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北朝鮮六者合意

2007-02-19 | 北朝鮮情勢+核関連


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6カ国合意文書 「ウラン型核放棄」削除 北朝鮮の反発で米了承


北朝鮮の核問題をめぐる先の六カ国協議の合意文書案に当初「高濃縮ウランによる核開発の放棄」が明記されていたが、ウラン濃縮型の開発を否定する北朝鮮が反発、米国も了承の上で削除されていたことが十八日、分かった。協議筋が明らかにした。

現在の北朝鮮の核問題は、二○○二年のウラン濃縮計画表面化が引き金となっているにもかかわらず、ウラン濃縮の明確な追及を棚上げしてまで合意を優先した米国の譲歩姿勢が浮き彫りになった。

今回の六カ国協議の合意はプルトニウム型核施設の稼働停止などにとどまっており、この「初期段階措置」の完了後にウラン型の問題が再燃するのは確実。米国がどのような対応を取るか注目される。

同筋によると、協議四日目の十一日に、北朝鮮が寧辺の核施設の活動停止などを行えば重油三十万トンを提供し、すべての核放棄が終了すればさらに七十万トンを提供するとの案で米国、韓国、ロシアなどが合意。しかし北朝鮮は核放棄前に重油百万トンを提供するよう要求して、受け入れを拒否した。

そこで米国が中心となり第二次案を作成したが、放棄対象として「高濃縮ウランによる核開発」が明記されていたことなどから、北朝鮮が「平和利用も含めウラン濃縮は一切行っていない」と主張し再び拒否したという。

これを受けて米国は各国と再調整に入り、ライス国務長官が十二日夜、宋旻淳・韓国外交通商相と電話会談。「高濃縮ウラン」に関する文言を削除した上で、北朝鮮が寧辺などプルトニウム関連の既存の核施設を無能力化することに応じれば、重油計百万トン相当の経済、エネルギー、人道支援を行う-とすることで合意。中国、ロシア、日本の同意を得た上で北朝鮮に提示し、十三日の共同文書採択に至ったという。

ライス長官は採択後の記者会見で、北朝鮮をけん制する狙いからか、明記されていないものの、放棄対象には高濃縮ウランが含まれるとの見解を示している。


北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070219&j=0026&k=200702186645
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この記事,北海道新聞です。朝日新聞のような論調の新聞です。ネタ元は共同通信のようです。

なぜこのような論調の記事がでてくるのでしょうか。合意された内容は次の通りです。


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V. 初期段階の措置の段階及び次の段階(朝鮮民主主義人民共和国によるすべての核計画についての完全な申告の提出並びに黒鉛減速炉及び再処理工場を含むすべての既存の核施設の無能力化を含む。)の期間中、朝鮮民主主義人民共和国に対して、100万トンの重油に相当する規模を限度とする経済、エネルギー及び人道支援 (5万トンの重油に相当する最初の輸送を含む。)が提供される。

外務省 共同声明の実施のための初期段階の措置
(仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3ks.html
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いかがですか。解釈の入る余地がこの文章にはあるでしょうか?「すべての」核計画と言っています。ウランだろうと,プルトニウムだろうと,すべての核計画の放棄をこの合意文章ではうたっています。ウランの開発については言及していない,ということはありません。

この記事はそこのところを印象操作しています。

「高濃縮ウランによる核開発の放棄」なる文言を省いたことは確かなのでしょう。しかし,そのことはウランによる核開発を認めたということではありません。

この文章のどこからプルトニウム関連の施設に限って廃棄を進めるとの内容が導き出されるのでしょうか。

北海道新聞(共同通信)はこう言いたいわけです。

「アメリカが下手をうった。」

実際は,

①韓国が5万tの重油を供給

②核査察

すべての核施設廃棄が確認される

④残りの重油95万tが供給される+テロ国家指定解除

というわけです。アメリカが下手をうった,というわけではありません。むしろ,アメリカは一つ駒を進めた,といえるでしょう。北朝鮮がこの合意を守らなければ更なる制裁を発動する口実になるわけですから。

つまり,問題は②以降にあります。というか,②でぐだぐだになるでしょう。③に進むことは考えられません。こんなことは,世界中の人が簡単に理解できることです。

その②でぐだぐだにする伏線というか言い訳というか,を北朝鮮は言い出しているわけです。共同通信や北海道新聞は,そのスポークスマンとして活躍したいのでしょう。


先日も申しあげましたが,もう一度この六者合意に対する各国の姿勢を考えて見ましょう。

韓国を除く4国に北朝鮮に援助する気はさらさらありません(核廃棄は進まないから)。

韓国はどうせ北朝鮮への援助を再開するでしょうから,①の段階についてはどうってことありません。韓国としては,援助に対する各国のお墨付きをもらったわけですから,若干ほっとしているかもしれませんが。

おそらく,この会議の最大の目的は「ガス抜き」。費用は韓国が出すのですから,他国は腹が痛みません。


北朝鮮は,足代として重油5万tもらってほくほくです。勿論,核廃棄をすすめる意図はまったくありません。

中国,ロシアは若干の緊張緩和が生まれたので(問題の先送りによる),これも少しほっとしています。特に,中国は議長として面子がたって嬉しいでしょう。でも両国に援助する気はありません。

アメリカがこの六者合意を進めた理由は内政問題でしょう。政敵に対するイクスキューズ。「俺らはこんなに頑張っている」ということをアメリカ国民に見せたいわけです。前回の選挙で共和党が民主党に負けたことが大きいのかもしれません。

日本は端から相手してません。拉致云々で援助しない,との日本の立場はすんなり他国に認められていましたが,これもこの会議を象徴する出来事でしょう。そもそも日本を含めてやる気がないのです。現実に北朝鮮が核廃棄を真剣に進めるとなったら,拉致云々で援助しないというのは相当な批判が出てくるのではないでしょうか。


なお,ウラン高濃縮型爆弾は非常に精密かつ高度な技術と多額の費用が必要とされます。北朝鮮はプルトニウム型爆弾でさえ満足に爆発させることができなかったのですから,ウラン云々を口に出すのは100年早い。北朝鮮がウラン計画を口に出すのは,純粋に交渉材料としてでしょう。少なくとも,2002年に北朝鮮がウラン計画の存在を認めたのは,アメリカと交渉するため。ウラン濃縮は北朝鮮にはムリなんじゃないでしょうか。


私は,半島に対しては徹底的に押さえ込むのが基本であると思います。ただ,半島有事に進展することは現状ではありえません。無駄だから。そんなことをしなくても,経済制裁がかなりきいているようなので,北朝鮮が今回の合意を破るような真似をしたら(100%遵守しないでしょうが),更なる制裁を発動して欲しいものです。

しかし,現実的にこれ以上の経済制裁とは?韓中がこれに参加しないと実効性が薄いのですが,日本としては北朝鮮に対する反感の高まりを利用して,在日利権をどんどんはがしていってもらいたいものです。


今日の学習


北朝鮮の核問題
1993 北朝鮮,核開発計画が露見すると,IAEAからの脱退宣言。
1994 米朝枠組合意
  IAEAからの即時脱退を撤回。
  核兵器の開発を凍結し最終的に解体することを約束
  見返りとしてKEDO朝鮮半島エネルギー開発機構発足。
  なぜか費用の70%を韓国が残りを日本が負担することになる
   KEDOの内容:軽水炉2基供与。プルトニウム抽出が難しいため。
            完成するまで毎年重油50万t供与。
この合意を北朝鮮はまったく遵守せず。

2002 日朝平壌宣言
2002 北朝鮮,ウラン計画の存在を認める
2003 北朝鮮,核拡散防止条約(NPT)脱退
2003 米朝中の3者協議(4月)
2003 第一回六者協議(8月)
2007 現在の協議は第5回その3


協議中にアメリカが金融制裁を解除するとの報道がなされたが,これは北朝鮮によるデマのようです。


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