活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

天草の十三仏の山に見る‐

2007-02-12 23:30:25 | Weblog
 また、寄り道です。
 タイトルの「天草の十三仏の山に見る-は、-海の入日とむらさきの波」とつづく与謝野鉄幹の歌です。鉄幹が五足の靴の旅から25年後、奥さんの晶子を連れて天草を再訪したときの歌です。そのときの晶子の歌は  
  天草の西高浜のしろき磯
  江蘇省より秋風の吹く 
 
 大江天主堂にルドビコ・ガルニエ神父の像がありますが、実は与謝野鉄幹たち5人の旅のいちばんの目的は大江教会に、この神父をたずねることにあったようです。

 キリスト教が解禁になったのは明治6年ですが、解禁後の明治25年に大江に着任したガルニエは、いくら、かくれ切支丹の里とはいえ、いろいろ苦労したようです。ですが、村民に慕われている彼の話が青年たちの心を揺り動かしたのでした。

 さて、歌の続きですが、大江天主堂に吉井勇の
   
   白秋とともに泊りし天草の
   大江の宿は伴天連の宿

 という歌碑があります。昭和27年、この歌碑の除幕式に参列した彼は、
   
   ともにゆきし友みなあらず我一人
   老いてまた踏む天草の島
 と詠みました。五足の靴の旅をともにした仲間は、りっぱな歌や詩や脚本や名声を残して逝き、残るは歌人吉井勇ひとりになっていたのです。

 キリシタン版印刷の時代の天草、かくれ切支丹の時代の天草、そして、五足の靴の明治の天草、さらには、現代と、大江天主堂の建物や歌碑の前にたたずんで、思いをめぐらすのもヨキカナ、よきかなです。

   
 
コメント
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