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BDA問題,これは制裁か制裁解除か

2007-03-20 | 北朝鮮情勢+核関連


●金融制裁「解除」に関する全国紙の社説●


BDAに関するアメリカの今回の件について,若干気になるところを補足していきます。 まず,日本の全国紙5紙の社説を比較してみます。 各紙の見出しとともに簡単なコメントをつけました。詳細はリンク先で確認してください。

朝日新聞:北朝鮮は大局を見失うな
http://www.asahi.com/paper/editorial20070316.html#syasetu2

読売新聞:[金融制裁解除]「『北』の核廃棄にどう影響するか」   http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070315ig90.htm

毎日新聞金融制裁 北朝鮮にごね得を許すな 
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070316ddm005070026000c.html

3紙は似た論調。制裁解除された。これは,アメリカの譲歩。でもまた北朝鮮は難癖つけ始めた。いい加減にしろ。というような内容。

日経米国は北朝鮮政策の基本原則を崩すな http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20070315MS3M1500215032007.html
制裁解除についてアメリカの日和見としている。

産経新聞凍結解除、北朝鮮が笑うのは早過ぎる BDAを通じた国際金融取引は今後も不可能 

最も的確な判断を示している。

その産経も,15日ではこんなこと言ってましたが。相当涙目です。

6カ国協議 米国の“裏切り”を憂う だれが日米離反を喜ぶのか [03/15]  http://ime.nu/www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070315/shc070315000.htm 

産経の論説委員はチャネラーだったのかもしれません。ヒントをネットから得て冒頭の社説に結びつけた可能性は少なくないと思います。



●これは制裁か制裁解除か●


産経の社説にもある通り,アメリカのBDA処理は,制裁強化と呼べるもの。建前的な判断ではなく,実質的な制裁です。ただ,マスコミの主流を占める見方にも一理ある。つまり,制裁解除,アメリカは北朝鮮に譲歩した,という見方です。

私がそう思うのは,北朝鮮はアメリカにいいようにやられたことになるのですが,北朝鮮は前向きな反応を示しているように見えるからです。せいぜい,預金を全額返せ,位の抗議しかしていません。ここが今ひとつ理解できないところです



●アメリカにとっては制裁,北朝鮮にとっては制裁解除?●


そこでこう考えました。

偽札疑惑と資金洗浄疑惑はアメリカにとって見過ごすことのできない大罪。これを理由に戦争したってちっともおかしくありません。だから,BDAを実質的に破綻させ,それを世界中の金融機関に見せ付けました。北朝鮮は今後銀行と取引することが極めて難しくなります。通常なら,国家の死を意味するといっても決してオーバーではないと思います。

しかし,そもそもBDAの口座が凍結された時点で北朝鮮の国際金融機関からの信用は地に落ちたわけです。この点に関しては,もう下がりようのないところまで来ていると思います。確かに,北の偽札ー資金洗浄が確定したことは非常に意味があるのですが,いまさら制裁を継続されたからといって何も変わらない,それよりも目先の金を返せ,というのが北朝鮮の立場じゃないでしょうか。

つまり,通常ならおぼれた犬を棒で叩くことをアメリカはしたわけですが,既に北朝鮮は川底まで沈んでいるので,制裁にならない,ということです。

逆に北朝鮮には資金が戻ってくる可能性が出てきますので,北朝鮮には利があると。

ものすごく短絡的な見方です。そのような短絡的な見方しかできないような状況に北朝鮮は陥っているということではないでしょうか。今後銀行と取引できないことにあわてるのは正常な人の判断。北にとっては,「それがどうした?」。目先が大事な北朝鮮にとっては,制裁解除になるわけです。



●基本的にアメリカは半島に興味がない●


もう一つ。 アメリカは基本的に半島(南北朝鮮)に興味がない。うざいのやめてくれる?というのがアメリカの基本スタンスだと思います。

元来,アメリカは半島に興味がありませんでしたが,冷戦時は,半島には守るべき価値がありました。中国に対する押さえ,ですね。

しかし,今となってはそれも失われてしまいました。アチソンラインは朝鮮海峡にあります。東アジアで重要なのは,日本,台湾,ネガティブな意味で中国。この3国しかありません。

例えば,コンゴとかで内乱が起きてもほぼ全ての日本人は関心がありませんよね。アメリカにとって,半島はその程度の意味合いしかありません。

ところが,この半島は南北ともに相当うざい。 北朝鮮はイランに核技術やミサイルを売ろうとしています。韓国はアメリカの国旗を燃やす毎日です。しかも,あの民族の性質はだんだんアメリカにもよくわかってきたわけです。

いったい,どこの誰がこんな国々を真面目に考えようとしますか。

だから,アメリカは六者会談で日和っている,という見方は正しいと思います。アメリカは適当に話をまとめたいのでしょう。だって,どうでもいいから。アメリカは真摯な態度で半島と向き合っていないわけです。

だいたい,ハルという人の肩書きは次官補。本来なら部長クラスが対応するような案件に課長か係長クラスが出てくるようなもんです。

従って,BDAの問題についても,アメリカが原則を固持しつつ,北朝鮮に譲歩した点がある,というのはわからないでもないわけです。なるべくコストのかからない方法で,とアメリカは考えているでしょう。

何度も繰り返しますが,半島は既に戦略的価値を無くしています。アメリカは半島について考えるのがめんどくさいわけです。うざいから,ちょっとだまっててくれる?というのがアメリカの本音。

政治は結構黒白がはっきりしない場合が多いですが,この問題についてはまさしくその例ではないでしょうか。というより,ぐだぐだにしたいのではないでしょうか。かっこつけて言えば,戦略的曖昧さ?

この,ああうざい,と,金返せがマッチしたのが一連の騒動の背景ではないかと。かなり,後ろ向きの騒動です。つまり,多少の信頼を失う代わりに幾ばくかの見せ掛けの平穏をアメリカは手に入れたわけです。

私はアメリカは北の核を容認していくと思っています。当面さほどアメリカに影響はないから。唯一,イランへの核技術輸出以外は。だから,今後も押したり引いたり狸の馬鹿しあいとまでもいかない,表面を取り繕ったようななんだかすっきりしない対応が増えてくるのではないでしょうか。

まあ,床屋談義していても仕方ありません。とりあえず,30日後に一つの結論が出ます。楽しみに待ちましょう。


その後,2400万ドル全額北朝鮮に返すことが決まったようです。アメリカは相当へたれてますね。いくら,実質的な制裁を科したとはいえ,これでは世間が納得しないでしょう。アメリカが譲歩した,と理解されても仕方が無いと思います。いくらマカオに資金の処理を丸投げしたとはいえ,2400万ドルに違法性がなかったことをアメリカが間接的に認めたような形です。

まさかとは思いますが,テロ支援国家認定解除まで進まないでしょうね。そこまでやってしまったら,アメリカに正義がなくなると思うのですが。



●その他●


毎日新聞の社説に「私たちは制裁の安易な解除に疑問を呈し、米政府の慎重な対応を要請してきた。」という件がある。 

はぁ?いつ毎日がそんなこと言った?散々文句たれてきたくせに。

ここだけは突っ込みをいれておかなくてはなりません。


ところで,BDAの会長スタンリー・オですが,マカオのカジノ王スタンリーホーのことではないか,という人がいます。だとすると,急に話が濃くなってきますね。

中国が必死にアメリカの処理に抵抗していますが,面子とかもありますが,実際に損をする中国人が政府高官にいるのでしょう。何せ,マカオですから。やくざの溜まり場のようなところです。もう,北朝鮮どころではないのでしょう。BDAを使って資金洗浄していた中国人が何人かいるのではないでしょうか。

もうひとつ,BDAは江沢民系の銀行ではないか,というネタも上がってきました。それなら,胡錦的にはBDAの破綻はOK,ということですね。

以上二つは未確認情報でした。


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