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第5回六者会合第3セッションの概要(速報)
平成19年2月13日
2月8日から開催されていた六者会合は、本日、成果文書として「共同声明の実施のための初期段階の措置」を採択し閉幕。この成果文書の概要は、以下のとおり。
1.60日以内に実施する「初期段階の措置」
(1)北朝鮮
1)寧辺の核施設(再処理施設を含む。)を、最終的に放棄することを目的として活動停止(shut down)及び封印(seal)する。
2)すべての必要な監視及び検証を行うために、IAEA要員の復帰を求める。
3)すべての核計画(抽出プルトニウムを含む。)の一覧表について、五者と協議する。
(2)経済・エネルギー支援
重油5万トンに相当する緊急エネルギー支援を開始する。(注:米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係の現状を踏まえ、我が国は参加せず。)
⇒米,露は既に逃げた。おそらく,韓国の単独支援になる模様。
(3)日朝
日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための協議を開始する。(「懸案事項」には、拉致も含まれる。)
(4)米朝
完全な外交関係を目指すための協議を開始する。(テロ支援国家指定を解除する作業開始)。
2.作業部会の設置
初期段階の措置の実施及び六者会合共同声明の完全な実施のため、共同声明の要素に対応する次の作業部会を設置し、30日以内に会合を開催する。
1)朝鮮半島の非核化 (議長:中国)
2)米朝国交正常化 (議長:米国・北朝鮮)
3)日朝国交正常化 (議長:日本・北朝鮮)
4)経済及びエネルギー協力 (議長:韓国)
5)北東アジアの平和及び安全のメカニズム (議長:ロシア)
3.初期段階の次の段階における措置
(1)北朝鮮
すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無能力化等を行う。
(2)エネルギー支援
重油95万トンに相当する規模(上記1.(2)の5万トンと合わせ、合計100万トン。)を限度とする経済、エネルギー及び人道支援を供与する。(注:米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係に進展が見られるまで、我が国は参加しないことにつき、関係国は了解。)
4.六者閣僚会議
「初期段階の措置」が実施された後、六者閣僚会議(外相を想定。)を開催する。
5.次回六者会合
第6回六者会合は、3月19日に開催。
ソース:外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3g.html
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六者協議,なんらかの結論が出ましたので,簡単にまとめてみました。
全体の構図
北朝鮮というのは,村の周辺でウンチ投げつけてくる狂人のような存在です。村人はこいつをどうするか,寄り合いをもつわけです。
まず,韓国を除き,この会合に非常に後ろ向きです。なにせ,やつはウンチ投げつけてきますから。親戚であるウンチ大好き韓国以外は相手するのがいやなわけです。
で,今回の協議は,というか,いつもそうなんですが,みんな腰が引けてる。本音は関わりたくないのですから。そこで,唯一前向きな,ついでに頭も弱い韓国にババを引かせようとしています。しかも,露骨にオープンカードにして,韓国にババを取らせようとしています。
各国は,緊張緩和がもたらされるのなら,というぐらいの感覚。根本的な解決に至ることはあきらめているだろうと思います。北朝鮮は,たかり外交として,何かのおこぼれがもらえれば,という目論見。ただ,韓国だけは支援したくてたまらないらしい。
北朝鮮
まず,北朝鮮が核を放棄することはありえません。国家戦略の中枢を占める部分だからです。私はそのようにとらえています。北朝鮮は核を保有するだけでどれだけおいしい目に出会えるか,よく理解しているはず。また,仮に経済制裁を受けて苦しくても,大なる目的の前の小異。
今回北朝鮮の行っている外交は伝統的なたかり外交です。これには,ある種の恫喝外交も混じっています。恫喝外交とは,北朝鮮が投げつけてくるウンチのことです。一言でいってウザイ。服汚されたくなかったら,なんかくれ。というのが北朝鮮の立場。無視しても相手してもウザイ。
ただ,不思議なのは,アメリカとの間で,経済制裁緩和,テロ国家指定解除にむけた会合が六者協議の前にもたれ,何らかの合意が存在しているらしい,ということです。
この辺りは,どなたか事情をよく知る人のコメント待ち。なんにせよ,この経済制裁はかなり北朝鮮を,というか金正日を直撃している模様。北朝鮮人民の飢えは気にしないが,自分がブランデーを飲めなくなるのは困るらしい。
アメリカ
アメリカは,中東情勢で手一杯。とても半島にまで目を向けられません。また,半島周辺国が有事を嫌がっています。そこを無理して半島に目を向けたとしても,具体的なメリット,石油等がない。
ということで,アメリカは半島と積極的な関わりをもつことを敬遠しています。
ただ,ヒルという人の頑張りがあったのか,或いは前回の選挙での共和党の敗北の影響か,アメリカの雰囲気が若干変化していきているような印象を持ちました。
気になるのは,北朝鮮と合意されたとも観測される経済制裁解除の件。そもそも,経済制裁は偽札に対するもののはず。核に対してではありません。ということは,偽札事件に対して,北朝鮮から何らかの解決案が出されたか。それとも,いわゆる政治的取引としてなされたのか。
或いは,アメリカは北朝鮮に対して,更なる経済制裁を通告したかもしれません。例えば,スイスの金正日個人口座の閉鎖。スイス銀行は以前ほどの鉄壁さを保っていないとも伝えられています。
なんにせよ,私にはアメリカがいもをひいたように見えますし,おそらく,大多数の人にとってもアメリカがふがいないように映ったでしょう。
ただ,ネットでは,例えばアメリカは核を持った国には弱気になる,というのがある。ちょっと違うと思います。中東に比べて,インドやパキスタン,北朝鮮はアメリカにとってはどうでもいい地域の出来事。北朝鮮を攻撃して得られるメリットは微々たるもの。対してデメリットは多大。長年中国がこの地域を自国化しなかった理由に思いをはせれば明快です。この地域に積極的な関わりを持つとババを引く事になる。100年ほど前に,この地域にありえない投資をして逆恨みされている誠におめでたい国が現実に存在しています。
中国,露西亜
この二カ国は日米よりは切実です。半島有事は困る。難民は受け入れたくないし,仮に核戦争などという事態に至れば大変です。しかし,甘やかすわけにもいかない。それは国際社会が許さないし,中露ともども援助を大変嫌がっている(生理的・感情的に)ように見受けられます。解決は望まないとしても,できればなあなあでいってほしい。勿論,核がなくなればそれがベストですが,それはかなわぬこと。
日本
日本。拉致解決なくして援助なし,との原則に終始。これは馬鹿マスコミ及び馬鹿政治家以外に国内に異論はありません。
ただ,これは原則というか,半分言い訳でしょう。本音は,この六者合意に中身がないので,日本は早々と離脱宣言したのでしょう。なんにせよ,いい言い訳ができたものです。露西亜とかアメリカなどは金銭援助をしない理由として,「韓国が援助を出したがっている」ですから。
「米国は供与しない。韓国が(供与)する」 スノー大統領報道官 [02/14]
「ロシアは参加しないだろう。なぜなら韓国がすでに準備しているからだ」[02/14]
韓国
援助すごくしたがっています。
スマトラ沖地震では援助金を10分の一に値切ってなおかつ援助金を全額払っていないのにくらべれば雲泥の差。
なんとなく,自分だけ浮いていることに気付いているのか,他国も金出せよ,と何度も強調してますが,他国は全然そんな気ありません。だいたい,この合意,中身ありませんから。いや,中身はあっても北朝鮮が守りませんから。
それでも前回の合意では,韓国はゲームに参加する前に,気付いたらババをもたされていました(軽水炉建設の70%を負担)。それに比べれば,若干なりとも進歩したかも。
結論
多分,この協議は,韓国の援助分重油5万tだけが実行された協議になるのではないでしょうか。北朝鮮がこの合意を守るとは到底思えません。
そこは各国とも折込済み。北朝鮮は基本的にたかり外交ですから。
アメリカの反応はこんな具合です。
ブッシュ大統領 支援の「ただ乗り」認めず=核放棄、北に着実な履行促す
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1171419606/
北朝鮮支援に米保守派が反発
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1171442127/
まあ,当然ですね。
そこで,トラップを用意しています。
違反なら追加制裁も=北朝鮮に期限内履行求める-米大統領報道官
【ワシントン13日時事】スノー米大統領報道官は13日、記者団に対し、北京で閉幕した北朝鮮核問題に関する6カ国協議の合意について、「北朝鮮は期限内に履行しなければならない」と強調した。さらに、昨年10月の核実験後に国連安保理が採択した制裁決議は「依然として有効だ」と指摘、北朝鮮に違反行為があれば新たな制裁が科される可能性もあるとの認識を示した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007021400006
当初から私はこの会合がもたれた理由が今ひとつ理解できていません。
北朝鮮が合意を遵守するとは思えません。各国もそれを期待しているようには見えません。韓国は相変わらず援助したがっています。
結局,この会合は韓国の援助再開のきっかけということなんでしょうか。
北朝鮮が合意に反した場合,更なる追加制裁があるのでしょうか。
最大の成果は,問題を先送りした,というところにあるのではないでしょうか。当面の緊張緩和には結びついたかもしれません。
それにしても,この協議での日本の立場は異彩を放っています。何せ,援助を事実上断っているのですから。しかも,そのことは各国が了承済みとのことです。以前のお馬鹿なATMであった日本とはまるで違います。
安倍政権は外交に関してはなかなか評価高いですね。アセアン会議でもそうでした。ノムヒョンがヒッキ-になってしまったくらいです。軸足がぶれない感じがします。内政に関しては切れ味が悪いのとは正反対のように見えます。
それにしても,「日本が孤立する」と騒いでいる人たちがいます。特によくわからないのが,山拓。あの人はいったいなんなのでしょうか。まあ,異論を受け入れるのが民主国家の証。