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有縁の方々のインタビューを通じて、共感と共有の種を播き、育てたい。

介護の現場でコミュニケーションのきっかけを得る方法

2012年08月13日 | インタビュー
福祉の現場で働く看護師・山内なぎささんインタビュー
『介護の現場でコミュニケーションのきっかけを得る方法』



 福祉の現場で働く看護師・山内なぎささん(関西在住)は、訪問した個人宅では、まずその家庭の仏壇に手を合わせてから、ご本人や家族とのやりとりをはじめられる。多くの高齢者のケアを実践してきた経験から、仏壇に手を合わせることは、円滑な人間関係を育てるために不可欠な要素だと実感されている。


写真 福祉の現場で看護師として働く山内なぎささん

山内さん はじめて訪問するお家では、まず最初に、仏壇や遺影があれば、そこで手を合わせます。
私たちが出会う高齢者の方々は、長い人生を歩んでこられた人たちであり、子どもを先に亡くしていたり、配偶者を亡くしていたり、心身共に満身創痍です。
相手は自分の人生を歩んでいるだけなのに、そこに、仕事として関わる他人が入り込んでくるわけですから、最初から素晴らしい出会いになるとは限らないでしょう。

――仏壇に手を合わせることが相手にとって重要な意味があるということに気づかれたきっかけなどありますか?

山内さん 最初の出来事は、(当時は認知症対応のデイサービスに勤務していました) 何十年も受診以外に外出をしたことがなく、這って移動する認知症の94歳の女性を担当したことです。その方にデイサービスへ来ていただくため私にお迎えの役目がまわってきました。
ご家族からは「施設に行くとは言わないこと」などいくつか注意事項を聞かされていました。「どこへ行く」とは言ってはいけない上、初めてお会いしますから関わりとしては難問題でした。
お家に上がり、とっさに、目の前にあった仏壇に手を合わせて「お参りさせてください」と言うと、ご本人の態度が、事前に聞いていたものとは全く異なり、親密に接していただきました。
その後、私は看護師なので、「足の健康状態を確認する」という口実で歩行状態を確認し玄関まで誘導し「靴を履けますか」と聞いたら、自身で進んで靴をはいて外に出られました。
認知症の方々が数人おられる車に乗ってもらうと、「どこに行くのか」と聞かれ、ご家族からは止められていましたが、やはりきちんとお伝えするべきだと思い、家族を説得し「デイサービスに行く」ということを伝えました。それでも拒絶されずに、お連れすることができました。

――ご家族は驚かれたことでしょうね。

山内さん 自分で玄関に這っていって、靴をはきだした時は家族さんも驚いていました。「デイサービス」と伝えてしまって良いのかという葛藤もあったようですが、でも、ご本人がそれを許容してくださって良かったです。この一件で、相手の家で仏壇に手を合わせるということの意味を考えるようになりました。

――他の家庭への訪問でも、実践されていますか?

山内さん しています。信仰は各ご家庭それぞれ違いますが、お参りの作法を教えてくださいます。
初対面の時などは相互の緊張感が和らぎますね。そこから皆さん、自分の生いたちを話してくれます。
私たちは、その人の人生に、人として関わらないといけません。そうしないと見えて来ないモノがありますよね。多くの方が気持ちをゆだねてくれて、接してくれるということを体験して行くと、仏壇に手を合わせるのは、人と人が出会うというきっかけを与えてくれているのだと思います。

Fin.


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