私の活版印刷紀行の取材地でいいとこナンバーワンがこの口之津です。誰しも、初めての出会いは忘れられないといいますが、グーテンベルク方式の鉛活字を使う活字印刷が日本で最初に行われた活版印刷の聖地、加津佐への入り口の町が口之津で、それからなにかにつけてご厄介になりましたからなおさらです。
誇らしげな「史跡南蛮船来航之地」という碑に、1567年(永禄10)のポルトガル船初来航の様子を想像してみても、なかなかイメージがわいて来ません。そのかわり、アレサンドロ・ヴァリニャーノを乗せた南蛮船が到着した1579年(天正7)となると不思議にイメージが湧いて来ます。
土地の人たちは何度目かになる到着にいくらか慣れて来ていたでしょうし、年ごとにキリシタンの信徒が増えている土地柄、「イエズス会のお偉い神父さんが来られるそうな」という噂も港に物見高い人を集めただろうと想像できます。さらに、はしけが着いて、ヴァリニャーノの後ろに恐ろしく身体が大きく、真っ黒の顔や手足の黒人(のちに信長に仕え、弥助と呼ばれるようになる)を見たときには波止場全体を揺るがすようなどよめきが起きたに違いありません。