落書き帳

あまり触れられないことに触れる
内容は備忘録のため、誤解等含め随時改変

エンジン技術_番外編2 トルコンの逆駆動特性

2014年04月22日 | エンジン・自動車

「トルコン」にもイロイロ種類があるようだが、イマドキのジドウシャ用に限定する。何型?はググる。

フツウは見かけることのない、逆駆動特性。エンジンブレーキ時の特性。

ググっても明示的なものは出ない。本でも見かけたことがない。特許には出てくるようだ。

 

図は排気量2L、昔一般的だった4ATを想定。

タービン1000rpmの逆駆動力(赤線矢印)はエンジンフリクションに届いてエンジンを逆駆動して燃料カットを継続できるか?

最初に結論

定性的にはタービン1000rpmではエンジンフリクションに届かず燃料カットを継続できないが、定量的にどのぐらい届かない?

 

*** 青線 タービン回転=ATギヤ列入力回転=0rpm  車両停止状態 ***

Dレンジアイドル600rpmとするとエンジンに14Nmのトルコン負荷がかかった状態でネンピは悪くなる。連れ回りしようとするタービンをクラッチで駆動側(タイヤ側)につないで止まっている状態。Nレンジならタービンはフリー回転でエンジンとほぼ等速度で回りネンピはDレンジより2割儲かる。コマゴマした数字は忘れたが3割違うこともあったような。このへんはアイドル回転(N、D)、エンジン、トルコン特性、ATオイルポンプ負荷(ライン圧制御)等で変わってくる。エアコンはOFF、暖機後の数字。

オマケ Dのアイドル回転がNより低い理由

ISCのないキャブレター時代からそうなっている。ISCがなければ停車中Dレンジはトルコン負荷がかかる分Nレンジよりアイドル回転は下がる。ガソリンの場合、等空気量線が回転~トルクマップの左下では右下がりに入る。等空気量で負荷がかかると回転が落ちて負荷と釣り合う。

ISC付を前提とすればアイドル回転は任意に設定できるが、燃焼安定性、振動、発電、エアコン等の成立する範囲でアイドル回転は下げる。燃焼安定性は負荷が下がるほど悪くなるが、Dレンジは負荷がかかっている分Nレンジよりもアイドル回転を下げても燃焼安定性は成立する。

0km/h・Dレンジでアクセルを「ゆっくり」踏み増すとエンジンは青線に沿ってしか動けない。全開トルクとの交点がストール回転数。0km/h(速度比=0)でATギヤ列入力トルクはエンジントルクの2倍程度。「エンジントルク2倍だから儲かった」と脊髄反射したら宣伝と詐欺の餌食で、何倍にトルク増幅しようが出力仕事(J)・出力パワー(J/s、W)はゼロで伝達効率は0%。2倍ローギヤードのMTでクラッチを滑らせているのとエンジンパワー・トルクの駆動輪への伝達状態は変わらない。

出力軸(タービン)が回っている状態でも必ずトルコン入力パワー>トルコン出力パワーで伝達効率<100%。発進の「一瞬だけ」オラオラできる事に騙されたら宣伝と詐欺の餌食で、動き出すとたちまち加速は衰える。

変速幅が広がったイマとなっては利点はスムーズネスと発進クラッチメンテフリ―。入力回転≠出力回転の状態で(ATF温度は上がるが)機械的摩耗とは無縁。変速幅が広がったイマでも「トルク増幅」が要るのか?この辺の話は「一生やってろ~ウマイマズイの繰り言コンニャク問答」になりがちなので傍観者はスルーする。

と書いたが、「タダ同然ダ~」でアッという間にアタリマエになったNアイドルは話が違う。Dレンジならフツウはいわゆる「フォワードクラッチ」は締結しっぱなしのまま発進で車両停止Dレンジならタービンは0rpm。Nアイドル付きはDレンジ停止はフォワードクラッチは解放で、発進の際フォワードクラッチが解放→締結 となり滑りが入る。エンジンと(ほぼ)等速度で回るタービンを0rpm近傍まで落とすから必ず「クラッチ滑り」が入る。

トルコンの「トルク増幅」が、永久機関もどきの「パワー増幅」をしていると思った人は詐欺に注意。「増幅」には詐欺モドキの臭いがつきまとう。

最初の詐欺臭記憶は、トランジスタの「電流増幅」。素子が勝手にパワー増幅???分かってしまえばアタリマエの話で回路をガン見すれば別電源から大飯食っている。大飯の??%は熱になって消えて出力パワーとは無関係。初学者には半導体云々とかは最初はどうでもいい話で、できる事・やっている事の概要・目的が先。電源無しでもAMラジオは成立しイヤホンでなんとか聴けるが、電気代タダで音量がデカクできると思ったら挑戦すべし。

時を経ると「元々の意味・意図・背景・筋書き」は忘却されて効能書き(宣伝の部分)だけが残る。違和感を感じたら「力」「トルク」「電流」「電圧」の類ではなく、仕事(J)、パワー(W、J/s) で考える。イカサマが成立すると主張する人は実証すべし。

「アクセルをゆっくり踏み増すと」の意味は、急踏みすれば青線の上側のエンジントルクも使う(青線の上側のエンジン運転点もある)の意味。通過するだけで、定常的に居座ることはない。定常的に居座るのは青線だけ。急踏みするとエンジン回転が上がろうとするが、すぐ上がれない。エンジントルク増→エンジン回転増→ATFを更に加速→タービントルク増を経て、青線に落ち着く。アクセルを戻したしたときは青線の下を通過して定常的には青線に落ち着いて居座る。どこに落ち着いて居座るか?は↑に等スロットル開度線を記入すればわかる。電スロの場合は等アクセル開度線になるだけ。

エンジン技術_8 アクセル開度~エンジントルクマップ作成

 

*** 赤線 タービン回転=ATギヤ列入力回転=1000rpm  1速10km/hとか4速40km/hとかに相当 ***

極低車速以外(この例では10km/h以上)でのATギヤ列入力最低回転数(=タービン回転数)。赤線に沿って動くのだが、ここで取り上げるのは燃料カットで、エンジン回転が急激に落ちる。タービン回転数1000rpmでは、燃料カットできない。ムリヤリ燃料カットしてもエンジン回転がガタンと落ちるので、「直ちに」再噴射する。

 

*** 黄線 タービン回転=ATギヤ列入力回転=2000rpm  ***

黄線タービン2000rpmなら、燃料カットしてもエンジン回転がガタ落ちすることはない。

 

これだけでトルコン=ダメとするのは短絡的。タービン回転が下がるほど逆駆動能力が落ちるので、微速下り坂では自動的にスムーズな特性になる。エンジンブレーキが自動カットになる。某社二輪用DCT(フル電制シフトバイワイヤー)は、楽チン+MTと燃費同等+MTより圧倒的にスムーズ+パワーONのままアップダウン自在だが走行中Nにできない(この「仕様」の理由は知りません)ので微速下り坂は乗りづらい。1速エンブレは無い方が圧倒的に乗りやすい。燃料カットの有無は本件では問わない。1速エンブレが要る車両と走行シーンを抽出する方が困難で、オフロード超急勾配、(可能性はともかく)ブレーキ2系統共故障時の非常停止用ぐらいでは?

クラッチ滑らせばトルコンと同等のハイカットフィルターになる?

これまた疑問符が付く。トルコン付DCT出現がなによりの証拠。クラッチ押し付け力=クラッチ伝達トルク(クラッチ滑り速度は関係なし)が100%成立すれば伝達トルクは真っ平らにできるが、これは0次近似(ある意味AT屋の願望)に過ぎない。教科書的に言えば、ハイカットが強力=積分系=遅れ系、クラッチ=リアルタイムトルク伝達(伝達系としてはハイカット機能なし)、ということだが。

トルコンのIp(慣性モーメント)は大きい?

トルコンのIpは大きいなる記述をどこぞやで見かけたことがあるが、不正確。トルコンのポンプ+タービンはペラペラで軽く中身にはATFがぎっしり詰まっている。低周波入力に対しては「重い」のだろうが、高周波入力に対してはATFの動作が追従できないので「軽い」。エンジンと剛結しているのはトルコンポンプだけ。エンジン側から見た、エンジントルク高周波成分に対する等価慣性モーメントはMT(クソ重いフライホイールがクランクに剛結)より圧倒的に軽い。ポンプ~タービン直結のロックアップ状態でも同等の軽さ。(ダンパースプリングが介入していることに注意) MTのフライホイールもイマドキはダンパースプリング付きがあるようだが、かかわった(別の眼で外から眺めた)事がないので省略。

 

トルコン特性は、トルコン側から見た特性図は頻出するが、↑のようにエンジン側から見た特性図はあまり見ない。マイナスエンジントルク(逆駆動のエンジンブレーキ状態)まで表現したものは見たことがない。こう書いた動機は、燃料カットがらみと〇×△診断がらみ。〇×△診断が全く診断領域に入らぬ(診断原理的に診断領域は非常に狭くならざるを得ない)→トルコン特性を考慮すれば入らなくて当たり前だった。タービン回転固定で考えれば、エンジンの安定的定常的運転点は、↑の線に限定される。

タービン回転固定で考えると、エンジン動作点はトルコンロックアップならMTと同じで↑図で垂直に動くが、ロックアップOFFでは右上がりになる。傾斜が寝る=トルコンスリップ。MT or ATロックアップONでもエンジン回転が動くじゃねえか、と言い出す方は「エンジントルクがタイヤ駆動力か、エンジン回転(とタービン回転の差)がタイヤ駆動力か」に遡るべし。MT or ATロックアップONなら「踏んだ瞬間」はエンジン回転は動かずエンジントルクだけが動く。↑に書いたが、ロックアップOFFではエンジン回転を動かさない限りタイヤ駆動力(エンジントルクではなくタービントルクで決まる)はビタ一文変わらない。

 

ワンウエイクラッチ

云々とおっしゃる方がいると思われるが、本件の場合はハズレ。アクセル全閉で、

Dレンジ4速

3レンジ3速

2レンジ2速

1レンジ1速

で確認し現象は全て同じ。変速機構中にワンウエイクラッチはあるが、上記の条件ではワンウエイクラッチはトルク伝達経路上にはなく無関係。この条件でトルク伝達経路上にワンウエイクラッチが入るとエンジンブレーキは全く効かなくなる。ワンウエイクラッチが関係しているとすれば、いくらタービン回転(車速)を上げてもアクセルオフするとすぐにエンジン回転数がアイドル回転に落ちる。

手元のヤヤコシイ図と表を絵を描きながら読み解くと、ワンウエイクラッチによりエンジンブレーキが絶対に効かない条件は

Dレンジ3、2、1速

3レンジ1速

2レンジ1速 

に限る。

1レンジはワンウエイクラッチ無効で1レンジだけは1速でエンブレが効く。こうなっていなければ1レンジの存在意義がなくなる。

ワンウエイクラッチがトルク伝達経路上にある場合、トルコンロックアップでもタイヤ→エンジン方向のトルク伝達はビタ一文できない。現実には上記の条件で(各シフトレンジの非最上段ギヤでアクセルオフ)、トルコンロックアップ+ワンウエイクラッチ無効化(入出力を直結)しても、タービン回転数が低いので(アクセルオフで目一杯アップシフトしている)燃料カットするエンジン回転数に達しないと思われる。

CVTの場合はトルコンの外にワンウエイクラッチは存在しない。トルコンの中のワンウエイクラッチは、トルコンをトルコンとするために存在するもので、全く別の話。

 

 

トルコンの逆駆動特性 (エンジンブレーキ側)

 

むかしむかし、逆駆動側の特性はこうなっているはずである、と落書き帳にエイヤーと線を引いた。さーて計算してみるか~  ここで興味本位の「独自研究」は中断されて〇〇年経過・・・ 

図はトルコン単体データとか理論計算とかによるものではなく、説明用のテキトーな絵。タッタ1日未満の実車実験のキオクによる。トルコンは当方には魔法のブラックボックスで理論の類には無縁だが、こうすると実際の特性に近そうなのだ。直線で延長は正しくないとかのウンチクたれたい方はweb上で実データなりヘリクツなりを公表されたし。ウンチクヘリクツと揶揄するのは、(ノウハウ・後知恵領域を除く)トルコン技術最高峰はこのフシギなブラックボックスを最初に作った人で、その他は全部ドングリの背比べ。

オマケ 

99.9999999%の人はフツウの人で「ドングリの背比べ」 〇〇の神様とかの類も、周囲に居た人間からは「ウサン臭ェ」が漏れ伝わる。何らかの組織が組織の論理で広報的に持ち上げたケースが多数。イマドキ鵜呑みにしたら絶滅危惧種orオヒトヨシ。モデルがある小説の類でも同じで、ストーリーに邪魔な側面は全部「なかったことにする」 ゲスはこの種の「ブチマケ」が大好きでメモリーから揮発しない。

 

容量係数は、カップリング点 ~ 速度比=1.0(入出力回転差がゼロ→トルク伝達能力0Nm・容量係数=0)の特性をそのまま右下に直線で延長する。

トルク比は1.0のまま。

これを使って、エンジンブレーキ時のトルコンスリップを試算する。

エンジンフリクション+ポンピングロスは低回転20Nm、回転が上がると若干増えるものとした。

ギヤ位置固定のまま、車速を下げていく。タービン回転も下がる。エンジンは燃料カットしたまま。

タービン回転が1000rpmに近づくと、エンジン回転が急激に落ち込む=トルコンスリップが増える。エンジン回転が下がればエンジンは燃料カットを止める。上の例だと、タービン回転1500rpm(4速60km/h)程度にならないと、燃料カット継続できない=エンジンブレーキ効かない。実際はもっと高車速だった(トルコンスリップが多かった)気がするが詳細は忘れた。と書いたが、かすかなキオクによる後日記は↓の方で。

グラフを見ると、タービン1000rpmのときエンジン500rpmで、エンジン500rpmを我慢すれば使えると読むのは読みが甘い。このへんはもはや不安定領域で、一旦エンストするとタービン回転をいくら上げてもエンジン0rpmから引き上げられない。エンジン500rpm以下でグラフが逆側に曲がることの意味がこれ。よってATはエンスト状態でDレンジ相当の動力伝達状態保持が可能でも(タービンがフリー回転であるNレンジ状態にならなくても)トルコンをロックアップしない限り押しがけはできない。(+変速機構の中にワンウエイクラッチがありこれが効く条件ならば殺す必要あり) 

と断定調で書いたが、ここは推定で試したことはない。誰か似たことをやったことがある方は公表してね。端的に言えば

「トルコンロックアップ=OFFで押し掛けができるか?」

古文書(日本人による)によると、大古のアメ車のATには出力軸側にもオイルポンプがあったらしい。エンスト中の押し掛け状態でもAT内部の制御油圧は確保できるが押し掛けできるかは別問題。古文書には「押し掛けのために出力軸にもオイルポンプがあるのだ」と書いてあったとキオクする。いわゆる「大家」の言うことでも違和感があれば鵜呑みにせず追究する。シツコク言うと「ステーターのないフルードカップリング」(過去にいくつか例があり某社の小型トラックはイマでもコレらしい)は対象外。元々トルコンよりも低タービン回転の逆駆動トルク(容量係数)がデカイらしい。トルコンロックアップ=OFFで押し掛けができるか?は本題ではないのでこれ以降では触れない。

エンストリスクを無視してタービン1000rpmエンジン500rpmにすればエンジン消費パワーは半分で (このへんではエンジンフリクショントルクは回転数で大して変わらない) 、エンジンブレーキ力が減りそうでCVT車の燃料カット下限車速をもっと下げてモードネンピ=カタログネンピを計測困難レベルで良くできると思うのは勘違い。トルク比=1.0のままなので、エンジン消費パワーは半分だが、残り半分はトルコンで消費され、タービン要求パワーは変わらずエンブレGも変わらない。スリップロックアップでも同じで、エンブレ消費パワーはタービン回転で決まってエンジンとの回転差分はクラッチ発熱で消費される。エンブレ要らないなら燃料吹く、燃料使いたくないならエンジンを止めるしかない。

  

トルコン容量係数はストール回転数を同じとすれば(実車はどれでも大同小異)エンジントルク比例で排気量比例。エンジンフリクションも排気量比例。発進性要求で容量係数は変えるが、どれでも似た特性になる。実務上は「いじらずに」既存バリエーションから選択する。例えばタービン1100rpmでエンジン1000rpmが可能な逆駆動側の容量係数は算出できるが、その延長線が駆動側の容量係数で、駆動側も馬鹿タイトになり使い物にならない。

 

破線領域が実在するのか計算上だけのものか?

タービン回転固定で、ポンプ回転=エンジン回転によって、逆駆動トルクは計算上は↑のようになる。

タービン1000rpmでは、エンジン500rpmでぎりぎり釣り合うが、フリクションが21Nmになれはアウト。

タービン1500rpmではエンジン1300rpmで釣り合う。フリクションが増えれば(減れば)回転下がる(上がる)が伝達トルクが増えて(減って)伝達トルクと釣り合う。回転基準で考えても、回転下がれば(上がれば)伝達トルクが増えて(減って)、元の回転で釣り合う。

タービン1500rpmで、ポンプ200rpmでも計算上は20Nm伝達できるが、

フリクションが少し増えると回転下がって伝達トルクが減り0rpmへ。フリクションが少し減ると回転上がって伝達トルクが増え山の頂上へ。回転基準で、回転下がると伝達トルクが減って0rpmへ、回転上がると伝達トルクが増えて山の頂上へという???領域。

上2枚のグラフを見ると、容量係数を変えても、山の頂点は速度比=2.0 にあることに気がつく。上図の速度比≧2.0の実態については???とする。

後知恵によれば、速度比が大きい領域は容量係数の絶対値が過大で釣り合い上もおかしな領域になっているのだが、¥と無縁な独自研究は「まずは勢い!」ということで。

 

 

後日memo

速度比≧1.0の容量係数を右下に直線でエイヤーと延長すると、計算上は減速側の最大伝達トルクは速度比=2.0 で出る模様。直線で延長したのは容量係数算出にプログラミングの類が不要だから。速度比=1.0近傍の挙動は直線延長でも定性的にはソレらしく表現される。

むかしむかしの記憶を甦らせると

・10-15モードの最高速70km/hではアクセルオフで燃料カット継続しない。燃料カット継続にはタービン1500rpmでも不足で2000rpm(4速80km/h)程度が必要。 

計算上タービン2000rpm以上になってエンブレが効くのは

マニュアル 4→3で56km/hまで(車間調整)

マニュアル 3→2で36km/hまで(山道)

マニュアル 2→1で20km/hまで(滅多に使わない) 

()は路上でよくありそうなシーンで、エンブレ維持にはタービン2000rpm以上のかすかな記憶は正しそうである。

・タービン1000rpmでエンジン500rpmは継続不可能。燃料カット→再噴射回転は思い切り下げて350rpm これでもタービン2000rpm付近で再噴射する。タービン2000rpm付近でエンジンフリクションを持ち上げられなくなって、エンジン回転がストンと落ちる。ストンと落ちる直前のエンジン回転はタービン回転よりもやや低い程度。タコメーターのチラ見だけではロックアップ状態と区別しづらい。再噴射エンジン回転350rpmは実験用に馬鹿sageした値だがエンストはしなかった。

以上の辻褄を合わせる為に、速度比>1.0 の容量係数をいじる。

特許でこんな↓カッコのグラフ見かけたようなキオクがあるなあ・・・

いちいち記録していないのでその後見つけられず

 

→ 速度比>1.0(減速側)の容量係数(の絶対値)を下げてトルコンスリップを大きくする。数字は全てテキトー。速度比→容量係数テーブル参照はVBAマクロで作成。入力値X(速度比)→出力値Y(容量係数)は該当格子点2点を線形補間するだけで、フツウのECUの演算方法と同じ。速度比>2.0の容量係数は、速度比=2.0の値を用いる。物理的根拠はなく「コレより右に伸ばしても無意味」との気分による。

計算結果

これならキオクと辻褄が合う。限られた脳内判断材料をフル動員して、オレ的に違和感なし。

この絵のゲスの解釈は、

エンジンフリクションはクランク角で変動しているが、↑はその平均値にすぎない。トルコンの逆駆動能力が「ある程度」エンジンフリクションを上回らないと、トルコンはエンジンフリクションを安定的・定常的に持ち上げられない。ギリギリかすっている位ではダメですよ~ ←キオクと辻褄を合わせるための方便

赤線より上側はトルク増幅域、下側はトルク比=1.0

WOT発進時0km/hでトルク増幅率が最大で、その先は増幅域が狭まり増幅率も小さくなる一方→「発進だけ」オラオラできる。

 

まとめ 

昔のAT=エンブレ効かないの原因 Dレンジでは、高車速以外はマニュアルでダウンシフトしない限りエンブレパワー=0

① タービン回転が下がるとトルコンの逆駆動能力が極端に低下する。上の計算例ではタービン2000rpm(4速80m/h)程度ないとエンジンフリクション(ポンピングロス込)を持ち上げるだけの逆駆動能力がない。

トルコン逆駆動能力とエンジンフリクションの計算上の数字合わせは無意味になったのでスルー。逆駆動側(速度比>1.0)のトルコン単体データがあればよし、になるのだが傍観者は見た事がない。

エンジン動作点のイメージでトルコン特性を計測すると(回転運動そのままの概念「速度比」はイメージしづらい)

・タービン側をダイナモで定rpm制御  測定値は タービントルク、タービンrpm(定rpm制御)

   タービンrpmを振る 0、500、1000、1500、2000・・・ 0rpmはダイナモ焼けるからダメ?なら0rpmは他の手段で

・ポンプ側をダイナモで定トルク制御  測定値は ポンプrpm、ポンプトルク(定トルク制御)

   ポンプトルクを振る・・・

エンジン側から見たトルコン特性になる。長年膨大な数の製品が御世話になっているのに逆駆動特性がオモテに出てこないのは? お前の興味本位の話じゃねえか!ハイ、その通り 

ATユニット状態で変速比=1.000に固定して損失を最小限にして計測しても、オイルポンプ・ギヤ列付帯部の攪拌抵抗・・・の損失が入ってくる。計測法の詳細は知る由もないのでAT屋orトルコン屋にお任せする。

② アクセルON時はロックアップしても、ショックを嫌ってアクセルOFF時は最上段(アクセル操作に伴うショックは元々小さい)でもロックアップを外す例が多かった。1990年頃アクセルOFF時(減速側)のロックアップがあったのは某社しか知らない。イマとなってはアクセルオフ時ロックアップを外すと余計なロックアップON→OFF、OFF→ONショックが出るじゃねえか!となるが、「ぼやけた応答=スムーズ」のお経が支配していたことにしておく。

③ ギヤ比がもともとハイギヤードでタービン回転・エンジン回転が低い。4AT以上なら最上段で最高速が出ない設定にして燃費と静粛性に振る。踏めば勝手にダウンシフトするから誰がやってもそうする。

番外 例に挙げたATでは、変速機構中のワンウエイクラッチは「各シフトレンジの最上段ギヤ」ではトルク伝達経路上になく、トルク伝達に関係しないので「各シフトレンジの最上段でエンブレ効かない」の原因にはならない。 

 

 

オマケ

速度比<0 タービン逆回転時のトルコン特性

むかしむかしから、何度も蒸し返されている話。シフトレンジと逆方向にアクセルオフで走行すると10km/h前後でエンスト。下り坂でRに入れてアクセルはオフのままブレーキを離す。

http://www.mlit.go.jp/jidosha/carinf/rcl/common/data/201403_report.pdf

のp12。

一部業界人には周知の話だが、教習所のセンセイ方はご存じですかぁ~?ATだらけになって坂道発進の練習が不要になったのだから疑似体験させるべし。狭苦しいコースでできるか?だが坂の上から押し続ければ何とかなるのでは?

想像図は↓ 容量係数増→エンジン負荷増→エンストは明らか。「速度比」を、「回転数差」(Ne-Nt)と読みかえるとこのように想像できる。

桁外れの容量係数増がない限り、シフトレンジと逆方向に進行しだしても、エンスト前にアクセルを踏めば持ちこたえてそのうちシフトレンジ方向に進行するはずである。

「ドライバーの意図」は「(Dレンジに入っているつもりだが実際はRレンジなのに)下り坂で前進したい」が大半だろうがこのへんは無視して書いている。

例えば下り坂Rレンジで前進中の状態は、エンジントルクは正、タービントルクも正だがタービンが逆回転なので車両としては「エンジンブレーキ状態」。回転しているものを止める方向のトルクだからエンジンブレーキで、速度が0になるまで=タービンが0rpmになるまではエンジンブレーキ。と書いたが↑に書いたフツウのエンジンブレーキとは異なるエンジンブレーキで、燃料を使って車両を止めようとしている状態。ジェット機の逆噴射と同じ。仮にエンストせずに車両停止したらお次は進行方向が変わってシフトレンジ方向(後退)に進行で、タービンは正回転になりフツウの駆動状態になる。

 

速度比>1.0のエンジンブレーキ側、速度比<0 のタービン逆回転は、トルコン屋には設計上どうでもいい話になりそうだが、システムとしては使う、あるいはありえる状態で、それらしき明示的データが専門書らしき本でも見当たらないのは?である。「専門家」には「想定外」「設計上の考慮の対象外」でも、何でも屋は「想定内」にしなくてはならないことはいろいろある。業界人の数からすれば、「専門家」の定義は読者にお任せするが

何でも屋>>専門家

で、何でも屋が圧倒的多数。

速度比0~1だけでシステムが動いているわけではない。タービン逆回転にしろ「1cmたりともずり下がったことはない・シフトレンジと逆方向に進行したことはない」車両は皆無のはずで、1cmでも10mでも話の筋は変わらない。

 

 

オマケ 減速時(アクセル全閉)のエンジントルク

エンジン技術_6 燃費の目玉(7) 2018年EPA投下データ SKY-G 

にて拾ったデータ。

シート名: Min Torque Sweep

10rpm/secで 800rm→4500rpm 極めてゆっくり上昇させている。

エンジン回転を上昇させながら採っているが、フツウは減速時に使う領域。

データ項目は4つ (定常状態ではないので他のデータを削除している模様 データ採りはシステムが全項目やっているはず)

①Speed (rpm) 瞬時値なのか移動平均等の平均化をしているのかは不明

②Torque (Nm) 瞬時値なのか移動平均等の平均化をしているのかは不明

③Fuel Meter Flow (g/s) 燃料流量計 g/kWhはコレで計算している模様 定常状態の精度は最高だが過渡状態では精度がない

④Injector Fuel Flow (g/s) 噴射パルス幅と燃圧から計算した値の模様 定常状態では精度がないが過渡応答は一番

レギュラー、ハイオク各々データをプロット。ノッキングとは無縁な領域なのでレギュラー/ハイオクで本質的に差は出ないが、データ数を増やす。

燃料カット時の軸トルクは「吸気絞りによるポンピングロス込み」であることに注意。モーターリング法によるフリクション測定はスロットル全開(WOT)の値。

「吸気絞りによるポンピングロス」とわざわざ書いたのは、絞らなくてもポンピングロスはあるから。

http://glanze.sakura.ne.jp/air_capacity.html

 

レギュラー

 

ハイオク

 

1200rpmまで燃料噴射、それ以上はカット 実車の減速時はヒスが付くので燃料カット→再噴射回転は1000rpm位か

低回転全閉(1000~1200rpm)かつ燃料噴射時 軸トルク=約 -10Nm

                                              燃料カット時 軸トルク=約 -20Nm       

 エンジン技術_8 アクセル開度~エンジントルクマップ作成 の アイドル・負トルク域拡大図 を再掲

 

SKY-G EPAデータの 

低回転全閉(1000~1200rpm)かつ燃料噴射時 軸トルク=約 -10Nm の制御状態を推定する。 

アクセル全閉のまま、[ 燃料カット→燃料噴射 ] したときの段差対策に関連する話で、実車での過渡的動作は各社ヤヤコシイ事をやっているはずなので省略。EPAのデーターは例えば「MTでギヤを入れて、アクセル全閉のまま急な下り坂で0km/hからブレーキを離す+クラッチOFF→ONして速度を上げた場合」に相当するが、これ自体は現実にはあまりないシーン。

〇 点火時期リタード やりすぎれば当然失火するが常套手段

× 間引き噴射 過渡的に使うことはあるが、フツウは(準)定常的には使わない

× 減速時空気量を無理やり絞る 失火するので、Nレンジ(AT)、ニュートラル(MT)のアイドル空気量以下にはフツウは絞らない

↑に載せたテキトーな絵の左下を拡大して

SKY-G 2.0 の減速側データ(全閉SWEEP)を入れてみると↓

目一杯減速ロックアップしたCVTを考える。SKY-GはCVTではない、とかの話は他所でどうぞ。この辺はどのエンジンでも大同小異。

タービン回転1000rpm付近で

燃料カット→再噴射、ロックアップON→OFF

とする。再噴射時のトルクをできるだけ下げるのがポイントで、リタードはどこでもやるが忘れがちなのが減速空気量。急減速エンストを気にすると増やしたくなる。トルコン負荷とCVTオイルポンプ負荷はフツウは不明だから増やしたくなる。古いキオクによれば、某社では0km/h Dレンジアイドルで乗せた「Dレンジ負荷分(オイルポンプ分込み)」は次回Dレンジアイドル回転F/Bがかかるまでは走行中も「そのまま保持」であった。

Dレンジ0km/h(タービン回転=0rpm)→アクセルオフのままブレーキを離してクリープしたとき

タービン回転=エンジン回転

となった時点(速度は数km/h)でトルコン負荷=0 駆動力=0 わずかな下り坂ならこうなる。さらに速度(タービン回転)が上がるとトルコン側からエンジン回転を持ち上げる方向のトルクが働く。←逆駆動されるが、変速機構中にワンウエイクラッチがありこれが効く状態になっている(一部の)ATでは逆駆動されない。

急ブレーキ時は逆で、駆動輪を即ロックさせれば即「Dレンジ停止時のトルコン負荷」がかかる。即ロックは雪国なら日常では?

タービンが即0rpmになる(急停止する)のでエンジン側から見れば

車両停止時にN→Dにシフト 

と似た状態。

と書いたがアクセルオフ走行中(トルコンロックアップ=OFFとする)はワンウエイクラッチが有効な一部のATを除いてエンジンがタイヤ側から(わずかながら)逆駆動されている。タイヤロック急ブレーキ時には、エンジンの負荷変動はより大きくなる。

トルコンとISCの関係は「なんとなくこうだろう」は意識していたが、定量的認識はゼロだったのでシツコクmemo。

↑をガン見すると、低車速での走行→停止時にトルコンはヤヤコシイ挙動を示す。アクセル=OFFかつロックアップ=OFFとする。ATCVTオイルポンプ負荷は一定、一部のATにある「トルク伝達経路中のワンウエイクラッチ」は無効(直結相当)と仮定する。

・エンジン回転<タービン回転 エンジン回転を持ち上げる側のトルクが働き「負荷」ではなくエンジン回転をアシスト 

・エンジン回転=タービン回転 トルコン負荷=0 車速は数km/h

・エンジン回転>タービン回転 タービン回転(車速)が下がるほどトルコン負荷は大きくなる

と断定調で書いたが、「なんとなくイメージと合う」程度の話で、極低エンジン(トルコンポンプ)回転のトルコン逆駆動特性データを見たことはなく、低車速でのタービン回転とエンジンISCの挙動を同時に計測した事もないので↑を鵜呑みにするべからず。

上図では、エンジン停止していればトルコン逆駆動トルクはゼロで空走状態になるが(空走はNレンジと同じだがNレンジはタービンがAT出力軸と無関係にフリー回転であるところが異なる)これも

とする。

数式上はそうなるが、数式やsimualtionには適用範囲がある。エンジン停止でもDレンジ相当の油圧が確保できるATなら確認はできる。

速度比0~1の正駆動特性

【 エンジントルク≧0、タービン回転≧0、エンジン(トルコンポンプ)回転>0 】

は実機や理論の定量的裏付けが十分ある。

エンジン(トルコンポンプ)停止状態やタービンからの逆駆動・タービン逆回転は実機データが伴わないと正当性は? 

実用性がなさそうな、エンジン(トルコンポンプ)逆回転も「?」とする。

データ取得に特に困難はなさそうなので、網羅的に「使わない領域」を含めて計測すれば

・視野の拡大

・何かのヒント

になるかも。

トルコンの理論から無意味だとか、どこかが壊れるとか、その種の話は守備範囲外につき関知しない