おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

オーバーホールの手順

2015-12-25 22:16:55 | オーバーホール
さて、今回はオーバーホールの手順です。

手順は
1.分解 → 2.洗浄 → 3.乾燥 → 4.組立 → 5.調整 → 6.確認
の6段階。それぞれ説明していきます。

オーバーホールに必要な工具についてはこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/0aee3547b9c021303b2be4b7defb3375

まず、分解の前に、器材のチェックをするけれど、業者ではないので、自分が普段使っている器材に全く問題ないのかどこかに不具合があるのかは分かっているはず。それでも、中圧値は測ってみないと分からないので、中圧値くらいは分解前にチェックしておくと良いと思う。

1.分解
これは器材によって変わってくるので、器材ごとに記事にします。バラすだけだから簡単と思いきや、業者さんにとって一番大変なのはコレらしい。定期的にメンテナンスされている器材ならいいけれど、塩やサビで固着していたりネジが壊れていたりすると、とーっても大変。

2.洗浄
洗浄で落としたいものは、塩・サビ・油・土など様々。何を落とすかによって、得意な洗剤が変わってくる。


塩とサビに対しては酸洗浄。

酸は強すぎる酸でなければOK。塩酸でも硫酸でも。濃すぎなければね。強酸に漬けると金属が腐食します。
トイレの洗剤サンポールは塩酸が主成分で、サンポールでもOK。効果は少し劣るけれど酢でもOK。
一番ラクチンなのはクエン酸だと思う。サンポールや酢は臭いし、塩酸や硫酸は入手や管理が面倒なので。

業者の中には、口に入れることができない酸を使うことに対して否定的な業者(例えば以下のURL)もあるけれど、酸洗いの後には何回も水洗いするわけで、硫酸などの酸が器材に残っているわけがなく、実際は全く問題ない。
http://ibuddy.blog.fc2.com/blog-entry-2.html
まぁ業者も商売なので自店のこだわりをアピールするのは良いけれど、「別の店だと危ないかも。でもウチなら安心。」というような他を貶めるような宣伝の仕方は好きではない。

僕もこの業者と同じくクエン酸を使っているけれど、安くて簡単なクエン酸ごときが最高の洗浄剤だとは思っていない。単にラクチンだから使っているだけ。


酸洗いは金属部品のみ。狙いは塩とサビ。レギュレーターのオーバーホールでは、この酸洗浄がメインとなる。分量はボウル1杯のお湯に大さじ2杯位。分量は適当です。あまり入れすぎて溶け残らないように。


以前はオーバーホールには超音波洗浄機が必須だと思っていたけれど、クエン酸溶液に少し漬けておけば塩は落ちるし、残っているところはブラシで軽くこすれば落ちる。なので超音波洗浄は必須ではないみたい。教えていただいたお店では超音波洗浄機は使っていないらしいし、器材メーカーでも使っていないところもあるらしい。
手の届かないところにも…という安心感のために、超音波洗浄機を使ってみた。実際は手の届かないところにもクエン酸溶液は届いているわけで、クエン酸溶液だけでピカピカになっているのを見ると、確かに超音波洗浄機はなくてもいいかなと思ってしまう。

何度もすすぎ洗いして、酸洗い終了。


さて、油汚れに対してはアルカリ性の洗浄剤。
中性洗剤でも良いのだけれど、中性洗剤は洗浄効果が劣るので、ここぞという洗浄には向かないかも。食器洗いの中性洗剤は、汚れを落とすために中性になっているわけではなく、毎日使う手の肌に優しくするために中性になっているだけ。

ただ、レギュレーターの油汚れは、塩やサビに比べるとあまり気にしなくて良かったりする。どうせグリス塗るし、多少の油が残っていたとしても器材や人体に悪影響を与えるわけでもない。

そういった理由からか分からないけれど、教えてもらった器材店ではクエン酸洗いの時に全てのパーツを洗い、洗浄はそれだけで済ませていた。プラスチックやゴムを酸洗いすると素材が劣化するのでは?と聞いてみたけれど、クエン酸程度の酸だったら気にしなくて大丈夫と言っていた。

僕は一応、酸洗いは金属のみにして、このアルカリ性の洗浄剤での洗浄はプラスチックやゴムを含めた全ての部品を洗ってみた。

シンプルグリーンという洗剤。弱アルカリ性で界面活性剤も含まれており、油汚れに適している。お世話になった器材屋さんでも使っていて何となく安心だし、近くのホームセンターに売っていたので、これを使うことにした。


洗剤の説明書通りの使い方。水はうっすら緑色に。

繰り返すけれど、大切なのは洗剤での洗浄よりも酸洗い

ちなみに、酸素対応のレギュレーターの場合は話が変わってくる。酸素用のレギュレーターの場合、発火防止のため油分は厳禁。油分は本気で落とす。素手でさわれないくらいの、自動車などの工場で使うような脱脂用の強アルカリを使うことにしているお店もあるらしい。もちろん、酸素用のときは皮脂が付かないようにゴム手袋で部品を扱う。

ということで、
・普通のレギュレーターなら酸洗いで塩とサビを落とすことが大切。油などの汚れは流水でのこすり洗い程度でもOK。
・酸素対応のレギュレーターならアルカリ洗剤で本気で油を落とす。


ということになります。
僕も、今後はクエン酸溶液と流水での洗浄のみにしようかな。

3.乾燥


水滴をタンクにつないだエアノズルで吹き飛ばす。


部品の中にはこういう狭い空洞になっているものもあり、自然乾燥だけでは完全に乾かすのは難しいので、タンクの高圧ガスで吹き飛ばすとラクチン。結構エアーを使うので、僕は使用後のタンクを使ってます。


その後、1日自然乾燥。
急いでいるときは空気で念入りに水を吹き飛ばせばその日に組立ててOKと聞いたけれど、急いでなければ1日置いた方が安心だと思う。

4.組立
これも分解と同じく器材によって大きく変わってくるので器材ごとに書きます。
ちなみにOリングへのグリスアップの考え方はメーカーによって違うらしい。DiveRiteのように可動部分のみグリスを塗って動かない部分はグリスを塗らないメーカーもあれば、APEKSのように全てのOリングにグリスを塗るように指示しているメーカーもある。DiveRiteとAPEKSのダイアフラムレギュレーターなんて作りはほぼ同じなのに。きっとグリスを塗ることにも一長一短あるんでしょうね。

5.調整

ファーストステージは中圧値の調整。タンクにつないで調整する。

タンクの残圧が少ししかないと不正確になることがあるので、中圧値の調整のときはたくさん空気が入っているタンクを使う必要があるとのこと。APEKSでは150気圧以上と書かれている。

スタンダードタイプのファーストステージならともかく、バランスタイプであればタンクの残圧による中圧値への影響はほとんどないはずなのでそこまで気にしなくても良いのでは?と思うのだけれど、一応推奨通りに充填後のタンクを使って調整してます。

中圧計にはファーストステージに直接付けるタイプとBC用の中圧ホースにつなげるタイプがあるけれどどっちでもOK。万が一ファーストステージで高圧が制御できずに中圧値が上がってしまっていると、中圧計につなげた時に針が振り切ってしまって中圧計が壊れてしまう


なので、中圧計の圧力が急に上がることがないように、ゆっくりタンクバルブを開けて、中圧計にあるネジを緩めて少しずつ圧力が上がっていくのを確認する。安い中圧計だと空気を逃がすネジがないこともあるようなので、その場合はセカンドステージのパージボタンで代用する。中圧が10気圧を超えても12、13とぐんぐん上がっていくようならその時点で異常なので、すぐにバルブを閉めてエアを抜く。高圧→中圧への大きなエアリークがある証拠。


中圧値がある値で止まったら、基準値におさまるように調整する。
APEKSのファーストステージの場合、中圧値が9-10barになるように調整する。写真のように六角レンチでスプリングアジャスターという名の調整ネジを回せる。調整ネジを右回りに締め込めば中圧値が上がり、左回りに緩めれば中圧値が下がる仕組み。

APEKSのマニュアルには、1/8回転させて、パージポタンを押して、というのを繰り返してちょうど良い中圧値になるように調整すると書いてある。1/8という数字で分かるように、ちょっと回すとかなり変化するので少しずつ。

息を吸ったりパージボタンを押したりすると空気が供給されるため一瞬中圧値が下がるが、すぐに元に戻る。これを繰り返しながら、すぐに中圧値が9-10barに戻ることを確認する。マニュアルには10-15回パージボタンを押して確認すると書いてある。

中圧値が9-10barに安定したら、タンクバルブを開けたまま数分そのままにしておいて、だんだんと中圧値が上がっていかないか確かめる。中圧値が上がってくる場合、高圧部分から中圧部分へのわずかなエア漏れがあるということなので、分解して問題部分を確認する。

今まではファーストステージで、ここからはセカンドステージ。

調整する時は、水中でも動かせる調整ノブや調整レバーは一番開いた状態(吸気抵抗が一番小さくて軽い状態)にして調整する。


セカンドステージは、ホースを外すと奥の方に金属製の低圧シートと一体になっている部品が見えるので、この部分を直接回して吸気抵抗を調整する。

左回りに緩めれば吸気抵抗が小さく軽くなり、右回りに締めれば吸気抵抗が大きく重くなる。


調整の仕方は多くのメーカーで共通のようで、ダイビング用のマルチツールにはセカンドステージ調整用の工具がついている。9mmくらいの幅のマイナスドライバーでも代用できると思う。

あとは、調整してホースを付けて確認して、またホースを外して調整してホースを付けて確認して、の繰り返し。ちなみに、ちょっとネジを回すだけで大きく変化するので、マニュアルでは1/16回して調整してを繰り返すように書かれている。たったの1/16。本当に細かな微調整。


APEKSでは、セカンドステージを開ける道具に吸気抵抗(というかレバーの高さ)の確認の部品も付いていて、これで確認するとマニュアルには書いてある。片方の部品でパージポタンを押した時にはフローせず、もう片方の部品でパージボタンを押した時にはフローするようなところに調整するようにと。

でも、この部品なくても大丈夫。
実際にセカンドステージから呼吸してみて、自分の好きなところに調整すればOK。
基本的にどんどん吸気抵抗を小さく軽くしていく。フローしてしまうようなら軽すぎ。そうでなければまだ軽くできる。その繰り返しで、自分にとってちょうど良い吸気抵抗に調整できる。
納得行くまで調整できることが、自分でメンテナンスすることの1つのメリットかも。

フローギリギリに調整していると、セカンドステージが水に当たった瞬間にフローすることが多いので、エントリーのときは吸気抵抗の調整ノブやレバーを締めておいて、水中で呼吸し始めた時に開ければ良い。

業者でオーバーホールしてもらう場合は時間が経って変化してフローするようになったらクレームがくるので、限界より少し抵抗を大きくした状態で調整しているみたい。自分でオーバーホールすれば、器材の中身もよく分かっているので、そんな時もすぐに調整できる。なので、あえて限界まで軽くして使ってみるつもり。

あと、吸気抵抗を数字で測る機械があれば、その機械で測定するとのこと。基準は、1.0-1.5inH2Oらしいけれどピンとこない。その機械はかなり高額のため、メーカーや一部のオーバーホール専門業者しか持っていないらしい。多くの業者でも使っていないし、自分にも関係ないや。

ちなみに、中圧値や吸気抵抗の調整は、組み立ててから数日後にやると良いらしい。理由は、組立直後よりも部品がなじんでくるため、なじんだ状態で調整しないと実際に使う時には変わってしまっている可能性があるから。オーバーホールが即日や翌日に完成しないのはこのため。そして、オーバーホール屋さんをあまり急がせない方が良いというのもこのため。

まぁ、自分で使う分には、しばらく経ったらまた中圧値と吸気抵抗を確認・調整すれば良いので、この辺はあまり気にしていない。そもそも、そのなじむというのも、数日で安定するとは限らず、もっと長い時間たって変形していく可能性もある。まぁでも最初の数日でゴムやダイアフラムが器材の形に沿って変形してある程度の「あたり」がつくようです。あと、現実的に数日とするしかないという事情もあるみたい。遅くなりすぎると文句言われるし、倉庫はいっぱいになるし。かといって即日で出荷すると吸い心地が変わった時にクレームがくるし。その辺のバランスを考えて、「組み立て後、2-3日後に調整して出荷」ってしてるんじゃないかな?

6.確認

業者の場合、最後に組み立ててタンクにつないで、水に漬けてエア漏れがないか確認する。
正直、大きなエア漏れがあれば音で分かるし、小さな気泡が出てこないかどうかは自分の器材であれば近場の海で確認できるので僕は省略している。

これが一連の流れです。結構面倒でしょ?面倒だと感じる大多数の方は、やっぱり業者に頼んでオーバーホールするのが良いと思います。楽しいと感じるごく一部の方は自分で挑戦してみても面白いと思います。

ちなみに、僕は楽しいと思っています。


4 コメント

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Unknown (はらだ)
2018-08-20 21:16:39
はじめまして、こんばんわ。

こちらのブログを参考に、XTX200のオーバーホールを進めている最中です。

現在、分解が終わ金属部品をクエン酸水溶液に漬け置きしている段階でしたが、おじさんはどのぐらいの時間漬け置きしていますか?
漬け置き後、超音波洗浄をしようと思っていますが、さきほど様子を見たところ、表面が銅っぽい色に変色している部品などがあったため、クエン酸につけるのは止めてとりあえず真水ですすぎました。
30時間ぐらい漬けていましたが、漬け置き時間が長すぎたのでしょうか??
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酸洗 (snowman)
2018-08-20 23:18:24
クエン酸液へのつけ置きはせいぜい15分くらいですよー。塩は自然と溶けていくし、残っている汚れもブラシで簡単に落ちます。
変色している部分は、メッキ剥がれしている部分ではないでしょうか。記事でも書きましたが私はxtx100のメンテナンスを怠り緑青がメッキを侵してしまいました。当然、緑青や塩はクエン酸液で綺麗に取り除けるのですが、メッキ剥がれした部分は真鍮が露出していためその部分は変色しています。
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Unknown (はらだ)
2018-08-21 21:47:11
こんばんわ。ご返信ありがとうございます
15分ぐらいですかー。。。
完全に漬けすぎてしまいましたね。

変色している部分はメッキ剥れかもしれません。
ネジ山部分などもともとメッキが薄い部分に見受けられました。

これから真水での超音波洗浄をしようとおもっていますが、プラスチック部品も洗浄にかけてしまって大丈夫でしょうか?
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超音波洗浄 (snowman)
2018-09-01 13:25:22
はらださま
返信が遅くなって申し訳ございません。プラスチック部品も超音波洗浄大丈夫ですよー!
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