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「点と線」及び「下町のロケット」

2012-01-18 00:00:27 | DONKIの本棚
「点と線」




新潮 文庫
 
  松本 清張 著 ¥460+税

   これは戦後日本を代表する文豪 松本清張のデビュー作である。それまでの推理小説は江戸川乱歩などに見られるような「怪奇趣味」や「あざといコジツケ」の作品が多かった。清張はそれら従来とは全く違った視点から推理小説を描いた。

   日常生活の極くありふれたことがらの裡から、普段は気にもとめないものをとりあげて拡大鮮明にして物事の別の側面を開いてみせた。この小説では東京駅プラットホームの「四分間の見通し」が謎解きのキイ ポイントになっている。従来の推理小説では見られなかった手法である。

   この「点と線」が爆発的な大ヒットとなって以来 清張は社会派推理小説の創始者、そして大御所となった。文体の滑らかなのは当然のこと(それまでの推理物の文章は読めたものではなかった。)としても、それ以上に事件の運び方が「映画」をみているようにテンポよく、私などは今回も一気に一晩で読んでしまった。今から50年以上も前の国鉄(JR)を主な舞台にしているに拘わらず、今読んでも「古さ」を感じないのは、やはり 清張の筆力であろう。


下町ロケット



   小学館

   池井戸 潤 著   ¥1785+税


   これは2011年の直木賞受賞作品である。直木賞作品といえば、大体が「時代物」が普通であるのにこの作品は現代技術の最先端をゆくロケットを採りあげて中小企業が大企業の横暴にいかに立ち向かってゆくか?を両者の取引銀行員の視点から描いた物語である。

   筆者は元銀行員(旧三菱銀行か)で、支店長か貸付担当であった経験から大小企業の「資金繰り」には精通しているので「金」にからんでの両者の熾烈な戦いが生々しく描かれている。

   文体は先の清張には及ばないが、実体験に裏打ちされた物語だけに読者自身がその当事者になりきって、悩み、考え戦っているという錯覚に陥る。  それ程に面白い。今現在本屋には筆者池井戸 潤の「鉄骨」が並んでいる。