DEEP ACIDなんでもかんでも日記・ヤプログ!より移行

『移民・難民・マイノリティー欧州ポピュリズムの根源』彩流社、2021年 書評会

 日本ユーラシア協会のオンラインイベント。対象書籍は読んでないが、難民問題には高い関心があるので参加。途中からで最初ついていけない。

・第1部 移民難民の流出と周辺国の寛容−誰が人道的なのか?
 911問題。結局ブッシュがやった「民主主義対テロリスト」と言う構図の戦争で21世紀はテロリストの時代になってしまった。その結果いつまで立ってもアフガニスタンもシリアも難民が止まらない。何よりも、テロリストを出汁にして戦争行為がいつまでも続く時代。
 なんか今日は登壇者がたくさんいらっしゃるのですね。元新聞記者にアフリカのNPOの主宰者。
 うーむ、アフリカでは英米は武力で治安維持に貢献していると言うが、中国は経済的支援をしていると言う。もしかしてアフリカでは中国の方が民主的に映るのか??また、AI搭載ドローンの危険性について指摘する発言も。

・第二部 欧州は移民・難民の何に苦しんでいるのか?
 グローバル・リベラリズムと言うタームは初めて聞いた。つまり、ネトウヨのポリティカル・コレクトネスへの強烈な反感の源泉。東欧の移民排除問題は、オーストリア・ハンガリー帝国からの開放からの民族自決主義が排除へのエネルギーになっている、と言う指摘は興味深い。
 うわー、あのドイツ(ナチスへの深い反省がドイツの真髄だったのに)すらも極右政権が台頭しつつあり、Dexitもあり得る状況だと言う。
 翻ってフランスもルペンの台頭が気になるが、そもそもフランスはサルコジの時代にすでにポピュリズムが始まっていた(どうもドイツに経済的に遅れを取っていて、フランスは焦ってネオリベラリズムに傾いていったらしい)。もはや左翼政党ですらも難民に対して選別的移民政策へと流れたと言う。
 さらに東欧スロヴァキアの移民排除運動の実態についての論文。この国も大規模な移民排除デモがあった一方で、自然生存権を訴えるグループも生まれたと言う。
 でも「民族自然権」は現代ポピュリズムの根源?相反する主張が同居するから難民問題は難しい。
 欧州の普遍性の瓦解、確かに東欧的に占領時代が長かった国には自然な話だが、牽引すべき立場のドイツ、フランスで崩壊しつつあるのは、先生方の間でもまだまだ議論が尽くしきれていないらしい。
 なるほどね、UNHRは共産主義国家からの難民保護がそもそものスタートで、現代の難民保護では当時の冷戦構造では受け入れられなくなっているのか。福祉の観点でも、国内の貧困層を保護するために難民を排除、と言うのはやり切れない。

第3部:マイノリティとの共存は可能か?
 面白い、ロシアの市場で移民と地域住民の暮らすエリアの境界として認識して観察した研究。ロシアでも移民テリトリーは厳しく仕切られているのですね。
 かつては移民が物資を提供してくれる大事な存在だったのが、次第に不衛生と見なされ排斥されていく。写真記録が貴重だなあ。多民族国家で巧妙な統括が行われていた記録。
 再びスロヴァキアの現代史。スロヴァキアの最大マイノリティ、ハンガリー系が移民政策を推進してきたが、シリア系難民の政策に対しては内部対立も発生。
 中国領土(内モンゴル)で生活するロシア系住民の暮らしの研究。
 最後に日本国内での移民問題。そもそも移民問題を政治は扱って来なかった、で、アルバイト的仕事しか与えられず、人生設計もできない、日本語もままならないような移民が増えてしまった。教育の壁があるのは分かっているが、具体的な調査も進まず、政策にも全く反映されない。
 それにしても、多様な地域を扱った論文集と言うことで、結論が固まる訳ではないが、日本では普段耳にしたことのないような地域のお話がたくさん拝聴できたのは貴重。
 そこでまとめ、民族と言う単位での国家と言う概念は通用しなくなった。新しい時代の「国家とは何か」と言う視点から問い直さなければならないのではないか、と言う指摘が重かった。
 と言うことで、3時間の長丁場、お疲れさまでした。
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