学校づくりとして機能しているのが驚きです。今の教育には様々な問題・課題が多いように見えますが、もっとシンプルに上記のような単純な理念の追求だけしていったら、あーら不思議。いろいろな課題や問題もいつのまにか解消されちゃっているということが起こりえる。それは絵物語ではなく、実際に可能だということをこの小学校が現実に見せてくれていると思います。

②体験・体感・暮らしを基礎においている
学びは教科書からでなく、体験・体感や暮らしの中からという方法論。だからプロジェクト学習がメインで、その学習の中に五教科の基礎学習が取り込まれている構造になっています。プロジェクトには、木工・クラフト・料理・演劇・農作業など、体験をする中で各自が様々なことを学べるような構造になっており、さらに、ただ子どものやりっぱなしにするわけでなく、どんな学びがあったかをリフレクションシートに書き込むといった作業で、自分が学んだポイントなどを可視化する仕組みがありました。文科省の学習指導要領との整合性をとるために、プロジェクト学習の何を体験することが、何年生の学びの何に結び付いていくかなども実は計算されていたりするところが、一般のフリースクールとはまた違う公認校として成立させていくノウハウだと思いました。例えば料理の麺づくりのシーンでは、素材の研究から理科の教科を、必要な原材料の計算などから算数を、地域のお店の人からのヒアリングなどから社会を学ぶことができているわけです。必要に迫られれば、児童・生徒はどんどん自分で必要な知識を吸収していきます。本をつかったり、YouTube動画を使うなどして自己学習もできる環境だからこそ、そうした個に応じた学びがおぎなわれているシーンも見ることができました。

③他者との比較による評価でなく、自己成長を実感する
「きのくに」には、普通の学校の通知表のような点数で評価するものはありません。その代わりに何ができるようになったかという記述が本人や親に伝えられます。相対評価のような他人と比べてどうのこうのというものもありません。特殊な技能をマスターしないと仕事ができない資格制度のようなものは評価が不可欠ですが、初等教育においての評価というかフィードバックは根本から考え直す時期にきているのかもしれません。

④困ったことはみんなで解決。子どもも大人も同じ一票の重み。
なにか困ったことが起きたり、みんなで解決しなくてはならないことは、全員参加の総会で。学校スタッフ(理事長や校長も)も子どもと同じ一票。大人からみれば、子どもの判断に大きくゆだねることは勇気のいること。しかし、何かあっても「そのときの責任は大人が持つ」という姿勢でのぞんでいるようです。シチズンシップ教育はまだまだ日本で定着していませんが、子どもであっても自己に決定権があり決められるのだという自主自律的な態度の育成はこうしたところからも。

⑤結果的に学力もついてくる
「きのくに」ではプロジェクト学習がメインの活動なので、一般の小中学校に比べて、体系だった先生が中心に立って教え込むような授業ではありません。保護者の中には、「そんなふうにして卒業して基礎学力はつくのだろうか?」と心配の方も多いだろうなというのは容易に想像がつきます。しかし、卒業生の高校時代の成績の追跡調査なども行われており、その結果についても映画で触れられていました。結論から言うと、「きのくに」の卒業生の大半が中位~上位の成績となっているのです。おそらく、小中学校で、自分で必要だと思う学習に自主的に取り組んだり、自分自身で工夫した学び方をつくりあげることによって、高校時代にも学習の勘所がわかって、特に興味を持ちだしたら俄然と実力を出すのではないかと想像されます。いやいや勉強させられる、親や教師の顔色をみてご機嫌を取るために勉強する、そのようなモチベーションでは続くわけがありません。小中学校時代に、好きなことに思いきり取り組むことによって自己肯定感を育み、自分なりの学習方法を確立すること自体が基礎力になっていったのだと推測します。

以上、簡単でしたが、映画をみての感想レポートでした。

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