ゴルコサーティーワン!その激闘の記録!

この世界は・・・
”チキン”だけが”生き残る資格”
を持っている・・・

第20話 天下無双3

2008-03-24 09:09:55 | 第20話 天下無双
第7章 終焉の時・・・


 2008.03.23(日)

 幸いにしてホテルの問題はシェアルームをさせてもらう事で解決していたが・・・

 テレフェリコとの死闘を潜り抜けた今・・・

 もうメリダでやることが無くなっていた・・・

 セマナサンタが完全に終わった月曜からの移動を考えていたが。

 ここでベネズエラの国境町のサンアントニオ・デル・タチーラまで今日移動することにした。

 移動に関しては今日がピークになる筈だが、まあ何とかなるだろう。私は天下無双を制した剣豪なのだから・・・

 それにホテルはもう大丈夫と聞いている。

 メリダから国境まで全部で6-7時間、そして国境からボゴタ(コロンビアの首都)まで14-16時間。

 月曜日に移動を始めて一気にと考えるよりも今日国境まで行って、明日のんびりとボゴタを目指した方が利巧というものだ。

 そう、私の旅行の答えは・・・

 いつでも体が知っているのだから・・・


 そしてそれこそが・・・

 『旅行の理』

 というものだから・・・


 世話になったポサダに別れを告げ、バスターミナルへ向かう。

 1000時にバスターミナルに到着、長蛇の列に一瞬ぎょっとさせられたが、臨時便が出ることになり1100時には出発できることになる。

 『これも私が天下無双だからだろう・・・』


 メリダから国境街までは一本ではいけない。

 途中のサン・クリストバルでバスを乗り継ぐ。ここまでメリダから5時間ほど、時計は1630時を指していた。

 治安の悪い国境地帯に夜到着するのは得策ではない。

 ここから国境街まで1時間と少し、日没前には十分に間に合うだろう・・・


 これが乗り継いだバス



 しかし、それにしても私の動きは完璧だ・・・

 最早意識せずに動く"達人"・・

 いや・・・

 "名人"

 の域に達したといっても過言ではない・・・


 そう今の私は『完璧なツーリスト』・・・


 一部の隙も無い・・・


 バスはバンピーな道を順調に進む・・・


 しかし・・・


 山間を走り・・・夕方が迫るにつれ・・・気温が徐々に下がってきている・・・

 こんな感じの道を走ってます。



 今私が来ているのはTシャツ一枚。

 このまま最後まで行くのもいいが・・・

 ここで油断して風邪を引くのは愚の骨頂だ・・・

 そう思い、おもむろに長袖のシャツをとりだし、上に着ることにする・・・

 このあたりをおろそかにしないことが普通のツーリストと名人たる私の差だろうか・・・??




 そして・・・

 シャツを着ようとしていると・・・


 かけていた眼鏡が外れて・・・


 私の体でバウンドして・・・


 バスの窓から外へと・・・



 『あっ!!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~・・・・』


 声にならない悲鳴が上がる!!


 横に座っていた現地人が私の異変に気付き、バスを止める。

 もちろん私は即座にバスを飛び降り・・・そしてバスを止めてくれた現地人も一緒に・・・


 落としたあたりに戻ったが・・・


 眼鏡が見つからない・・・


 時間にして3分はかかってないだろうに何故・・・


 バスのスタッフも降りてきて・・・


 そしてバスに戻れと言う・・・


 このまま失ったわけにはいかないから私は荷物を降ろし・・・

 その場に残って探す事に・・・

 取りあえず持っていた予備の眼鏡をバッグから出してつけ、一時間程度さがしたが・・・

 まったく見つからずに・・・


 『ゆっ油断したっ!!』


 『石舟斎ならこんなミスはしないものを・・・!!』  


 『今までいってきた127カ国・・・そして数多くの観光地・・・そして今回のテレフェリコでの死闘・・・』


 『俺は・・・思い上がっていたのだ!!』


 『俺が柳生と言う訳ではないのに・・・』



 『・・・』



 『・・・・・・』



 『すべて・・・』


 『すべてたまたまだ・・・』


 『たまたま行ってきたに過ぎない・・・!!』




 これが落とした付近の道路




 ちなみに私は眼鏡と言えども最高級に近いものを使用していた・・・

 形状記憶合金でチタンフレームを持つその眼鏡は・・・

 フレームだけで3万円近く・・・そしてレンズも一番薄型の物にさらに傷がつきづらいコーティングまでしているので・・・

 トータルで約4万五千円・・・

 ベネズエラで過ごした10日間でだいたい300ドル近くつかった計算だから・・・

 これはそれを上回り・・・

 そして最初に諦めた「エンジェル・フォールズ」も行ってお釣りが来る計算だ・・・

 またこれは私が持っている装備の中で単価として一番高い装備品で・・・

 3年前に買ったから減価償却はだいぶしているもののそれでも今まで失ったものを考えてもどう考えても最高額の出費に・・・

 さらに悪いことに今もっている眼鏡の中で、予備にしているのはファーストミッションでフレームががたがたになったもので・・・

 さっきまでつけていた眼鏡が・・・

 私の持っている中でベスト眼鏡というべき物だったのだ・・・・!!


 一時間近く探したのであたりはどんどん暗くなり・・・

 バスを捕まえて国境町のサンアントニオ・デル・タチーラに着いたのは1900時・・・もう日は沈んでいた・・・




 ちいさな町なのでホテルはすぐに確保したが・・・

 私はホテルの中で・・・失ったものの大きさをかみ締めていた・・・



 天下無双を制した筈なのに・・・


 この"プロフェッショナル"ともあろう男が・・・!!




 その時、私には・・・ある声が聞こえてきた・・・




 「デュークよ・・・!!天下無双など・・・」



 「ただの言葉じゃ・・・!!」




 「目を閉じてみよ・・・」




 「見えるだろう・・・お前は無限じゃ・・・!!!」




 ・・・



 ・・・・・・



 『ハッ!!』



 『そうか・・・』


 『俺は・・・俺は天下無双という言葉に囚われすぎていたのか!!』





 そっと目を閉じて・・・




 もう一度見開く・・・




 だが、気付いたことがある・・・・






 『眼鏡がなければ何も見えねぇ~・・・!』




 と・・・






第8章 エピローグ


 前にも書いたが予備の眼鏡がある為に致命傷にはなっていない・・・


 だから今回のテレフェリコ、そして国境までの死闘を終えても・・・


 まだ私の旅行は続く・・・



 そう、俺はあの時・・・


 確かに心に固く誓ったのだ・・・!!


 天下無双を極め・・・


 『天下一旅行者(てんかいちツーリストもの)』

 になると・・・


 そう私の旅行はまだ始まったばかりだ・・・


 失ったものは確かに大きい・・・


 だが・・・


 この悲しみを乗り越えて・・・



 この先に進んでいくと・・・・




 旅行と言う名の螺旋を・・・


 行ける所まで行くと・・・





 完・・・