発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

「不安障害」で適切な治療を受けているのは患者10人中1人に過ぎない

2018-02-04 07:32:37 | 精神科医療
 「不安障害」は一般に世間では「あがり症」や「赤面症」「対人恐怖症」とよばれており、その人の性格(極端な心配性)と捉えられがちで、“治療が必要な病気”として認識されていない傾向があります。
 では、どんな方が治療対象となるのでしょうか?
 単純に「社会生活に支障がある」場合です。
 具体例を「元住吉こころみクリニックHP」から引用;

・立場上避けられないシーンで常に恐怖があって精神的苦痛が大きい
・苦手なシーンに向かうためにお酒の力が必要になっている
・苦手なシーンのことを考えるだけで心身に不調を感じる
・会食を避けるために対人関係に支障がでている
・結婚を望んでいるのに異性との交流の場を避けてしまう

 「治療が必要な患者さんが治療を受けていない」という内容の記事を紹介します;

■ 不安障害:適切な治療を受けているのは患者10人中1人に過ぎない
Univadis Medical News2018.01.26
 治療を受ける患者は高所得国でも3分の1に過ぎないことが新しい数字から示唆される。
 世界保健機関(WHO)が委託した新しい研究から、不安を抱えており、その治療を受けている人は28%以下、「恐らく適切な」治療を受けているのは10%以下であることが分かった。
 21ヵ国51,500人以上を対象とした研究から、対象者の9.8%が不安障害のDSM-IV診断基準を満たすことが分かった。頻度は各国ごとに違っていたが、アフリカ諸国集団では5.3%、欧州諸国コホートでは10.4%であった。治療の必要性を認識していたのはそのうち41.3%に過ぎなかった。不安を他の障害と組み合わせず、単独で検討した場合は、この割合が26.3%に低下した。
 治療を受けた患者は27.6%に過ぎず、「恐らく適切な治療」を受けた患者は10%以下であった。治療を受けた患者は高所得国でも3分の1に過ぎなかった。
 『 Depression and Anxiety 』に結果を発表するように著者らは、結果は不安障害に対する認識と治療を改善する必要性を示唆するものである、と述べている。
 「不安障害に関しては、臨床ガイドラインを守るよう医療提供者に働きかけ、治療の質を改善することが重要です。」と筆頭著者のJordi Alonso氏は述べた。

<原著>
・Alonso J, Liu Z, Evans-Lacko S, Sadikova E, Sampson N, Chatterji S, Abdulmalik J, Aguilar-Gaxiola S, Al-Hamzawi A, Andrade LH, Bruffaerts R, Cardoso G, Cia A, Florescu S, de Girolamo G, Gureje O, Haro JM, He Y, de Jonge P, Karam EG, Kawakami N, Kovess-Masfety V, Lee S, Levinson D, Medina-Mora ME, Navarro-Mateu F, Pennell BE, Piazza M, Posada-Villa J, Ten Have M, Zarkov Z, Kessler RC, Thornicroft G; WHO World Mental Health Survey Collaborators. Treatment gap for anxiety disorders is global: Results of the World Mental Health Surveys in 21 countries. Depress Anxiety. 2018 Jan 22. doi: 10.1002/da.22711. PMID: 29356216.


<参考>
□ 全般性不安障害とは?不安が制御できない症状と年齢ごとの特徴、本人・周囲の対処法は?(LITALICO
日本不安症学会HP
□ 「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル」(厚生労働省作成
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