前回は、相続人は、相続開始時に生きている推定相続人がなれるとご説明しました。
今回は、その具体例の最後です。
〈事例〉
お父さん、お母さん、僕、おじいちゃん(父方)の4人家族がいました。
ある日、お父さんと僕が乗った車が事故にあいました。
この場合、相続関係としては…
①お父さんが死亡した2日後に僕が死亡した場合。
②僕が死亡した2日後にお父さんが死亡した場合。
③二人とも即死で、死亡の先後関係が分からない場合。
以上の3つが考えられます。
①と②では、死亡(=相続開始)の順番を軸に相続関係を把握することをご説明いたしました。
すると…
①では結局、お母さんが全部の財産を相続することになりました。
②ではおじいちゃんが関係する事になりました。
では、③は…?
③二人とも即死で、死亡の先後関係が分からない場合の相続関係。
これはどうすれば良いでしょうか。
どっちが先に死亡したか分からないため、①や②の様に、死亡の順番を考える事が出来ません。
この場合に登場するのが、民法33条の2です。
「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」
「同時死亡の推定」と表現される条文です。
したがって、③の場合では、お父さんと僕は同時に死亡したと推定されます。
では、同時に死亡した場合の相続関係はどの様に考えればよいのでしょうか。
それは、「相続人になれるための基本的な要件」を思いだせば良いのです。
相続人になれるための基本的な要件は、相続開始時に生きている推定相続人である事です。
今回の③のケースでは・・・。
・お父さんの相続開始(死亡)時点で僕も死亡していると推定されます。
したがって、僕はお父さんの相続人ではありません。
つまり、お父さんの相続人は、お母さんとおじいちゃんです。
「配偶者別格+第二順位相続」です。
・僕の相続開始(死亡)時点でお父さんも死亡していると推定されます。
したがって、お父さんは僕の相続人ではありません。
つまり、僕の相続人は、お母さんです。
第二順位相続のみです。
結局、上記の2つの全く別個の相続が、同時に発生したと考えます。
・・・「相続人って誰なのよ④(生まれますか?)」につづく。