強い馬は何頭もいた。
凄い馬も何頭もいた。
けれど・・・
“華のある馬”ってほんの一握り。
でも、彼らはどんな凄い馬達より、いつまでもいつまでも心の中に残っている。
クロフネ・・・・。
2000年の年の瀬に突如現れたマル外の芦毛馬。新馬-エリカ賞をパワーで
圧勝。アグネスタキオン、ジャングルポケットらとしのぎを削った歴史に残る
ラジオたんぱ杯は敗れたものの、クロフネの持つ不思議な魅力は
「ダービー外国産馬開放元年」にふさわしいマル外スターの登場となった。
同時に98年秋、府中の第3コーナーで散ったサイレンススズカ以来の
“華のある馬”としてしっかりと心に刻まれた。
ダービーにクラッシック挑戦を絞ったクロフネは、毎日杯圧勝後
NHKマイルCも強烈な追い込みで優勝。いよいよ初代マル外出走馬として
日本ダービーに駒を進める。皐月賞馬アグネスタキオンの故障で柱不在となった
ダービーは、クロフネ襲来により、いつもとは違った盛り上がりをしたように
思う。
97年のサニーブライアンの年以来、4年ぶりの「朝5時半到着⇒ダービー開門
ダッシュ」にチャレンジ。スタンド前での致命的な空きスペースの読み誤りと
体力低下による?ダッシュスピードの衰えで、スタンドのすき間にしか
スペース確保できず、背伸びをしながらのダービー観戦となった。
小雨の中の「クロフネのダービー」は直線半ばまで。武騎手を鞍上にもがき
苦しむクロフネをジャングルポケットがあっさり交して優勝。クロフネは5着
という着順をとるのが精一杯だった。返し馬で見るクロフネの姿、最後の直線で
馬群に包まれる彼の姿、目の前の事実としてクロフネを確認できたことが
外国産馬開放元年のダービーの証人となったような気分になった。
今でも、アグネスタキオンの年のダービーは「クロフネの出た・・・」から
記憶の糸が始まる。
クロフネには負けても、秘められた凄さにワクワク感がが漂い、何か競馬の
歴史を変えてくれそうな不思議な期待感があった。
秋を迎え、神戸新聞杯3着。そこから衝撃的なストーリーが始まる。
神戸新聞杯での敗戦で賞金を積上げられなかったため、予定していた天皇賞を
断念する結果に。クロフネを出走断念に追い込んだ同じマル外の
アグネスデジタルがテイエムオペラオーを破って優勝するところが
因縁めいたエピソード・・・。
クロフネはダートに矛先を変え、天皇賞前日の武蔵野Sに登場する。
初ダートでの圧勝は「強い!」という賞賛を通り過ぎ「凄い・・・」というしか
言葉が無かった。衝撃的なダートデビューは、この先の「もっと凄い・・・」を
間違いなく想定させるものであり、次にターゲットを絞った
ジャパンカップダートでの走りに「とてつもなく凄い・・・」を期待した。
11月の末、クロフネがデビューして約1年で迎えたダートのGⅠレースは、
前年覇者のウイングアローすら相手にはならなかった。
向う正面から第3コーナーにかけて武騎手がスパートをかけると、あとは
独壇場。直線に入ると差は開く一方。
「別の次元で1頭の馬が走っている・・・」
まさにそんな光景を見ることになった。ウイングアローが呪縛を解かれたかの
ように、馬群を抜け出して追い込んできたときには遥か先でクロフネが
ゴールインしていた。7馬身差の優勝、本気で走っていたらもっと差が開いた?
98年金琥賞のサイレンススズカ、99年京王杯SCのグラスワンダー・・・
「凄い勝ち方の見本」を凌いでしまったレース。帰りの電車の中は、明日の
ジャパンカップより翌年春のドバイワールドカップの話題で盛り上がったように
思う。久々に登場した、それもとてつもないスターホースが、その先の大きな
楽しみを持たせてくれたことにうれしくてうれしくて、事ある毎にクロフネの
名前が自分の口からこぼれた。
「その先の大きな楽しみ」は、1ヶ月間の夢で終わった・・・。
歳末の東京大賞典を前に「クロフネ・屈腱炎、引退」のニュース。
大いなる楽しみは夢の途中と化し、クロフネは「過去の名馬」への歴史の中に
入ってしまった。
たら・・、れば・・は好きではない。でも、クロフネに限っては何度も何度も
酒の席に登場した。
今でもクロフネの名を耳にすると、何故かワクワクする。夢の続きは子供達に
託されたものの、世界のダートで走らせてあげたかったという思いは今も消えて
いない。
昨年、彼の子供達が競馬場に帰ってきて、フサイチリシャールが早くも
GⅠ馬となり、初年度産駒で最もクロフネに似ているフラムドパシオンは
UAEダービーで3着にがんばった。
今年も期待の2歳がまもなく姿を現す。今年のPOGのメンバーの中にも
彼の仔はしっかりインプットされている。「とてつもなく凄い・・・」を上回る
クロフネの仔が“華のある馬”として世界にチャレンジしてくれることを
楽しみに待ちたい。
願わくば、ダートのGⅠレースで夢をかなえて欲しい。
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