・「ミミ・クインの復讐」/シャーリー・コンラン
ミミ・クイン、リヴァプール貧民街出身の13歳の少女。彼女はメイドの職に就くため、駅で列車を待っているところだった。駅の構内で出くわしたのは、楽しげな旅芸人の一団。彼らに誘われ、ミミはメイドよりも芸人として生きていく道を選択した。
ミミは劇団の中で少しずつ芸を覚えていった。何よりも嬉しかったのは、彼女に同じ年頃の親友ができたことだった。いつも母親にべったりで、何でも母親の言いなりのベッツィ。ミミより歌は上手くないけど、美少女で、母親から厳しく教え込まれた、上品なたたずまいをしている。二人は親友だった。この関係は生涯続くものと思っていた。しかし友情はそう長く続かなかった。
きっかけは出し物の終わった劇場で、ミミがストッキングを染め直しているところだった。残っているミミに気づかず、管理人はカギを閉めてしまう。そんな劇場の中で、火事が起きてしまう。
かろうじてミミは救助されたものの、彼女は顔の一部と腕に消えることのない傷を負った。ミミはもう舞台に立つことはできない。自分がこんな目にあってしまったのは、ベッツィのせいだ。ベッツィが劇団から自分を蹴落とそうと、わざとカギを閉めたにちがいない。その日からミミは、ベッツィを深く恨むようになった。
ベッツィを絶対に許さないと心に誓った一方で、ミミの私生活は次第に好転していく。彼女は男装のシンガーとして新たに人気を博し、劇団の友人と結婚もする。名門俳優の一家に嫁いだことによって、彼女の地位は大きく飛躍した。いまやミミは劇場を経営しながら自らも舞台に立つ、イギリスでもっとも有名な俳優となっていた。
一方でベッツィにも好機が訪れた。しがないコーラスガールを続けていた彼女は心機一転アメリカに渡り、新興産業の映画の仕事をしていくうちに、一流の映画女優となる。彼女は実業家の男と結婚し、ベッツィもまた、ミミと同じく成功を手にしたのだ。
けれどもミミとベッツィの間の緊張は解かれることはなかった。アメリカとイギリス、遠く離れていてもお互いの噂は耳に入ってくる。ラジオや新聞で互いの名前を聞くたびに、二人は相手への憎悪を燃やすのだった。そんな関係は二人が結婚しても、子供を産んでも、その子供がまた結婚しても続いていく。果たして二人の少女に和解の日は訪れるのだろうか…?
1900年代の初頭から第1次世界大戦をはさみ、第2次大戦の途中の1940年代まで脈々と語り継がれる、まさに二人の一大サーガといった感じ。言うまでもなくこの年代は20世紀の歴史のダイジェストともいえる時代背景で、そんな激動の時代の中で必死に生き抜いていくミミとベッツィの二人の姿がありありと描かれている。
タイトルには「復讐」とは書いてあるけど、やっぱりコレ自体「成功の物語」なんじゃないかなと読んでいて感じる。ミミはイギリスで、ベッツィは新天地アメリカで才能を認められ、それぞれの成功を手にする。その成功を一緒に喜びあえる家族がいる。成功体験という、明るい側面があるから楽しく読めるんだと思う。二人の陰湿な足の引っぱり合いの話だけじゃなくてね。
でもそれだけが物語のテーマではなくて、相手を深く愛しているからこそ、裏切られた時のショックが計り知れないという愛憎…このモチーフは子供の代にも使われていて、中盤はそういった二人の子供の世代の物語が中心かな。美少年で情熱もあるんだけど、才能が伴わずに空回りばかりしている、ミミの息子がいいキャラかも。
それで、ラストは唐突にぶつ切れになっている。ミミとベッツィは最終的に和解したけれども、両家族にはまだまだ深刻な問題が残されている。それでも同じ方向を見つめている二人にはきっと明るい未来が…みたいなエンドで。続編につながりそうな雰囲気だけど、こういう終わり方も印象的でいいかもしれない。
ミミ・クイン、リヴァプール貧民街出身の13歳の少女。彼女はメイドの職に就くため、駅で列車を待っているところだった。駅の構内で出くわしたのは、楽しげな旅芸人の一団。彼らに誘われ、ミミはメイドよりも芸人として生きていく道を選択した。
ミミは劇団の中で少しずつ芸を覚えていった。何よりも嬉しかったのは、彼女に同じ年頃の親友ができたことだった。いつも母親にべったりで、何でも母親の言いなりのベッツィ。ミミより歌は上手くないけど、美少女で、母親から厳しく教え込まれた、上品なたたずまいをしている。二人は親友だった。この関係は生涯続くものと思っていた。しかし友情はそう長く続かなかった。
きっかけは出し物の終わった劇場で、ミミがストッキングを染め直しているところだった。残っているミミに気づかず、管理人はカギを閉めてしまう。そんな劇場の中で、火事が起きてしまう。
かろうじてミミは救助されたものの、彼女は顔の一部と腕に消えることのない傷を負った。ミミはもう舞台に立つことはできない。自分がこんな目にあってしまったのは、ベッツィのせいだ。ベッツィが劇団から自分を蹴落とそうと、わざとカギを閉めたにちがいない。その日からミミは、ベッツィを深く恨むようになった。
ベッツィを絶対に許さないと心に誓った一方で、ミミの私生活は次第に好転していく。彼女は男装のシンガーとして新たに人気を博し、劇団の友人と結婚もする。名門俳優の一家に嫁いだことによって、彼女の地位は大きく飛躍した。いまやミミは劇場を経営しながら自らも舞台に立つ、イギリスでもっとも有名な俳優となっていた。
一方でベッツィにも好機が訪れた。しがないコーラスガールを続けていた彼女は心機一転アメリカに渡り、新興産業の映画の仕事をしていくうちに、一流の映画女優となる。彼女は実業家の男と結婚し、ベッツィもまた、ミミと同じく成功を手にしたのだ。
けれどもミミとベッツィの間の緊張は解かれることはなかった。アメリカとイギリス、遠く離れていてもお互いの噂は耳に入ってくる。ラジオや新聞で互いの名前を聞くたびに、二人は相手への憎悪を燃やすのだった。そんな関係は二人が結婚しても、子供を産んでも、その子供がまた結婚しても続いていく。果たして二人の少女に和解の日は訪れるのだろうか…?
1900年代の初頭から第1次世界大戦をはさみ、第2次大戦の途中の1940年代まで脈々と語り継がれる、まさに二人の一大サーガといった感じ。言うまでもなくこの年代は20世紀の歴史のダイジェストともいえる時代背景で、そんな激動の時代の中で必死に生き抜いていくミミとベッツィの二人の姿がありありと描かれている。
タイトルには「復讐」とは書いてあるけど、やっぱりコレ自体「成功の物語」なんじゃないかなと読んでいて感じる。ミミはイギリスで、ベッツィは新天地アメリカで才能を認められ、それぞれの成功を手にする。その成功を一緒に喜びあえる家族がいる。成功体験という、明るい側面があるから楽しく読めるんだと思う。二人の陰湿な足の引っぱり合いの話だけじゃなくてね。
でもそれだけが物語のテーマではなくて、相手を深く愛しているからこそ、裏切られた時のショックが計り知れないという愛憎…このモチーフは子供の代にも使われていて、中盤はそういった二人の子供の世代の物語が中心かな。美少年で情熱もあるんだけど、才能が伴わずに空回りばかりしている、ミミの息子がいいキャラかも。
それで、ラストは唐突にぶつ切れになっている。ミミとベッツィは最終的に和解したけれども、両家族にはまだまだ深刻な問題が残されている。それでも同じ方向を見つめている二人にはきっと明るい未来が…みたいなエンドで。続編につながりそうな雰囲気だけど、こういう終わり方も印象的でいいかもしれない。