教育のとびら

教育の未来を提言 since 2007
presented by 福島 毅

ドイツの幼児教育(魔法の質問座談会 9/4より)

2013-09-04 | 教育事情(海外)
魔法の質問ドイツ子育て座談会に参加してきました。座談会で出た話を簡単なレポートにまとめました。

講演は、マツダミヒロさんとベルガー有希子さん(ドイツ在住教育従事者)の対談という形でした。
有希子さんは、ドイツの代表都市の一つミュンヘンで幼稚園の先生を10年やっていらっしゃいます、
3児の母(旦那さんはドイツ人)。スライド使用。

■ドイツの概要
ドイツはEUの代表国の一つ。人口も面積も日本とほぼ同じ。まじめで勤勉な気質は日本人とよく似ているのでわかりあえるとよくいわれている。

■公園のはなし
近所の公園についてのレポート。徒歩10分圏内にある公園の写真をみせながら、ドイツの幼児教育観を紹介。ドイツの公園は柵がなく、誰でも自由に入れる雰囲気。木のチップなどが撒かれていて転んでも大丈夫なような配慮。しかし一方で、わざと注意をしないと怪我をするようなミニアスレチック風の滑り台などや小川などがある。ちょっと危険にしておくのは、幼児のうちから自分の身の回りに注意をしながら自分で判断する力を養うため。また、ブランコなども種類が豊富で異年齢の子供が隣で遊べたり、いっしょに乗れるような乗り物がある。つまり、異年齢交流ができるよう配慮されている。これは、幼稚園のクラスわけなどでも意識されている。

■保育
ドイツの保育は、家庭的な雰囲気。さまざまな年齢の子供が混合していて、年長者がリードして年下の子にいろいろと教えてあげられる環境になっている。いわゆる慣らし保育の手間もそれで省ける。(いちいち先生が個々にいろいろを教えなくていい)

ファミリーセンターと呼ばれる育児施設では、子供がみんなで一緒に朝ごはんを食べる。
年少者の場合は、朝食は母親も一緒に複数の家族でとる。
食事後は自由に遊んだり、午後は工作広場やクッキーづくり、森に出ていって遊ぶケースも。

自然の中での遊びも重視。教室から森に出ると生き生きする子供もいる。また外に出ることで元気になったり、病気にならないといったメリットもある。

子供たちの自主性・自立を伸ばす設計。冒険的な遊び場があり、子供が自分たちで小さな遊びの建物を建てたりできる場所がある。そこではスタッフが常駐していて、工具などを使ったりサポートをしてくれる。ミニミュンヘンといった試みがあり、リサイクルやゴミ集め、店番などで遊び用の通貨を稼ぎ、そのお金を使って道具を貸してもらい、スタッフの大人から指示を受けながら、建物をつくったりメンテナンスしたりする。また遊ぶ施設の運用方法について子供たちが会議を開いて提案することなどもできる。

保育施設全般に言える特徴としては、DIY(木工)関係のアクティビティが多い。小さい頃から木の材料やカナヅチなどを使う。また木工作業場なども併設されていることが多い。
絨毯の色などでコーナーをわけて遊ばせたり、ちょっと高い台に登って俯瞰させるような作りもある。俯瞰は脳にいいとされる。

■自立性
子供の自立を大事にする。何をするにしても、本人に「何がしたい?」かを尋ねる。2歳児から。
それがドイツの普通。
有希子さんによる”自立”とは
  1.自分が決めたという実感をもたせること
  2.自己決定した自分を認める自己肯定感を持つ
  3.自分の力を信じて、達成感を築ける

また、自立に関する習慣として
・赤ちゃんは母親と添い寝しない。違う部屋で寝る。
・何かあったときは、ベビーフォンで泣き声を聴きつけ、両親が対応する。
・保育園や幼稚園には鏡があちこちにあり、自分の姿を客観的に観る機会を意図的に増やしている。
  おもちゃなどにも鏡が多用されている。
・集団で行うことに、参加したくないときは、無理して参加しなくてもいい。本人の自主性が尊重され、また一人になれる空間(退避場所)も施設内に用意されている。

■感情教育
 自分が今、どんな感じがしているか(おこっている、うれしい等)をチェックできる、また周りに知らせる仕組みがある。(嬉しい、悲しい、回復中などを知らせるボードに本人がチェックする)


■参加者とのQ&A
Q:どうしたいか本人に訊いても「わからない」という答えが出るときはないのか?
A:待ってあげていると大概、答えを出す。

Q:進学塾はあるか?
A:日本の受験向け進学塾はない。補習目的のものはあり、教師から通う指示がある場合がある。

Q:子供の自立を尊重する場合、例えば子供が甘いものばかりを要求したとき、親はそれにただ従うのか?
A:そこは、「親の自立」が問われるところであると思う。親も自立しなくてはならない。

Q:ライフワークバランスについて
A:ライフワークバランスがよく取れて言える。ドイツでは、子育て中の親の短時間就労などが簡単にできる。自己申告制で働ける。そうしたことに対する偏見もない。

Q:就職状況について
A:したい仕事を早く見つけ、見定めていく。都市部などでは人気が集中して就職難。大卒/高卒や会社による意識の差も日本のようにある。なりたい職業につけない場合も多い。例えば保育士は専門の学校に入っても保育士として働くのはその半数。学校では実習が多いため、自分が向いてない場合は、早い段階で変更することが可能で、こうしたことは歓迎される。つまり、向いてないと見極め変更し、もっと向いているものがみつかる方が良いという方向。

Q:メディアに関する意識について
A:メディアについては良い面、悪い面が確かにある。氾濫する情報で暴力などの入っている者は小さい子供にはみさせない。(ナウシカなどでも6歳以上の制限付番組)。ドイツから観ると日本ではなんでも無制限に見せている印象にうつる。

Q:逆にドイツに住んでいて、日本ですばらしいと思う点
A:食に関する意識。力をあわせて人を助けるなど(列車に挟まった乗客を車両を皆で押して助けた例などのニュースなど)

【福島個人の感想・印象】
欧米は個人主義で、個人の自立に重きをおくことはわかっていましたが、小さいうちから自己決定や身近なことの危険察知、自分でできることは自分でできるよう習慣化することが徹底しているし、それを実現させるための工夫なども随所にみられるところは興味深かったです。日本の場合、社会人になっても親の過保護・干渉があるのと比べるとだいぶ差があるなと感じました。とにかく、ドイツでは、個人を自立してきちんと巣立つようにすることが教育の大目標のように思えました。

そして、日々、さまざまな問題に向き合い自分の力で解決するには、自己肯定や自立の習慣が必要ですから、こうした教育方針は大事だなぁと思いました。

一方で、生まれてすぐ寝室をわけ、ベビーフォンで対応など、発達段階において十分な身体接触や赤ちゃん特有の欲求に対する充足が満たされていないのではないかという点では、この習慣が正しいのか個人的に?の部分もありました。(これはドイツに限らずですが)食文化・食生活については、日本が非常に豊かであることを感じました。

日本は全体主義、同調主義 すぎる のであり、かといって欧米のように徹底した個人主義寄りなのも少し違和感があり、両方のバランスを取れたら、さらに最高なのになぁと感じました。


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