現在、国においては、地域全体の森づくりや林業活性化のビジョンづくりを支援する技術者として、国家資格である「森林総合監理士(フォレスター)制度」が26年4月から開始されています。
市町村の森林林業行政を支援する森林総合監理士の活躍により、地域全体の森づくりや、林業活性化のビジョンづくりをさらに推進していくものです。
今年度のシンポジウムでは、こうした動きを踏まえ、「林業普及指導事業における森林総合監理士等の活動の取り組み」をテーマとし、中四国9県の代表により、日頃の普及活動の発表がありました。
島根県からは、西部農林振興センター益田事務所の山田主任技師による、「製材所聞取り調査を今後の普及指導へ活かしていくために ~循環型林業の実現に向けて~」と題した発表が行われました。
発表は、県産材製品の需要拡大と安定供給のため、地域の抱える問題を分析し、必要な課題解決の手法を構築するため、高津川流域の製材事業者13社を対象に聞取り調査を行い、新たに求められる支援や仕組みづくり、組織間の連携等を図ったという内容です。
活動発表の審査結果については、最優秀賞が鳥取県で、島根県ほか他の各県は優秀賞となりましたが、審査での得票数では島根は栄えある3位でした。
山田主任技師には、日頃の普及活動の上に、本発表に向けて、大変な準備をして臨んでおり、残念ながら最優秀賞ではありませんでしたが、得票数で3位という好成績は、今後の普及活動の自信につながったのではないかと思います。大変お疲れ様でした。
各県代表の皆さんを前に質疑応答
(以下、山田主任技師の発表概要です)
1.管内製材所聞取り調査(現状)
平成25年次の原木仕入量は、13社合計で47,365m3で、県全体の約50%を占め、製材・加工品の総出荷量は28,426m3で、うち国産材製品が58%。 また、製品全体の78%が県外に出荷されている。
パレット・梱包材を主要取扱製品とする事業体の割合が、比較的高く、特徴の一つとなっている。
2,調査を踏まえた普及活動(課題や要望等に対する取り組み)
(1)商工会議所等との連携による支援
林業関係者だけでは解決できない課題や要望等に対応するため、県商工労政事務所職員及び商工会議所職員と共に製材所等を訪問し、経営の現状、今後の経営方針及び課題等を聞き取り、商工関係職員とは、その後も定期的な情報交換を行い、連携体制を整備した。
(2)新規就業者確保の仕組みづくり
当事務所、高津川流域林業活性化センター及び県農林大学校林学科が協議し、新たな取り組みへ向けた役割分担が行われ、農林大では、平成28年度学生募集から、地域推薦入試に流域林業活性化センター枠が創設され、農林大への進学を推進する仕組みが構築された。これを受けて、平成27年5月には、流域林業活性化センターが管内事業体の今後3か年の採用計画をとりまとめ(8社分、30名)、農林大と情報共有したうえで、農林大職員と当事務所職員が共に管内の高校を訪問し、林業への就業及び農林大への進学を勧誘した。
また、この仕組みを支援するため、高校生を対象とした「農林大学校サテライトキャンパス in 益田」を開催し、木材の伐出現場や最新機器を導入した製材工場など、林業や木材産業の現場体験指導を行った。
(3)流域材の円滑な供給に向けた仕組みづくり
管内3市町で建設された市営住宅等の建設関係者12社及び3市町へ聴取り調査を行い、今後の普及活動として、①原木調達、乾燥期間といった木材の事情について、各公共施設を建設する市・町役場の関係各部署が共通認識を持つための連絡調整会議や勉強会での指導支援、②当流域では、管内の公共施設への流域材の供給を目的に、製材所12社を会員とする「高津川流域材供給ネットワーク」が設立されているので、この法人化等の指導支援を行っていく。
以上