<第四段落 悪報>
①道理に背いた大悪
【苟或非義而動。背理而行。以惡為能。忍作殘害。
非義でありながら動き、理に背いて行い、悪い事を肯定し、人に知られずに殺生し、
陰賊良善。暗侮君親。慢其先生。叛其所事。
陰で善良な人を傷つけ、暗に君主や両親を侮り、その先生を侮り、それらの事を叛き、
誑諸無識。謗諸同學。虛誣詐偽。攻訐宗親。剛強不仁。狠戾自用。】
見識のない者をたぶらかし、同学を騙し、偽りを言って人を騙し、親族の過失を暴いて攻撃し、不仁を無理強いし、欲深く独りよがりである。
②役人の悪行
【是非不當。向背乖宜。虐下取功。諂上希旨。
是非の分別は妥当でなく、趣向は正しい道に背き、部下を虐げて功積をあげ、上司に諂って迎合し、
受恩不感。念怨不休。輕蔑天民。擾亂國政。
恩を受けて感謝することなく、怨み言を言い続け、人々を軽蔑し、国政を乱す。
賞及非義。刑及無辜。殺人取財。傾人取位。
功なき者に褒美を与え、罪なき者を懲罰に科し、人を殺して財を貪り、人を押しのけて地位を奪い、
誅降戮服。貶正排賢。凌孤逼寡。棄法受賂。
降伏した者を殺し、正しく聡明な者を追い払い、孤児を侮辱し未亡人に無理強いし、法を犯して賄賂を受け取り、
以直為曲。以曲為直。入輕為重。見殺加怒。】
真っ直ぐなものを曲がっていることにし、曲がっているものを真っ直ぐだとし、軽い罪を重罪にしてしまい、死にそうな人を怒って罵る。
③世俗の悪行
【知過不改。】
誤りと知りながら改めず、
【知善不為。】
善と知りながら行わず、
【自罪引他。】
自分の過失に人を巻き込み、
【壅塞方術。】
価値ある学問や技術を(独占して)人に伝えず、
【訕謗聖賢。侵凌道。】
聖賢を誹謗し、道徳を侮辱する。
④殺生の悪行
【射飛逐走。】
飛ぶ鳥を射落とし走る獣を捕まえる。
【發蟄驚棲。】
土の中の虫を掘り起し、鳥を驚かせる。
【填穴覆巢。傷胎破卵。】
虫の巣穴を埋め、鳥の巣を覆い、身ごもっている動物に危害を加え、卵を破る。
⑤気の弱い者の悪行
【願人有失。】
人に過失があることを願い、
【毀人成功。危人自安。減人自益。以惡易好。
人の成功を誹謗し、人の安穏を危うくし、人の利益を減らし、悪い事を良い事とし、
以私廢公。竊人之能。蔽人之善。形人之醜。
私心によって公益を廃し、人の成果を盗み、人の善を覆い、人の醜聞を暴露し、
訐人之私。耗人貨財。離人骨肉。侵人所愛。助人為非。】
人の私事を暴き、人の財産を浪費し、肉親と離れるようにそそのかし、人が愛しているものを奪い、人が悪事を行うのを助ける。
⑥気の強い者の悪行
【逞志作威。辱人求勝。敗人苗稼。破人婚姻。
勝手気ままに威張り散らし、人を侮辱して自分の勝ち求め、農婦の再婚を失敗させ、人の婚姻生活を破たんさせ、
苟富而驕。苟免無恥。認恩推過。】
少々裕福になれば驕り高ぶり、その場だけ罪を免れて恥を知らず、恩を認めて過失は人に押し付ける。
【嫁禍賣惡。沽買虛譽。包貯險心。挫人所長。
過失を人に転嫁して悪を売り、虚栄を売り買いし、悪賢い心をもち、人の長所を挫き、
護己所短。乘威迫脅。縱暴殺傷。】
自分の短所を護り、勢力を笠に着て人をいじめ、我がままに暴力をふるい、殺したり傷つけたりする。
⑦物を大切にしない悪行
【無故剪裁。非禮烹宰。散棄五榖。勞擾眾生。】
理由なく衣類を裁断し、生き物を礼に反して料理し、五穀を無駄にし、衆生を働かせ混乱させる。
⑧明らかな横暴の悪行
【破人之家。取其財寶。決水放火。以害民居。
人の家を破産させ、その財産を奪い、水を打ち火を放って民家に危害を加え、
紊亂規模。以敗人功。損人器物。以窮人用。】
秩序を乱し、人の功積を無にし、人の器物を損なって、使えないようにする。
⑨陰に隠された悪行
【見他榮貴。願他流貶。】
人の栄華を見て、その人が左遷させられることを願う。
【見他富有。願他破散。見他色美。起心私之。
人が裕福であるのを見て、その人が破産することを願い、美しい夫人を見れば、欲情を起こし、
負他貨財。願他身死。】
人に財産を借りていれば、その人の死を願う。
⑩陰のある悪行
【干求不遂。便生咒恨。】
求めたことが思い通りにならないと、恨みを抱く。
【見他失便。便說他過。】
人の過失を見れば、その人の過失を言いふらし、
【見他體相不具而笑之。】
人の身体的な欠点を見れば、それをあざけり、
【見他才能可稱而抑之。】
人の才能を見れば、褒めることなくかえってさげすみ、
⑪理由のない悪行
【埋蠱厭人。】
証拠をでっちあげて人を陥れる。(虫を埋めて人を嫌がらせる)
【用藥殺樹。恚怒師傅。抵觸父兄。強取強求。好侵好奪。】
薬を使って樹木を枯らし、教師を恨み、両親に反発し、力ずくで奪い取り、侵害することを好む。
⑫志を奪う悪行
【擄掠致富。巧詐求遷。】
略奪して金持ちになり、ずる賢い手段で昇進しようとする。
【賞罰不平。逸樂過節。】
褒賞や懲罰は不公平で、安逸な享受は節度を越えている。
【苛虐其下。恐嚇於他。】
自分の部下を虐げ、人を恐れさせる。
⑬忌諱(タブー)を無視する悪行
【怨天尤人。訶風罵雨。鬥合爭訟。妄逐朋黨。
天を怨み人を咎め、(思うようにならない)雨風を罵り、争いをそそのかして訴訟を起こさせ、みだりに徒党に加わり、
用妻妾語。違父母訓。得新忘故。口是心非。
妻や妾の道理に合わない話を鵜呑みにし、両親の教訓に背き、新しいものを好んで古いものを忘れ、言葉と本心が一致せず、
貪冒於財。欺罔其上。造作惡語。讒毀平人。】
不正な財産を貪り、上司を欺き、悪言をでっちあげ、無実の人を誹謗中傷する。
【毀人稱直。罵神稱正。棄順效逆。背親向疏。
人を謗って自らを正しいと思い、神明を罵って自らを公正だと思い、天理を棄てて天理に背いた行いをし、肉親に背いて他人に媚びへつらい、
指天地以證鄙懷。引神明而鑑猥事。】
天地を指さして自分の考えを正当化し、神明を引き合いにしながら猥らな事を手本としている。
⑭不仁なる者の悪
【施與後悔。】
施しを与えた後で悔いる。
【假借不還。】
借りたものを返さない。
【分外營求。力上施設。淫慾過度。心毒貌慈。
分不相応な物を求めて、力の限りを尽くし、淫欲は節度を越え、内心は陰険悪辣で外見だけは情け深く、
穢食人。左道惑眾。短尺狹度。輕秤小升。
汚れた食物を人に与え、邪道をもって人々を惑わし、標準より短い物差しで長さを狭く測り、標準でない秤で少なく量り、
以偽雜真。採取奸利。壓良為賤。謾驀愚人。】
まがい物を本物と混ぜてごまかし、善良な人を卑しい人とし、愚かな人をあざけり見くびる。
⑮家庭における悪行
【貪婪無厭。咒詛求直。嗜酒悖亂。骨肉忿爭。
飽くことを知らず欲を貪り、神を呪いながら道理に適うことを願い、酒を好んで心を乱し、肉親と言い争い、
男不忠良。女不柔順。不和其室。】
男性は忠義と善良さに欠け、女性は従順でなく、家族は仲が悪い。
【不敬其夫。每好矜誇。】
妻は夫を尊重せず、夫はいつも驕り高ぶっている。
【常行妒忌。無行於妻子。失禮於舅姑。】
常に寵愛を得ようと争って嫉妬し、妻に礼節を用いず、嫁は姑を敬わない。
【輕慢先靈。】
ご先祖様を侮る。
【違逆上命。】
年長者の命に逆らう。
【作為無益。】
無益なことを為す。
【懷挾外心。】
密かにふた心を懐く。
【自咒咒他。偏憎偏愛。越井越灶。
自分を呪い人を呪い、人の好き嫌いに偏りがあり、井戸やかまどを跨ぎ、
跳食跳人。損子墮胎。行多隱僻。】
食物や人を飛び越え、嬰児を堕胎し、行いはこそこそしている。
⑯天地神明を敬わない悪行
【晦臘歌舞。】
月末・年末に歌い踊る。
【朔旦號怒。】
月の初めの早朝に怒鳴り散らす。
【對北涕唾及溺。】
北を向いて鼻をかみ、痰を吐き、大小便をする。
【對灶吟詠及哭。】
かまどに向かって歌を歌ったり泣いたりする。
【又以灶火燒香。穢柴作食。】
かまどの火を使って線香をつけ、汚い柴を薪にして食事を作る。
【夜起裸露。八節行刑。唾流星。
夜起きだして丸裸になり、八節(立春、立夏、立秋、立冬、春分、秋分、夏至、冬至)に刑罰を執行し、流星に向かって唾を吐き、
指虹霓。輒指三光。久視日月。】
虹を指さし、三光(太陽・月・星)を指さし、太陽や月を長く注視する。
【春月燎獵。】
春に山林を焼いて猟をする。
【對北惡罵。】
北に向かって悪口を言う。
【無故殺龜打蛇。】
何の理由もなく亀や蛇を殺す。
>>『太上感応篇』 日本語訳③へ
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