寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

相続人も大変です①‐1(放っておいたら?)

2010年06月07日 | 相続制度

相続が開始しました。
すると、「手続」として、次のようなことが必要です。

①相続開始後7日以内…死亡届。
②相続開始後3カ月以内…相続放棄する場合の手続。
③相続開始後4カ月以内…被相続人に事業所得があった場合の準確定申告。
④相続開始後10カ月以内…相続税の申告と納付。

③は個人事業主等が死亡した場合に必要です。

また、相続税の申告・納付が必要なケースは、全体のおよそ5%ほどです。
したがって、大体の相続で、④は考えなくても良いものです。

さて。
今回ご説明するのは、②です。
タイムスケジュールで言えば、「相続開始後3カ月以内にすること」です。
最初に、民法の規定を掲げて、相続に関する3つの制度のご説明をします。

民法915条1項。
「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は…家庭裁判所において、伸長することができる。」

自分が相続人となる相続について、まず、何ができるのか。
それは、その相続(遺産の承継)に、のるかそるか、を決める事です。
その決定のために用意された制度が、3つあります。

単純承認、限定承認及び相続放棄です。

単純承認とは何でしょうか?

民法第920条
「相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。」

なので、単純承認とは、被相続人のプラス・マイナスひっくるめた全遺産を承継すること、です。
世の中の多くの相続は、この単純承認です。

では、限定承認とは何でしょうか?

民法922条
「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」

なので、限定承認とは、被相続人のプラスの遺産の中から、被相続人の借金や遺贈対象の財産を差っ引いて、プラスの余りが出たのならば、それを承継すること、
です。

最後に、相続放棄とは何でしょうか?

民法第939条
「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」

なので、相続人が相続人じゃなくなること、です。
親族じゃなくなる、ということではありません。
ある人に関する、相続というプラス・マイナスの遺産承継と関係がなくなるだけです。

では。
次回、元に戻って、民法915条の3カ月ルールのご説明をします。

…「相続人も大変です①‐2(放っておいたら?)」につづく。