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発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

双極性障害に対する抗けいれん薬が自殺リスクを上げる可能性

2017-03-24 06:07:40 | 双極性障害
 抗けいれん薬の使用が自殺企図リスクになるという報告ですが、抗けいれん薬を使ったからリスクが上がるのか、抗けいれん薬を使用せざるを得ない重症状態だったのか・・・どちらが先なのかは未解決ですね。

■ 双極性障害に対する抗けいれん薬の使用は、自殺リスク要因か
ケアネット:2017/03/24
 躁病または混合エピソードの治療を開始する患者における、自殺企図の危険因子について、フランス・パリ・ディドゥロ大学のF Bellivier氏らが検討を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2017年2月12日号の報告。
 欧州14ヵ国から募集された躁病または混合型の双極I型障害患者3,390例を対象に、2年間のプロスペクティブ観察研究を行った。新規自殺企図イベントに関連した患者および治療因子の特定には、ポアソン回帰モデルを用いた。2つの多変量モデルが構築され、過去の自殺企図の有無について層別化された。
 主な結果は以下のとおり。

・自殺企図は302件抽出された。ピーク発生率は、治療開始12週以内であった。
・自殺企図歴を有する患者における、自殺企図の再燃リスクと関連する要因は以下のとおりであった。
 ●初回躁病エピソード発現年齢の若さ(p=0.03)
 ●ラピッドサイクリング(p<0.001)
 ●アルコール使用障害、物質使用障害の病歴(p<0.001)
 ●向精神薬の処方数(p<0.001)
 ●試験開始時の抗けいれん薬の使用(p<0.001)
・自殺企図歴のない患者における、自殺企図の発生リスクと関連する要因は以下のとおりであった。
 ●ラピッドサイクリング(p=0.02)
 ●アルコール使用障害の病歴(p=0.02)
 ●試験開始時の抗けいれん薬の使用(p=0.002)

 著者らは「発症して間もない躁病または混合エピソードを有する、双極性障害患者に対する抗けいれん薬の使用は、自殺企図リスクを増加させる可能性がある。これが原因であるかどうかを明確にするためにも、さらなる双極性障害の研究において検討する必要がある」としている。


<原著論文>
Bellivier F, et al. Acta Psychiatr Scand. 2017 Feb 12.
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双極性障害の自殺リスクがもっとも高い病相はうつ状態ではなく混合状態

2017-03-13 06:10:14 | 双極性障害
 双極性障害(Ⅰ&II)は自殺企図が多いことで有名です。
 そのエピソードは患者さんの重症度よりも病相(フェーズ)の方の関連が強そうだ、という報告を紹介します。
 具体的な数字は、正常時と比べて、混合状態で120倍以上、うつ状態で60倍も高いとのこと。さらにうつ状態では、その持続期間、重症度などがリスク因子になるそうです。

■ 双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント
2017/03/13:ケアネット
 双極性障害(BD)のとくに疾患フェーズに関連する自殺企図の発生率やリスク因子を調査した長期的な研究は少ない。フィンランド・National Institute of Health and WelfareのSanna Pallaskorpi氏らは、双極I型障害(BD-I)および双極II型障害(BD-II)患者の長期プロスペクティブコホート研究において、BDのさまざまなフェーズにおける自殺企図の発生率とうつ病エピソード期における自殺企図のリスク因子について調査した。Bipolar disorders誌オンライン版2017年2月8日号の報告。

 Jorvi Bipolar Study(JoBS)では、BD-IおよびBD-II患者191例を対象に、ライフチャート法を用いて追跡した。異なる疾患フェーズの患者177例(92.7%)の自殺企図に関するプロスペクティブな情報は、最大5年が利用可能であった。自殺企図の発生率およびその予測因子は、ロジスティック回帰、ポアゾン回帰モデルを用いて調べた。うつ病エピソード期に発生する自殺企図のリスク因子には、2項ランダム切片ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・5年間のフォローアップ期間中に、718患者年当たり90件の自殺企図が発生した。
・発生率は、混合状態で最も高く、正常状態より120倍以上であった(765/1,000人年、95%CI:461~1,269人年)。また、うつ病エピソード期でもとても高く、正常状態より約60倍高かった(354/1,000人年、95%CI:277~451人年)。
・うつ病エピソード期の自殺企図リスクの重要な予測因子は、うつ病エピソードの持続期間、うつ病の重症度、クラスターCのパーソナリティ障害であった。

 著者らは「この長期にわたる研究により、自殺企図は、混合状態およびうつ病フェーズで起こることが確認された。自殺企図の発生率の変動は、正常状態と病期の間で顕著に大きく、BD患者の自殺リスクは、“だれ”よりも“いつ”に関連する可能性が高いことが示唆された。しかし、うつ病エピソードのリスクは、パーソナリティ要因の影響を受ける可能性が高い」としている。

<原著論文>
Pallaskorpi S, et al. Bipolar Disord. 2017 Feb 8.
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双極性障害「初期診断はうつ病 65%」「正確な診断まで平均4年」

2017-01-10 06:16:55 | 双極性障害
 双極性障害(旧名:躁うつ病)は診断が難しい疾患です。
 うつ状態で発症すれば「うつ病」、少しでも幻覚・幻聴を訴えれば「統合失調症」と診断されがち。
 経過中に「ん?どうも変だぞ・・・」と疑問が出てきて診断を再検討し、双極性障害と最終診断されるパターンが少なからず・・・というか結構存在します。

■ 双極性障害「初期診断はうつ病 65%」「正確な診断まで平均4年」
ケアネット:2017/01/10
 双極性障害は、最初の医療機関を受診時に正しく診断される患者が約4分の1しかおらず、初診から正確な診断に至るまでには平均4年かかることが、杏林大学の渡邊 衡一郎氏らによる調査で明らかになった。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年11月21日号の報告。
 双極性障害は、再発や躁病・うつ病エピソードを繰り返す疾患である。そのため、正確な診断・適切な治療開始までに時間がかかる場合が多い。この要因としては、双極性障害に対する医師の理解不足も考えられるが、患者の洞察力不足により、症状を医師へ正確に伝えることができないという可能性も考えられる。また、誤った診断から正しい診断に至った要因がどのようなものかは不明である。
 そこで著者らは、これらを明らかにするため、日本の双極性障害患者1,050例を対象にインターネット上でアンケート調査を実施した(2013年2月~3月)。結果は、記述統計を用いて分析した。
主な結果は以下のとおり。

・457例(男性226例、女性231例)が回答した。
・最初の医療機関を受診時、専門医(精神科医、心身医学科医)を受診していたのは86%であった。
・最初の医療機関を受診時の症状は、うつ症状が70%、混合状態が15%、躁状態は4%であった。
・最初の医療機関で双極性障害と正しく診断されていたのは約4分の1であった。
・初期診断で最も多かったのは、うつ病/うつ状態(65%)であった。そのほかに多かったのは、自律神経失調症(14%、日本で未定義の精神疾患の診断に使われる)、パニック障害(11%)であった。
・70%が最初または2件目に受診した医療機関で双極性障害の診断がついたが、残りの30%は正確な診断に至る前に3件以上の医療機関を受診していた。
・初診から正確な診断に至るまでの平均時間差は4年(標準偏差±4.8年)であった。3分の1は5年以上の時間差があった。
・正確な診断に至るまでに時間がかかった主な要因は以下の3つであった。
  「躁の症状を病気として認識しておらず、医師に伝えなかった」(39%)
  「双極性障害という疾患を知らなかった」(38%)
  「医師とのコミュニケーションが欠如していた」(25%)
・70%以上の患者が、双極性障害の診断に至る前に診断が変更された(1回変更 33%、2回変更 25%)。
・正確な診断に至った主な要因は以下の3つであった。
  「治療の過程で医師が双極性障害の可能性を疑った」(57%)
  「躁状態に切り替わった」(30%)
  「他の医師を受診したら、診断が変更された」(28%)
・最初に誤って診断され、不適切な治療が行われたと考えられる患者は、長期就労や学校での勉強ができない(65%)など、社会経済的な問題を最も多く抱えていた。


<原著論文>
Watanabe K, et al. Neuropsychiatr Dis Treat. 2016;12:2981-2987.
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双極性障害における再入院リスクの低い薬物療法は?

2017-01-05 06:05:44 | 双極性障害
 非定型抗精神病薬+気分安定薬の組み合わせが、気分安定薬単独や定型抗精神病薬+気分安定薬よりも有利であるという報告を紹介します。
 非定型抗精神病薬は、それまでの定型抗精神病薬の副作用を軽減すべく開発されてきた薬ですが、効果も弱くなったという印象が一般的。でも、再入院リスクという視点ではより有効であった、という内容で安心できました。

■ 双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか
ケアネット:2017/01/05
 気分安定薬(MS)による抗精神病薬補助療法が再発予防につながるとされる概念は、双極性障害(BD)患者における少数の自然主義的研究により支持されている。イスラエル・テルアビブ大学のEldar Hochman氏らは、MS(リチウムまたはバルプロ酸)単独療法または非定型、定型抗精神病薬補助療法により退院した双極性障害I型の躁病患者における1年間の再入院率を比較した。Bipolar disorders誌オンライン版2016年12月9日号の報告。
 2005~13年に躁病エピソードで入院したBD I型患者201例を対象に、退院時の治療に応じて1年間の再入院率をレトロスペクティブに追跡調査した。退院時の治療は、MS単独療法、非定型抗精神病薬+MS療法、定型抗精神病薬+MS療法に分類した。また、治療群間で1年間の再入院期間も比較した。再入院に影響を及ぼすことが知られている共変量を調整した多変量生存分析を行った。
 主な結果は以下のとおり。

・非定型抗精神病薬+MS療法における1年間の再入院率(6.3%)は、MS単独療法(24.3%、p=0.008)、定型抗精神病薬+MS療法(20.6%、p=0.02)と比較し、有意に低かった。
・非定型抗精神病薬+MS療法における再入院までの期間(345.5日)は、MS単独療法(315.1日、p=0.006)、定型抗精神病薬+MS療法(334.1日、p=0.02)と比較し、有意に長かった。
・非定型抗精神病薬+MS療法における調整後の再入院リスクは、MS単独療法と比較し、有意に低下した(HR:0.17、95%CI:0.05~0.61、p=0.007)。


 著者らは「BD躁病エピソード患者の再入院を予防するためには、MS単独療法よりも、非定型抗精神病薬+MS療法のほうが効果的であると考えられる」としている。


<原著論文>
Hochman E, et al. Bipolar Disord. 2016 Dec 9.
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「双極性障害の人の気持ちを考える本」加藤忠史著

2016-07-10 18:43:58 | 双極性障害
講談社、2013年発行

双極性障害(躁うつ病)の患者さん、家族向けのわかりやすい解説本です。
病気についての一通りの知識が得られるほか、患者さんが何に困っているのか、医学書では書かれていないことにも言及しており、学業、就職、結婚、出産など将来への不安や心配、カミングアウトへの迷いと覚悟なども扱っています。

私が参考になった箇所は・・・

□ 発病の原因は遺伝?ストレス?
 双極性障害は病気が遺伝することはない。その意味で、遺伝病ではない。
 ただし、病気になりやすい体質は遺伝する。双極性障害のある親から生まれた子の90%は双極性障害にはならない。

□ 正しい診断まで平均8年かかる
 発病がうつ状態の場合は、うつ病と診断される。その後躁状態になっても病識に乏しいことが多く、受診しないため診断が遅れがち。
 ただし、双極性障害のうつ状態に、抗うつ薬は効かない。

□ 不機嫌躁病
 躁状態は版往還に満ちあふれるというイメージがあるが、幻覚・妄想や焦燥感があったり、不機嫌になったりする場合も少なくない。

□ 躁の反動のうつは苦しい
 躁状態の時が絶好調だっただけに、落差が大きいのでつらい。躁が激しいほど、うつも激しく、長期にわたる。
 こんなに苦しくても生きていかないといけないのかと、自問自答し疲れ果ててしまう。

□ 双極性障害と自殺
 よく、うつからの治りかけの時が最も自殺の危険性が高まると言われるが、実際には、やはり具合が悪いときの方が危険。
 最も危険なのは、自殺を考えているときに焦燥感がある場合。そして躁とうつが混在している混合状態の場合。
 死にたいという思いだけでなく、実行に繋がる危険がある。

□ 双極性障害II型
 軽躁状態とうつ状態がある。うつ状態はI型のより重く長い。自殺の危険性もI型より高いとされる。

□ リチウム中心の薬物療法
 気分安定薬であるリチウムは躁状態とうつ状態の改善や予防、自殺予防の効果もある。ラモトリギンは予防効果の適応がある。
 抗精神病薬は躁状態や幻聴や妄想などに有効で鎮静効果もある。オランザピン、アリピプラゾールなどに保険適応がある。オランザピンは双極性障害のうつ状態に有効であることがわかり、最近保険適応を取得した。
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