『今昔物語集』(こんじゃくものがたりしゅう)は平安末期に成立した説話集です。
天竺部(インド)、震旦部(中国)、本朝部(日本)の三部構成で、
約1000余りの説話が収録されていますが、
巻第一は釈迦の誕生から始まり、完全に仏教説話が中心となっています。
文体は漢字仮名交じり文(和漢混淆文)ですが、
日本の学校教育で古文をやっていればなんとか(?)読めそうです。
釈尊の物語は『釈迦譜』を参照しているようで、『釈迦譜』が手に入らない私たちは、
『今昔物語集』を仏教に関する基礎知識のテキストとしても良いように思います。
浄空法師のお話によれば、浄空法師が章嘉大師に学び始めた頃、
章嘉大師はまず『釈迦譜』を読んで釈尊を理解するようにと勧められたそうですが、
その内容が『今昔物語集』に収められているようです。
・・・・と、言う事を私が知ったのは、実は昨年の暮れのことで、
最近になって少しずつテキスト読み始めたところです。
『今昔物語集』といえば「昔話」(民話・説話)という印象しかありませんでしたが、
それは紹介する人が一般に普及し易いように選んだのかもしれません。
しかし蓋を開けてみれば、
この説話集は完全に仏法伝来の経緯や霊験譚がほとんどなのです。
現代の日本人は、先人が命を懸けて学習し取り入れてきた文化と、
その歴史的経緯をよく振り返らなければならない時期に「いる」のではないでしょうか。
その点でも『今昔物語集』は最適のテキストの一つだと私は考えています。
(『今昔』には朝鮮半島からの伝来について触れられていないので、そこは別のアプローチが必要でしょう。あくまでも参考資料の一つとして、という意味です。)
特に本朝部は、
「聖徳太子、此朝にして、始めて仏法を弘めたる語」(聖徳太子が日本で初めて仏法を弘めた話)
から始まります。
聖徳太子が初めて仏法を取り入れた時はどうだったのか。
行基菩薩はどのように人を導いたのか。
中国から来た鑑真和尚は、日本で戒律の重要性を説かれました。
空海は命を懸けて中国に渡り、長安で慧果和尚から密教の真伝を授かります。
その経緯はどうだったのか、高野山をどう探し当てたのか。
聖武天皇はどんな思いで東大寺を建てたのか。
天智天皇が薬師寺を建てた時はどうだったのか。
聖徳太子が法隆寺を建てた時はどうだったのか。
・・・そんな貴重な話から、「わらしべ長者」のような面白い昔話まで、
いろいろ集められているのが『今昔物語集』です。
有り難いことに「平成花子の館」というホームページでは、
テキストを読むことができます。
岩波の『新日本古典文学大系(33~37) 今昔物語集』には、
脚注があるので参考になります。
関心のある方はどうぞ。
~『今昔物語集』の概要~ (ウィキペディアより)
天竺部(インド)
巻第一 天竺(釈迦降誕と神話化された生涯)
巻第二 天竺(釈迦の説いた説法)
巻第三 天竺(釈迦の衆生教化と入滅)
巻第四 天竺付仏後(釈迦入滅後の仏弟子の活動)
巻第五 天竺付仏前(釈迦の本生譚・過去世に関わる説話)
震旦部(中国)
巻第六 震旦付仏法(中国への仏教渡来、流布史)
巻第七 震旦付仏法(大般若経、法華経の功徳、霊験譚)
巻第八 欠巻
巻第九 震旦付孝養(孝子譚)
巻第十 震旦付国史(中国の史書、小説に見られる奇異譚)
本朝(日本)仏法部
巻第十一 本朝付仏法(日本への仏教渡来、流布史)
巻第十二 本朝付仏法(法会の縁起と功徳)
巻第十三 本朝付仏法(法華経読誦の功徳)
巻第十四 本朝付仏法(法華経の霊験譚)
巻第十五 本朝付仏法(僧侶の往生譚)
巻第十六 本朝付仏法(観世音菩薩の霊験譚)
巻第十七 本朝付仏法(地蔵菩薩の霊験譚)
巻第十八 欠巻
巻第十九 本朝付仏法(俗人の出家往生、奇異譚)
巻第二十 本朝付仏法(天狗、冥界の往還、因果応報)
本朝(日本)世俗部
巻第二十一 欠巻
巻第二十二 本朝(藤原氏の列伝)
巻第二十三 本朝(強力譚)
巻第二十四 本朝付世俗(芸能譚)
巻第二十五 本朝付世俗(合戦、武勇譚)
巻第二十六 本朝付宿報(宿報譚)
巻第二十七 本朝付霊鬼(変化、怪異譚)
巻第二十八 本朝付世俗(滑稽譚)
巻第二十九 本朝付悪行(盗賊譚、動物譚)
巻第三十 本朝付雑事(歌物語、恋愛譚)
巻第三十一 本朝付雑事(奇異、怪異譚の追加拾遺)