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ITニュースの保管箱

Firefox 2「Bon Echo」α2公開

2006-05-16 14:13:57 | Weblog


 Firefox 2.0に向けた2番目のα版となる「Bon Echo α2」が、Mozilla Foundationからリリースされた。

 Bon Echo α2はテスト目的のみのリリースとなり、開発者とテスターのみにダウンロードを推奨している。

 α2ではリンクを開く場合のデフォルトが新しいウィンドウではなく新しいタブになり、タブを閉じるボタンが各タブに表示されるようになった。検索ボックスではGoogleとYahoo!検索が自動提示されるようになり、検索プラグインマネージャでは検索エンジンの削除と再導入が可能。ブックマークは新機能のマイクロサマリーが導入されている。

 Windows版(5.3Mバイト)、Mac OS X版(17Mバイト)、Linux版 (9Mバイト)がリリースされている。


(2006.5.16/ITmediaニュース)

もっさり感はどうなった?──「D902iS」

2006-05-16 14:12:51 | Weblog


●質問:もっさり感は改善されましたか?

 「D902iS」への質問で圧倒的に多かったのが、「もっさり感」が解消されたのかどうかを問うものだ。「D902i」ユーザーの吉岡記者が発表会場で試してみたところ、前モデルのD902iと比べて、メニューボタンを押した後のメニューの起動や、新規メール立ち上げ時のレスポンスがワンテンポ速くなっている印象だという。

 ほかにもカメラの起動や、オートフォーカスでピントが合うまでの時間がより速くなっていたように感じたと話している。

 またサードパーティ製のフルブラウザアプリ(jig.jpのjigブラウザ)をインストールして動作を確認してみたところ、スクロール速度の向上が見られた。リアルタイムOSを採用したムーバのようなサクサク感ではないものの、前モデルからはレスポンスが改善されていると見ていいだろう。なお、チップがOMAP2に変更されたかどうかは明らかにされていない。

 操作に対するレスポンスは、どうしても主観的な見方になってしまう。最終的な判断は、店頭の可動モックを試すなどして確認してほしい。

●質問:miniSDカードスロットはどこにあるのでしょうか。

 miniSDカードスロットは、本体左側面の底面付近に装備されている。D902iの右側面からは移動したことになる。

●質問:着信ランプはどこにありますか?

 前モデルのD902iではメイン液晶の上部にあった着信ランプ。D902iSでは光る決定キーがその役割を果たしている。通話やメールの着信時、不在着信を知らせるライトの点滅、FeliCaリーダーに近づけたときの点滅など、前モデルの着信ランプで可能だったことは、ほぼ対応しているようだ。

●質問:バイブレーターはD901iやD902iと同じモーターっぽい感じですか?

 D902iSのバイブレーターは、「D901i」やD902iと同様のキュイーン、キュイーンというモーター音だ。「D901iS」で少し控えめな音に変わっていたが、D902iSは着信すればまず気が付くレベルの振動と音になっている。

※今回の検証は、発表会で展示されたデモ機で行っており、製品版では仕様が変わる可能性もあることをご了承いただきたい。



(2006.5.16/+D Mobile)

妄想クリエイター集団「宙プロ」に迫る

2006-05-16 14:11:37 | Weblog
おしゃれな街・代官山がオタクショップだらけだったら。「渡る世間は鬼ばかり」的なドラマをレゴで再現したら。焼酎のラベルに達筆で「2次元の女」と書いてあったら――

 謎の6人集団「宙プロ」(ちゅうぷろ)は、そんな妄想を形にしては、Webサイト「妄想ドリンカーズ」にアップする。「世の中のかっこいいものに、アレルギーがあるんです」。メンバーの内山洋紀さんはてらいなくこう語る。

 例えば「僕たちの代官山最新MAP」。かっこいい街・代官山の地図に、ディスカウントショップ「ドン・キホーテ」をたくさん並べたり、オノデンやまんだらけ、国際展示場といった“オタクの聖地”で満たしてみたりした。

 「焼酎ブームってどうよ」となると、焼酎のラベルに「電車男」や「二次元の女」など、ありえない文字を筆で書き付けてサイトで発表。「レゴって対象年齢5歳~12歳って書いてあるけど30歳はダメなの?」と、レゴでホームドラマを作ってみた。

 最近のヒットは、どんなキーワードも「1.0」と「2.0」に分ける「Web2.0ジェネレーター」だ。次世代のサン・マイクロシステムズ社員に求められる能力を表にした「社員1.0と社員2.0」を見て焦りを覚えたことがきっかけ。流行に付いていけない「置いてけぼり感」が、開発を駆り立てた。

 「ぼくら自身は1.0以前。0.3とか0.5ぐらいだと思ってる。みんなが『2.0』と得意げに言うようになると置いてかれちゃって困るから、人々の歩みを止めようと思った」(内山さん)。「先に作ってしまえばみんな、2.0と言い出さないようになるかなと。けん制ですね」と、メンバーの加藤カオルさんも同意する。

 飲み会で盛り上がっているうちに生まれる企画を、コンテンツにしてサイトにアップする。かっこいい物へのアレルギー、クールなものへのコンプレックスから、企画のネタが生まれるという。

 宙プロメンバーは学生時代から「アンチかっこいい」を貫いてきた。早稲田大学を1999年前後に卒業した同窓生で、28~31歳の6人。原点は、かっこ悪いのに大人気だった掲示板サイト「掲示板的コトバ宇宙 -宙」だ。

●1人に1個、宇宙を配る

 「今さら“クールなホームページ”を作るのは、今からスノボ始めるくらいキツい」――1998年当時、別々のサークルのWeb担当者として知り合った内山さん、加藤さん、伊奈敦紀さんの3人は、こんなやりとりをしていたという。学園祭の中止が決まり、エネルギーを持て余していたころ。翌年の卒業までにかっこ悪いネットサービスを作ろうと思い立った。

 当時のコンプレックスの対象は、慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)。「SFCには、『時代の流れに乗ってるぜ』みたいな器用さがあるイメージを勝手に抱いていて、勝手に仮想敵にしてました」(加藤さん)。要はひがんでいただけ、という。

 メールソフト「ポストペット」が流行し、ペットを飼う掲示板サイトや、バーチャルの島に住むコミュニティーサイトが現れていた。それらを見て「日常生活をネットに置き換えただけ。ちまちましてるなぁ」と感じた3人は、発想を一気に宇宙レベルに引き上げた。「1人に1個、宇宙を配ろうぜ!」

 こうして生まれた「掲示板的コトバ宇宙 -宙」は、各掲示板を「宙」と呼び、コネタや迷惑な仕掛けを仕込んでユーザーをコミュニケーションに駆り立てる。掲示板には「防人」という、宇宙とは関係なさ過ぎる名の人工無脳が常駐。「ここの管理人、友達いないから仲良くしてくれよ」などと不愉快な発言をしたり、友人の「宙」に遊びに行っては勝手に発言し、人間関係を乱した。

 特定の文字を指定した通りに変換してしまう「俺語」も設定可能。例えば「。」と入力した際に「にょ。」と変換されるよう設定すれば、書き込んだ文章が自動でデジキャラット化する、という具合だ。知らずに書き込んだ人はあ然とすると同時に、会話のきっかけにもなった。

 10日に1度、自分の「宙」の画面が真っ暗になって利用不能になる「食」という迷惑なイベントもあった。他の「宙」にリンクする「ロケット」や「アンテナ」のアイコンも装備したが、ロケットはよく見たらメキシコ帽だったり、アンテナは傘だったりした。

 ネーミングも“和物感”を徹底し、カタカナのかっこよさを排除した。「コミュニティーとかペット、カスタマイズじゃなくて、宇宙、防人、俺感、みたいな」(加藤さん)

 掲示板で多くの人が発言すれば、防人が成長して機能が増えたり、画像が近代的に進化していく。ただ「なるべく数値化しない」が原則。進化のパラメータは見えないようにし、アナログなかっこ悪さを残した。

●かっこ悪いのに大人気

 「1000人ぐらいが使ってくれればいい」――1999年4月。3人の卒業と同時にサービスを公開したところ、1カ月で5000人もが登録した。その後も1日300人ずつほど増え、サーバはすぐにパンクした。

 知り合いのツテを頼るなどし、サーバを数回移転。そのたびにログが消えたが、ユーザーには「宇宙が引っ越しする」と説明し、「代わりに新しく快適な宇宙を用意します」と言って許してもらった。「今なら考えられないことですが」(加藤さん)

 バナー広告なども貼っておらず、宙からの収入はゼロ。ネットバブル最盛期で、いくつかの会社から協業の誘いもあったが「お金を稼ぐ仕組みがない」と知ると去っていった。運営費用もメンテナンスもメンバーのボランティアだったが、限界に来ていた。

 2000年秋。ユーザーは7~8万になり、宙プロメンバーも6人に増えていたが、メンバーだけで支えきれず、楽天への売却を決めた。楽天は宙をインフォシークのサービスとして展開。ピーク時のユーザーは17万を数えた。

 2003年、楽天から「-宙」を作り直すアイデアが欲しいと声がかかり、ブログやSNSの機能も備えた新サービスを提案したが、実現せずに終わる。2006年2月、宙に障害が発生。復旧できず、サービス終了が決まった。

 しかし、宙プロはまだ終わらない。かっこ悪いコミュニティサービスを、再び構築し始めた。

●無駄なもので何かしたい

 「無駄なものを拾って何かしたい」――ブログやmixiなど便利なツールの流行を横目で見つつ、宙プロは、独自の視点でサービスの企画を練る。

 新サービスの名は「空言」(そらごと)。相変わらず“和物”なネーミングで“アンチかっこいい”を体現した。

 コンセプトは「コトバのプラネタリウム」。今日食べたものや今の脳内BGMなど、ふと気になったキーワードを自分の「空」にポンポン打ち上げ、夜空を埋めていく。ブログよりも気軽に、思いつきで発言できるサービスを目指した。

 キーワードを打ち上げるたびに掲示板ができ、それについて他のユーザーと話し合える。他ユーザーのキーワード掲示板で発言すれば、自分の空にもそのキーワードが降ってくる。キーワードの文字は、掲示板の発言者が増えるほど大きくなり、誰も発言しないと小さくなる。人が中心になるブログやmixi日記と異なり、話題がコミュニケーションの中心になる。

 掲示板に書き込むと、ときどき「コトダマ」と呼ばれるアイテムが手に入る。いくつか種類があり、好みのキーワードを一時的に巨大化させたり、他ユーザーのキーワードの語尾に「命★」と追加してしまったりできる機能を持つ。

 友人マップ機能「系」も装備。同じ掲示板でよく発言する人が近くに表示される。mixiのように、一度の承認で誰とでも均等に結ばれるのではなく、コミュニケーションの濃淡を視覚的に確認できる。

 数日に1回「昼」になり、画面が真っ白になって自分の空を見られなくなるという迷惑な機能も装備した。

 今は試作版を限定メンバーで利用し、改善を進めている。近く一般公開する計画だが、「1000人ぐらい使ってくればいいかなぁ」(内山さん)と控えめだ。

●「どうでもいいこと」をやりとりしたい

 「人がやりとりしてる情報の9割9分は、本人とその身の回りだけでしか通用しないし、通用させる必要のないようなもの」――内山さんはそんな風に言い、「多くの人から広く、使える情報を集める」という、CGM(コンシューマージェネレイティッドメディア)と呼ばれる最近の流行を疑問視する。

 「空言は、日々のどうでもいいことを友達と楽しくやりとりしながら、バカバカしく遊べるサイトを目指している」(内山さん)

 人間関係を宇宙の星という壮大なメタファーで表現したのも、「コミュニケーションに対する照れ」(内山さん)。人と人との距離感を、星と星の距離の遠さで表した。

 内山さんは「Six Degrees of Separation」の理論に違和感があるという。Six Degrees of Separationは「6人を介せば世界中の人とつながる」という考え方で、「GREE」の名前の由来でもある。SNSで広がる人間関係をイメージさせる言葉だ。

 「でもみんな、『自分が飲み会を主催しても6人も来てくれないだろうな』っていう世界で生きてるのが本質だと思う。ブログのトラックバックだって、『相手のブログに載ってしまうから』と、気が引けて打てない人が多い」(内山さん)

 ネット人脈やネットコミュニケーションは、理論上は無限に広げられる。しかしリアルな人間――特に、コミュニケーションが苦手と自覚している人は、人脈の海にこぎ出し切れずにコンプレックスを強めているのかもしれない。

 宙プロは、そんなコンプレックスに独自のサービスで向き合う。「空言」では、言葉を打ち上げて気軽なコミュニケーションを誘い、「宙」では防人が媒介となってコミュニケーションを助ける。かっこ悪くておせっかいなサービスが、人と人とをほんの少しだけ近づける。

●「独自の戦い」を展開

 「独自の戦い」――加藤さんは宙プロの方向性をこう表現する。独自の戦いとは、選挙で勝ち目のない候補者に対して、マスメディアがよく使う言葉。例えば「空言」は、mixiのようなサービスに勝てるはずもなく、マスに訴求できるとも思わないが、世界のすみっこで面白おかしくやっていきたい、という。

 サービスをビジネス化するつもりも当面はない。「お金をもらってしまうと、楽しいおしゃべりやプログラミングも“作業”になってしまう」(加藤さん)から。「宙」の時に苦労したサーバだけは、メンバーの協力で確保してある。

 「何か他と違うことをやって、みんなの暮らしが愉快でヘンテコになれればいいな」(加藤さん)――宙プロはコンプレックスを全開にしながら、独自の戦いに突き進む。


(2006.5.16/ITmediaニュース)

Winny経由の情報漏えい、二次被害も深刻に――CMUカンファレンス

2006-05-16 12:07:02 | Weblog


 「さまざまな情報漏えい事故の中でも、P2P型情報漏えいは一番嫌なパターンだ」――カーネギーメロン大学日本校が5月15日に開催したオープン・カンファレンスにおいて、同校の武田圭史教授はこのように述べ、「Winny」をはじめとする匿名P2P型ファイル共有ソフトを通じた情報漏えい問題のインパクトについて語った。

 匿名性を特徴とするP2P型ファイル共有ソフトを通じた「P2P型情報漏えい」では、しばしば「漏らした人が悪い」といった論調が聞かれる。しかし武田氏は、政府機関や企業からの漏えいにせよ個人の被害にせよ、「被害が永続的に及ぶ恐れがある」という特徴があることから、もっとさまざまな側面から深く考えていく必要があるとした。

 特にWinnyを介した情報漏えいにおいては、自宅PCからの一時流出に加え、漏えい情報を入手したWinny利用者による二次流出が見られるという。「騒がれれば騒がれるほど再放流が行われ、中には『Share』など他のファイル共有ソフトウェアへの再放流も行われている。また、やじうまが漏えい情報を拾う過程でWinnyのキャッシュが別のノードに保存され、さらに情報が拡散してしまう」(武田氏)

 武田氏によると、P2P型情報漏えい事故には「漏えいは自宅の私有PCで発生する」「自分が漏えい対策を行っていても、第三者から自分の情報が漏洩されることがある」「漏えい情報の拡散が急速かつ広範囲である」「いったん漏えいした情報は回収不能」という4つの特徴がある。中でも、P2P型情報漏えいに特徴的なのは後者2つの項目だ。

 特に「情報をほしがる人がいる限り、永遠にその情報が手に入る状態になる」(武田氏)点で大きな違いがあるという。Webサイトの設定ミスやメールなどによる他の情報漏えい事故の場合、情報が取得するのは事故が発生しているその期間だけだ。しかしP2P型情報漏えい事故では、漏えい情報に誰でもアクセスできる状態が継続し、「被害が一生ついて回る恐れがある」(同氏)。

 また、偶発的な漏えいならまだしも、悪意を持ったユーザーが意図的に情報を漏えいさせた場合、犯人の特定が困難なうえ、歯止めが効かないという意味で問題がより深刻になるとも付け加えた。

●技術的に可能な対策は?

 こうした特質を持つP2P型情報漏えいへの対策はあるのか。武田氏は、技術的には幾つかの方策が挙げられるとした。

 例えば、Winnyの解析を通じてキャッシュホルダーのアドレス情報を取得し、個別にファイルの削除を依頼する方法、ISPによるトラフィック制限などが挙げられる。また、Winny作者の金子勇氏が述べたとおり、共有設定機能を保護するようP2Pファイル共有ソフトウェアの機能を改良するのも1つの手だ。しかしいずれの手法にせよ「実効性が担保できない」「法的裏付けが必要」といったデメリットがあるという。

 この中で「法的懸念が少なく、すぐにでも実行可能」な手段が、「ポイゾニング」とい手法だ。「意図的に偽物の情報をばらまくことで、本物の漏えい情報を見つけにくくする」(武田氏)方法で、通信帯域の圧迫やコスト負担といったデメリットはあるものの、最も手っ取り早い対策だという。

 CMUでは実際に、ポイゾニングによる漏えい情報の拡散防止効果について、「eDonkey」や「FastTrack」「Gnutella」といったP2P型ファイル共有ソフトを用いて研究を行った。この結果、レピュテーションシステムを採用しているeDonkeyでは、単純にファイルを混ぜ込む「フラッディング」という方式よりも、同一のデコイを混入させるより高度なポイゾニングの有効性が高いことが分かったという。

 これに対しWinnyの場合は、eDonkeyが用いているレピュテーションメカニズムが存在しないうえ、ファイルの発見にはハッシュ値ではなくキーワード検索が用いられるケースが多い。このため「ポイゾニングは比較的容易」(武田氏)と見られるという。

 もう1つの取り組みは、同じくカンファレンスで講演を行った米eEye Securityの鵜飼裕司氏が開発を進めている「Winnyネットワーク可視化システム」である。

 このシステムでは、Winnyのノード情報やキー情報を収集、分析し、Winnyネットワークの全体像を把握できるようにするほか、「特定ファイルの拡散状況や特定ファイルを保有しているノードの一覧、特定ノードが保有するファイル一覧といった情報を把握できる」(鵜飼氏)。同時にファイル検索ツールの「WinnyFileFinder」、キャッシュ復元ツールの「WinnyUncache」といったツールの開発も行っているという。

 同システムを活用すれば漏えいした情報の追跡が可能となり、ISPを介した当該情報の削除要請が容易になる。また、違法ファイルや漏えいファイルの収集家に対する抑止力になりうるという。ただ一方で「Winnyノード情報が分かるため、一斉攻撃に悪用される懸念がある」(同氏)ほか、法的、社会的な面からの課題もあるため、公開に向けて慎重に検討を進めている段階だ。

 武田氏も鵜飼氏も、P2P型情報漏えい対策に当たっては、技術的観点だけでなく、法的、社会的なさまざまな観点からの議論と取り組みが必要だと述べる。「そもそも、制御できないネットワークは容認するべきかという問題がある。容認すれば、多くの人がそのネットワークの存在におびえることになるし、規制すれば、技術発展やソフトウェア開発の自由が損なわれる」(鵜飼氏)。

 さらに、Shareをはじめとする他のP2Pファイル交換システムへの情報流出への対応も必要だとした。

●安易な漏えい公表は二次被害を招く

 カンファレンスの最後には、ネットエージェントの代表取締役社長、杉浦隆幸氏が、自らの経験を踏まえつつ、情報流出後にとるべき対策について説明した。

 杉浦氏がまず強調したのは、「『いったんWinnyに流出した情報は絶対に消えない』というのは嘘」ということだ。

 より正確に言うと、仮に情報が流出しても、誰の興味も引かない人気の低い状態であれば、ファイルはそのまま消え去るか、ほぼ確実に回収/削除作業を行えるという。しかし拡散レベルが一定の水準を超え、掲示板などに情報が書かれるような状態になると「手のつけようがなくなる」(同氏)

 杉浦氏のこれまでの観測によると「漏えい事件の半分程度では、2週間以内にWinnyネットワークから当該情報が消え、共有されていない状態になっている」という。だが、情報が拡散を続け、「だいたい共有するユーザーが10人くらいを超えると、2ちゃんねるやブログに書き込まれる可能性が高くなる」(同氏)。ひとたびこうした状況が明るみになればさらに多くのユーザーがファイルを入手しようとし、広く拡散してしまうという。また、いったん収束し、Winnyネットワークから消えたと思われた情報でも、事実公表や報道をきっかけに「再放流」されるケースもあるため注意が必要だ。

 いずれにせよ肝心なのは、できるだけ早期に、できれば漏えいさせてしまった本人からの自己申告に基づいて対策に取り組めればベストということ。逆に、第三者からの通報によって事実を知るケースは「被害拡大した後に通知が行われるため、うまくハンドリングできず、対応が後手後手に回る可能性がある」(同氏)

 杉浦氏は、情報漏えいが発覚した後に行うべき具体的な対策についても説明した。

 まずは、何の情報がどこから漏れ、今はどのような状態にあるのかという「事実状況の確認」が必要だ。また、事件に適切に対処できるよう、技術面と広報面で責任の持てる「人の確保」も重要となる。さらに、情報漏えい元の「PCの証拠保全」も行うべきという。

 同氏の経験によると、情報漏えいの詳細を調査しようとして証拠を消してしまったり、かえって被害拡大につながりかねない対応が見受けられるため注意が必要だとした。

 たとえば、Winnyそのものを使って流出した情報を探し出そうとすると、その情報がキャッシュに保存されるため二次流出につながるリスクがある。また、流出元PCを使った調査は論外で、証拠が消えてしまう上、さらにほかの情報が漏えいする可能性がある。また、漏えい元PCでのウイルススキャンも、証拠が消えてしまうため避けるべきという。

 ここでポイントとなってくるのは、漏えい事実の公表のタイミングだ。とにかく情報が漏えいしたのだから迅速に公表をという姿勢は否定されるべきものではないが、慎重に検討しないまま拙速に公表すると「興味本位でその情報をダウンロードする人が増え、いっきに情報が拡散してしまう」(杉浦氏)。ことWinny経由の情報流出に関しては、「Winny上で公開が停止されていない段階での公表は二次被害を助長し、本末転倒になってしまう」(同氏)と述べた。

 「漏えいを公表する目的は、二次被害を拡大しないことと、類似事件が発生しないようにすること」(杉浦氏)。公表しないことで漏えい情報の広がりを抑える手もあるが、一方で、公表しないままその情報が悪用されるリスクもある。このことを踏まえ「ケースバイケースでどちらの二次被害が大きくなるかを考え、最善の方法をとるべき」と語った。

 また、漏えい後の対応もさることながら、再発防止に向けた取り組みも欠かせない。杉浦氏は「事件のほとんどは情報の持ち出しが原因である」と述べた上で、持ち出された情報をできるだけ少なくすることが大事だとした。その手段は「回収」だ。「最近ではいろいろと規則が厳しくなっていて、持ち出しに関する罰則が設けられていたりするが、それを一時緩和して会社内にデータを持ってきてくるよう呼びかけることも大事」(杉浦氏)という。

 「これはどんな製品を買ってもできないこと。お金だけで解決しようとせずに仕組みで解決を」(同氏)


(2006.5.16/ITmediaエンタープライズ)

「iPodがZenの特許侵害」――CreativeがAppleを提訴

2006-05-16 12:06:04 | Weblog


 携帯音楽プレーヤーメーカーのCreative Technologyは5月15日、米Apple Computerに特許を侵害されたとして、カリフォルニア州北部地区連邦地裁に同社を提訴するとともに、米国際貿易委員会(ITC)に調査を申し立てたと発表した。

 Creativeでは、携帯音楽プレーヤー「Zen」のユーザーインタフェースに関する特許をAppleのiPodとiPod nano、iPod miniに侵害されたと訴えている。

 Creativeによれば、同社は2005年8月9日、米特許商標庁からデジタル音楽プレーヤーのユーザーインタフェースに関するいわゆる「Zen特許」(米特許番号6,928,433)を取得した。これはCreativeの音楽プレーヤーのZenとNOMAD、およびAppleのiPodとiPod nano、iPod miniに利用されている技術だとしている。

 ITCへの申し立てでCreativeは、Appleに対して米国内でのiPod製品販売禁止を言い渡すよう要求。訴訟では仮禁止命令と損害賠償を求めている。
(2006.5.16/ITmediaニュース)