● 首相、年内解散探る…党内は先送り論根強く
2012年11月3日(土)09:19
(読売新聞)
野田首相が、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案などの成立を前提に、年内の衆院解散の可能性を探っていることがわかった。
2日、複数の首相周辺が明らかにした。解散を先延ばしすれば、野党から「『近いうち』に解散する約束を守らなかった首相」などと批判され、選挙に悪影響を及ぼすことを懸念しているようだ。ただ、民主党内は依然として解散先送り論が根強く、今後、解散時期を巡って党内対立が激化する可能性も否定できず、首相の思い描く通りに政局が展開するかどうかは不透明だ。
首相は2日の参院本会議で、「『近いうちに国民の信を問う』と申し上げたことは一日も忘れていない」と強調した。
首相周辺では、すでに衆院選の選挙事務所を設けたり、新たなポスターを作製したりする動きが相次いでいる。首相自身も近く、地元関係者と今後の対応を協議する予定という。
党執行部も、ここにきて衆院選に向けた準備を加速させている。2日には衆院選と参院選の合同選対本部役員会を開き、11日までに候補者選考を終える方針を確認した。すでに都道府県連に指示している。
次期衆院選の政権公約(マニフェスト)も今月中に素案を策定することを目指している。党執行部は、国民参加型のマニフェスト策定を目指し、10日から18日まで、全国11か所で国民の意見を聞く集会を開く。
◆少数与党転落目前
首相が年内解散の可能性を探るのは、8月の民自公党首会談で約束した「近いうち」の衆院解散を引き延ばす姿勢が顕著になれば、野党の攻勢にさらされるだけでなく、世論にも「約束を守らない首相」との印象を強め、政権の求心力が急速に失われる可能性が高いためだ。首相周辺は「首相は『うそつき』のレッテルを貼られることを一番嫌っている」と語る。
少数与党転落が間近に迫っていることも「追い込まれて解散するぐらいなら、自ら主導権を確保して解散した方が賢明」(首相周辺)と判断する理由だ。
民主党と国民新党は衆院で245人(離党届提出の2人を除く)で、与党過半数割れまであと6人に迫っている。離党者に歯止めがかからず、少数与党に転落してしまえば、解散を年明けに先送りしたとしても、憲法で衆院の優越が規定されている予算すら通せない事態に陥る。
2013年度予算案や、通常国会への提出を目指す12年度補正予算案の成立が難しくなれば、景気への悪影響は避けられない。改正消費税法の付則は、14年4月の消費税率引き上げにあたって、経済状況を好転させることを条件としている。首相が「政治生命をかけ」て道筋をつけた消費税率引き上げまで危うくなりかねない。首相周辺は「首相は消費増税ができなくなるのは何としても避けたいと思っている」と指摘する。