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「じい散歩」 藤野千夜

2021-09-28 08:48:03 | 読書
「じい散歩」著者:藤野千夜

読み始めたら、何か我が家に似ているなと思った。
子供の状況、年齢は我が家の方が20歳弱若いという違いはあるのだが、妻はインドア派、夫は出かけるのが好きで散歩がてらあっちこっちをウロウロするという行動様式が似ている。

夫の新平は88歳、妻の英子は87歳、子供3人だが訳あって2男1女でみんな独身なので、この歳で孫がいない。
二人の馴れ初めから、新平が事業を起こして、そこへ田舎の妹達が頼ってくる、長姉の娘=姪との交流などがリズムの良い文章で書かれている。
新平は長男で兄弟が多い、独立して余裕が出来れば兄弟、親戚の面倒を見るという大正生まれの長男の姿が浮かんでくる。
時は過ぎて、新平は自分の会社を畳む、住まいは椎名町で自宅のローンは無い。自宅近くに小さなアパートを持っていて、現役時代はその1室を事務所にしていた、今も事務所のままだが自宅外のマイルームとして気ままな生活の拠点としている。
健康、散歩、エロ動画を楽しむ。散歩範囲には馴染みの店(喫茶店、菓子屋、レストラン)があり、それらを訪れるのも楽しみ。
若かりし頃には浮気がばれて妻に油を搾られたことも数度あった。
最近、妻の英子の様子が少しおかしい時がある。認知症の始まりかと、かかりつけの医者にところに健康診断を受けに行こうと英子を誘う。やはり軽い認知症の嫌いはあるとの診断。
しばらくして、自宅で英子が倒れる。脳梗塞で緊急搬送、入院する。治療後のリハビリを終えて英子が自宅に帰ってくる。新平は以前のような気ままな散歩にも出かけられなくなり、アパートの1室も貸し出し、英子の介護に注力する。英子は少しずつ普通の生活を取り戻しつつあるが、なかなか以前のようにはいかない。それでも新平は、以前の散歩の様に日々のルーティンとして英子の世話をしていく。

これから僕も新平と同じような道をたどるのだろうか? 
90歳を超えて一人で歩き回る程の元気が果たして残っているだろうか?
娘は10年前に、池袋にあるF.L.ライトの設計による美しい建造で有名な自由学園明日会館(みょうにちかいかん)で結婚式を挙げた。
久し振りに再訪したいと思った。三原堂の薯蕷饅頭(乱歩の好物)、タカセのレストランでランチして、乱歩邸を訪ねてみようかと思った。


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