・宙の地図/フェリクス・パルマ
というわけで続編です。
前作で時間旅行に関する一連の騒動を解決したウェルズは、「宇宙戦争」という小説を発表したところ。火星人が地球を侵略するという話で、これは文明国の植民地支配に対する批判として書いたものだが、これもまた「タイム・マシン」ブームのごとく、各地でパクりやインスパイアされた小説が粗製乱造され、ウェルズは頭を悩ませる。
勝手に宇宙戦争の続編を書いたサーヴィスというアメリカの作家が、イギリスに来て是非会いたいというので、やめるようにと注意するはずだったウェルズだが、意外にも彼の人柄を気に入ってしまい、意気投合してしまう。
彼の話を聞いていくと、火星戦争はけっして創作ではなくて、本当に火星人はいるという。
ロンドン自然史博物館の秘密の部屋には、南極から出土したと言われる火星人のミイラや乗り物が保管されていて、彼はこの目で見たというのである。
かくして物語の舞台は南極へ。今からさかのぼること70年前の1829年、地球空洞説を信じて南極探索船に乗り込んだ、レイノルズという男の物語から本編が始まる…。
相変わらずの情報量の多さに反して読みやすいのは、この作家が単純に上手いんだからだろうな。しかも自分自身、今ちょっとこの文体に影響されてるし。こんなふうに読んでいるうちに自分の中に作品が入ってきて、身体の中で化学変化が起きていくのが、マンガや小説を読むことの面白さだと思うんです。
第1部は、レイノルズと探索船クルーのアランという青年が、南極で未知の存在と遭遇する、ダン・シモンズの「テラー」そのまんまみたいな話。
このアランという作家志望の青年はエドガー・アラン・ポーのことであり、南極探索船こそ乗っていないけど、作中で語られる生い立ちや、死の間際にレイノルズを呼んでいたのも史実であるようだ。
第2部は、前作のインチキ時間旅行で世間をお騒がせした男・マリーが再登場する。
あの騒動の後、名前を変えアメリカに渡ったマリーは、エマという令嬢に恋をする。しつこくプロポーズを続けるマリーに、エマはひとつの条件を出す。
彼女が求めるのはどんな宝石や洋服でもなく、小説「宇宙戦争」のように、ロンドンに火星人を登場させて、世界中の新聞を賑わせること。それができるなら、マリーと結婚してもよいという。
金でも名誉のためでもない、ただ愛するの人のために。マリーは世界に再び奇跡を起こすことができるのか…?
空想科学ファンタジーといった雰囲気とは裏腹に、今回はわりとバンバン人死にが出るハードな展開となる。だって本当に火星人が登場して、地球人たちを攻撃し始めるんですもの。ええ…(ドン引き)
高度な文明を持つ火星人に19世紀のイギリス軍がかなうはずもなく、人類はあっという間に全員奴隷化されて、火星人の不気味なピラミッドを建設する労働力となってしまう。
いやーここまでスケールをデカくされてもなあ…という微妙な雰囲気になってしまうんだけど、こんな絶望的な状況にまでなってしまった今、どういうオチをつけるのか…?
最後はかなり唐突な感じで駆け足に終わるけど、よくよくもう一度最初のほうを読むとなるほどな、というところがあって、そもそもウェルズは宇宙戦争を批判や風刺の目的で書いているんですよね。なぜならウェルズ自身が他の人間に対して懐疑的で、他人を信用していないから。
そこを、より大衆向けの、純然たるエンタメとしてハッピーエンドの物語にすることで、多くの人が幸せになる。火星人が勝利するのではなく、人間たちが勝利するというオチをつける。どうやって勝つかはウェルズ本人も思いつかないけど、それこそが世界を救う鍵となる。
ちなみにタイトルにある宇宙の地図というアイテムが第2部から出てきて、これが全体のキーアイテムになるかと思ったら全然そうでもなくて、この宇宙の地図は襲撃から逃げる途中で放棄されてしまうという…なんだったんだこりゃ。
さてさて、上下巻読み終わるのにずいぶん時間かかってしまったけど、gooブログも終わることだし、勝手気ままな読書感想文を書くのはこれでひとまず終わりたいと思います。ありがとうございました。
というわけで続編です。
前作で時間旅行に関する一連の騒動を解決したウェルズは、「宇宙戦争」という小説を発表したところ。火星人が地球を侵略するという話で、これは文明国の植民地支配に対する批判として書いたものだが、これもまた「タイム・マシン」ブームのごとく、各地でパクりやインスパイアされた小説が粗製乱造され、ウェルズは頭を悩ませる。
勝手に宇宙戦争の続編を書いたサーヴィスというアメリカの作家が、イギリスに来て是非会いたいというので、やめるようにと注意するはずだったウェルズだが、意外にも彼の人柄を気に入ってしまい、意気投合してしまう。
彼の話を聞いていくと、火星戦争はけっして創作ではなくて、本当に火星人はいるという。
ロンドン自然史博物館の秘密の部屋には、南極から出土したと言われる火星人のミイラや乗り物が保管されていて、彼はこの目で見たというのである。
かくして物語の舞台は南極へ。今からさかのぼること70年前の1829年、地球空洞説を信じて南極探索船に乗り込んだ、レイノルズという男の物語から本編が始まる…。
相変わらずの情報量の多さに反して読みやすいのは、この作家が単純に上手いんだからだろうな。しかも自分自身、今ちょっとこの文体に影響されてるし。こんなふうに読んでいるうちに自分の中に作品が入ってきて、身体の中で化学変化が起きていくのが、マンガや小説を読むことの面白さだと思うんです。
第1部は、レイノルズと探索船クルーのアランという青年が、南極で未知の存在と遭遇する、ダン・シモンズの「テラー」そのまんまみたいな話。
このアランという作家志望の青年はエドガー・アラン・ポーのことであり、南極探索船こそ乗っていないけど、作中で語られる生い立ちや、死の間際にレイノルズを呼んでいたのも史実であるようだ。
第2部は、前作のインチキ時間旅行で世間をお騒がせした男・マリーが再登場する。
あの騒動の後、名前を変えアメリカに渡ったマリーは、エマという令嬢に恋をする。しつこくプロポーズを続けるマリーに、エマはひとつの条件を出す。
彼女が求めるのはどんな宝石や洋服でもなく、小説「宇宙戦争」のように、ロンドンに火星人を登場させて、世界中の新聞を賑わせること。それができるなら、マリーと結婚してもよいという。
金でも名誉のためでもない、ただ愛するの人のために。マリーは世界に再び奇跡を起こすことができるのか…?
空想科学ファンタジーといった雰囲気とは裏腹に、今回はわりとバンバン人死にが出るハードな展開となる。だって本当に火星人が登場して、地球人たちを攻撃し始めるんですもの。ええ…(ドン引き)
高度な文明を持つ火星人に19世紀のイギリス軍がかなうはずもなく、人類はあっという間に全員奴隷化されて、火星人の不気味なピラミッドを建設する労働力となってしまう。
いやーここまでスケールをデカくされてもなあ…という微妙な雰囲気になってしまうんだけど、こんな絶望的な状況にまでなってしまった今、どういうオチをつけるのか…?
最後はかなり唐突な感じで駆け足に終わるけど、よくよくもう一度最初のほうを読むとなるほどな、というところがあって、そもそもウェルズは宇宙戦争を批判や風刺の目的で書いているんですよね。なぜならウェルズ自身が他の人間に対して懐疑的で、他人を信用していないから。
そこを、より大衆向けの、純然たるエンタメとしてハッピーエンドの物語にすることで、多くの人が幸せになる。火星人が勝利するのではなく、人間たちが勝利するというオチをつける。どうやって勝つかはウェルズ本人も思いつかないけど、それこそが世界を救う鍵となる。
ちなみにタイトルにある宇宙の地図というアイテムが第2部から出てきて、これが全体のキーアイテムになるかと思ったら全然そうでもなくて、この宇宙の地図は襲撃から逃げる途中で放棄されてしまうという…なんだったんだこりゃ。
さてさて、上下巻読み終わるのにずいぶん時間かかってしまったけど、gooブログも終わることだし、勝手気ままな読書感想文を書くのはこれでひとまず終わりたいと思います。ありがとうございました。