一男伯父が亡くなりました。
うちの父ちゃんの兄、例の大金持ちの伯父です。
17、18日が仮通夜、
19日が本通夜、
20日がお葬式でした。
本通夜&お葬式の会場は、祭壇の両隣も、左右の壁も、花でみっしりと埋め尽くされ、
しかもその花が、故人が菊がでえっ嫌いなせいもあったと思うけど、
ベースが胡蝶蘭、アクセントに百合にカトレア、隙間を埋めるにも白いデンドロビュームに黄色いオンシジュームという、
葬式の供花というより高級クラブのリニューアル祝いみたいな、豪勢な花ばっかりで、
こーゆー感じの花々が会場を埋め尽くしてたんです。
最後のお別れのとき、一枝に五つ六つ花をつけたそれらの胡蝶蘭がざくざく切られ、手渡され、それをみな、お棺の中に手向けていったのですが、
お棺の縁を越えた頃。
莉菜 「なあ、あれ、蓋、閉まるん?」
わし 「花はふわっとしてるから、けっこう入れてもけっこう閉まるもんやねん」
などと言ってたのですが、
縁を越えてからも胡蝶蘭はさらにどんどこ積み重ねられ、
葬儀屋さんのスタッフも、さすがにこれはまずいかと、カトレアに切り替えたりもしたのですが、
(切り替えたあたりに並んでたのは、ええ年のおっさんがたで、それがみな手に一輪づつおおぶりのカトレアの花を持っているという、シュールな光景が…)
いつしか棺の上は、「これ、ほんまに閉まるんかい…」とさすがに不安になるくらい、胡蝶蘭、ところどころカトレアの、こんもりした小山に…。
足元にもあちこち散乱し、どかどか踏まれている胡蝶蘭。
蓋は閉まりました。ぶじ、なんとか、どうにかして、閉まりましたが。
胡蝶蘭が二束三文にあふれかえったこんなアホな風景、一男のおっちゃんの葬式ぐらいでしか見られるもんちゃうなあと思ったら、
なんかわからんけど、急にぼろぼろと、泣けて、泣けて。
これは初めて見ました、紫の胡蝶蘭。
とある有名人とそのお姉さまから、対で届いていました。
【エンバーミング】
伯父は一年ほど前から肺気腫を患ってて、
以前、肺癌をごくごく初期で発見、治してもらった先生に手術してもらうため、ハワイの病院に入院、そこで亡くなりました。
亡くなったのが八日、ハワイ時間で七日、
そちらでエンバーミング処置(※)を受け、ものすごくややこしいらしい遺体空輸の手続きを経て、ほぼ十日後にやっと帰ってきたわけですが。
(※ 遺体の防腐処理。血液を抜いて防腐剤入りの溶液に入れ替えたりする、土葬国ならではの処理)
さすが土葬の国の処置。
凄いよー。
亡くなってから十日も経ってるのに、ぜんぜん匂いもなくて、ほんとにただ寝てるだけみたいで、でも触ると固くて冷たくて、
17日18日は自宅のお座敷に敷いたお布団で寝て、
19日に納棺されて、20日に斎場に行くまで、まったく変わりがなかったのよー。
【奇男】
一男伯父の奥さん、ふみちゃんおばちゃんの兄さんの名前。
「奇男」と書いて「くすお」と読む。
通称「くっさん」。
香典帳などで「奇男」という名前は見かけていたが、それが「くっさん」おっちゃんの名前だったことを、今回初めて知った。
「奇 すしき魔が歌、歌うローレライ」(「ローレライ」3番より 原詞:ハインリッヒ・ハイネ 日本語訳:近藤朔風)の「奇 すし」の「奇」ですが、坊 さんにつけてもらった名前だそうです。
(その話になって「『奇』で『くす』やてなんで読めるんやろー」という話になったとき、古典では見たことあるが、がっこで習ってみんな知ってる歌にもあったぞ、あったぞ、あったけどなんやったっけ…と考えたが思い出せず、今日やっと思い出した)
くっさんおっちゃんの奥さんのいくちゃんおばちゃんによると、「まさかこんな名前がこの世に存在するはずがない」と思ってか、「奇」の上にわざわざ草かんむりをつけてくる人もいるらしい。
【六文銭を捜せ!リターンズ】
は、また別の機会に~。
【骨上げ】
焼きあがったお骨は、頭蓋骨が形をとどめていなかった。
それを見た一男伯父の中学の同級生で、同級生でただひとり東大に進んだという人が。
「頭、ほんまによう使うたんやなー。よう使うたとこは、骨が残らんてよう言うからな。
かずさん(一男伯父の通称)は、がっこの成績はあんまりようなかったけど、頭はほんまによかった。将棋がごっつう強うて、僕はいっぺんも勝てたことがない」
が、頭蓋骨とは対照的に大腿骨付け根、骨盤にはまっている丸い部分、いま調べたところ「大腿骨頭」というらしい、は、「こんなん初めて見るーっ」くらい、形もなにもかもが、見事な状態で残っていた。
かっちょ 「ほんまに使うてへんかってんなー。おっちゃん、歩くのん、嫌いやったもんなー」
斎場から帰っての初七日のお経のときに見つけた傷。
莉菜 「えみちゃん(わしの本名)、そのリストカットみたいな跡、どないしたん?」
わし 「ほんまや。なんやろ。…うわ、こすったらひりひりするー」
どうも、骨上げのとき、うっかりやけどしてきたらしい。
【メルセデス】
仮通夜からお葬式までの間、何度も聞いた言葉。
「かずさんがまだ子供の頃やった。
『おっちゃん(もしくはおばちゃん)、おれ、将来金持ちになって外車に乗るねん。外車買うたら、おっちゃん(もしくはおばちゃん)、乗せたるからなー』て。
ほんまに乗せてくれよったもんなー」
うちの父ちゃんの兄、例の大金持ちの伯父です。
17、18日が仮通夜、
19日が本通夜、
20日がお葬式でした。
本通夜&お葬式の会場は、祭壇の両隣も、左右の壁も、花でみっしりと埋め尽くされ、
しかもその花が、故人が菊がでえっ嫌いなせいもあったと思うけど、
ベースが胡蝶蘭、アクセントに百合にカトレア、隙間を埋めるにも白いデンドロビュームに黄色いオンシジュームという、
葬式の供花というより高級クラブのリニューアル祝いみたいな、豪勢な花ばっかりで、
こーゆー感じの花々が会場を埋め尽くしてたんです。
最後のお別れのとき、一枝に五つ六つ花をつけたそれらの胡蝶蘭がざくざく切られ、手渡され、それをみな、お棺の中に手向けていったのですが、
お棺の縁を越えた頃。
莉菜 「なあ、あれ、蓋、閉まるん?」
わし 「花はふわっとしてるから、けっこう入れてもけっこう閉まるもんやねん」
などと言ってたのですが、
縁を越えてからも胡蝶蘭はさらにどんどこ積み重ねられ、
葬儀屋さんのスタッフも、さすがにこれはまずいかと、カトレアに切り替えたりもしたのですが、
(切り替えたあたりに並んでたのは、ええ年のおっさんがたで、それがみな手に一輪づつおおぶりのカトレアの花を持っているという、シュールな光景が…)
いつしか棺の上は、「これ、ほんまに閉まるんかい…」とさすがに不安になるくらい、胡蝶蘭、ところどころカトレアの、こんもりした小山に…。
足元にもあちこち散乱し、どかどか踏まれている胡蝶蘭。
蓋は閉まりました。ぶじ、なんとか、どうにかして、閉まりましたが。
胡蝶蘭が二束三文にあふれかえったこんなアホな風景、一男のおっちゃんの葬式ぐらいでしか見られるもんちゃうなあと思ったら、
なんかわからんけど、急にぼろぼろと、泣けて、泣けて。
これは初めて見ました、紫の胡蝶蘭。
とある有名人とそのお姉さまから、対で届いていました。
【エンバーミング】
伯父は一年ほど前から肺気腫を患ってて、
以前、肺癌をごくごく初期で発見、治してもらった先生に手術してもらうため、ハワイの病院に入院、そこで亡くなりました。
亡くなったのが八日、ハワイ時間で七日、
そちらでエンバーミング処置(※)を受け、ものすごくややこしいらしい遺体空輸の手続きを経て、ほぼ十日後にやっと帰ってきたわけですが。
(※ 遺体の防腐処理。血液を抜いて防腐剤入りの溶液に入れ替えたりする、土葬国ならではの処理)
さすが土葬の国の処置。
凄いよー。
亡くなってから十日も経ってるのに、ぜんぜん匂いもなくて、ほんとにただ寝てるだけみたいで、でも触ると固くて冷たくて、
17日18日は自宅のお座敷に敷いたお布団で寝て、
19日に納棺されて、20日に斎場に行くまで、まったく変わりがなかったのよー。
【奇男】
一男伯父の奥さん、ふみちゃんおばちゃんの兄さんの名前。
「奇男」と書いて「くすお」と読む。
通称「くっさん」。
香典帳などで「奇男」という名前は見かけていたが、それが「くっさん」おっちゃんの名前だったことを、今回初めて知った。
「
(その話になって「『奇』で『くす』やてなんで読めるんやろー」という話になったとき、古典では見たことあるが、がっこで習ってみんな知ってる歌にもあったぞ、あったぞ、あったけどなんやったっけ…と考えたが思い出せず、今日やっと思い出した)
くっさんおっちゃんの奥さんのいくちゃんおばちゃんによると、「まさかこんな名前がこの世に存在するはずがない」と思ってか、「奇」の上にわざわざ草かんむりをつけてくる人もいるらしい。
【六文銭を捜せ!リターンズ】
は、また別の機会に~。
【骨上げ】
焼きあがったお骨は、頭蓋骨が形をとどめていなかった。
それを見た一男伯父の中学の同級生で、同級生でただひとり東大に進んだという人が。
「頭、ほんまによう使うたんやなー。よう使うたとこは、骨が残らんてよう言うからな。
かずさん(一男伯父の通称)は、がっこの成績はあんまりようなかったけど、頭はほんまによかった。将棋がごっつう強うて、僕はいっぺんも勝てたことがない」
が、頭蓋骨とは対照的に大腿骨付け根、骨盤にはまっている丸い部分、いま調べたところ「大腿骨頭」というらしい、は、「こんなん初めて見るーっ」くらい、形もなにもかもが、見事な状態で残っていた。
かっちょ 「ほんまに使うてへんかってんなー。おっちゃん、歩くのん、嫌いやったもんなー」
斎場から帰っての初七日のお経のときに見つけた傷。
莉菜 「えみちゃん(わしの本名)、そのリストカットみたいな跡、どないしたん?」
わし 「ほんまや。なんやろ。…うわ、こすったらひりひりするー」
どうも、骨上げのとき、うっかりやけどしてきたらしい。
【メルセデス】
仮通夜からお葬式までの間、何度も聞いた言葉。
「かずさんがまだ子供の頃やった。
『おっちゃん(もしくはおばちゃん)、おれ、将来金持ちになって外車に乗るねん。外車買うたら、おっちゃん(もしくはおばちゃん)、乗せたるからなー』て。
ほんまに乗せてくれよったもんなー」