河野基樹という川柳人がいた
悩みの日がわたしに立ち向かっている。
(旧約聖書「ヨブ記」三〇章)
河野基樹という川柳人の作品に、
つらい日があって生きている気がする
という句がある。
苦しい状態に置かれたとき、わたしは、このような句に慰められる。苦しんでいるとき明るい声で励まされる、それで元気が出てくる、という人もいるだろう。だがわたしは、ひねくれ者のせいか、つらさには辛さが合う、暗さには暗さが合うのだ。「伴走者」がここに居る、という気持ちになるのである。あなたもつらいだろうけれど、わたしも私の困難を背負って苦しんでいますよ、という深い慰めを感じるのだと思う。
河野さんは、医師であり、がんの患者であった。またクリスチャンであった。亡くなってすでに二十数年経つ。
したいことまだまだあって命吠え
桜降る中でわたしのいのち聴く
主役の座おりる緑が美しい
一つずつ灯りを消して全部消す
丁寧に棺の釘を打つ稽古
陽は西に生老病死みな祈り
◆言葉に愛を宿したい。
◆ご訪問ありがとうございます。