私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

スピーカー(TAD E-1、他)視聴記

2012年03月16日 | オーディオ
 使用しているオーディオシステムが大分古くなってきたので、そろそろ買い換えの時期かな、と最近考え始めました。
 対象はアンプとCDプレーヤー。
 現在はアキュフェーズの「E-406」と「DP-65」を使用中で、双方ゆうに15年選手。
 スピーカーは「JBL S3800」というトールボーイ型です。
 ジャズの再生では満足しているのですが、クラシックのソロ・ヴァイオリンやオーケストラ/室内楽再生は今ひとつかなあ、というのが不満と云えば不満。

 ネットで検索すると、数機種を経て現行では「E460」と「DP-510」あたりが後継機種の様子。
 視聴できるところが近隣にないかと探したところ、なんと地元の電気屋さんでアキュフェーズを扱っていることを発見しました。
 その昔、上京してお茶の水のオーディオユニオンに通ったことが懐かしい・・・。

 早速昨日、自分のお気に入りのCDを携えて電気屋さんへ。
 う~ん、高級オーディオ機器が並んでいて東京のオーディオショップと変わらない雰囲気に圧倒されると共に、いやが上にも期待感がつのりました。

 上記のことを相談すると、「でも音が明らかに変わるのはやっぱりスピーカーですよ」と誘導され、結局最新スピーカーの試聴会に早変わり。
 ちなみに視聴システムのアンプはアキュフェーズのセパレート型の高級機。CDプレーヤーは、なんと目的の「DP-510」。

 そして視聴したスピーカーは、下記4製品;
① 「JBL S4800
② 「ソナス・ファベール CREMONA M
③ 「TAD E-1
④ 「B&W 804 Diamond


 最新スピーカーの再現力に驚くと共に、スピーカーの違いによりこんなにも音楽が異なって聞こえるものかと改めて実感した数時間でした。

 まず、スピーカーの性質として「音場型」と「音像型」に分かれることに気づきました。
 クラッシック音楽の再生を例に取れば、音場型は雰囲気や音の広がり重視で、オーケストラ作品の再生に適しています。
 一方の音像型は、解像度・分解度重視で、ソロ作品に適し、室内楽では演奏者の位置までわかります。

 私が用意したCDは、
□ 「アンドリュー・マンゼ/テレマン・無伴奏バイオリンのための12のファンタジー」
 バロック・ヴァイオリンの少しかすれた響きが人の息遣いのように聞こえるのが魅力。
□ 「ステイシー・ケント/ドリームズヴィル」
 キュート&エレガント! 女性ジャズボーカルの魅力をギュッと凝縮した愛聴盤です。
□ 「ウィリアム・アッカーマン/PASSAGE」
 懐かしいアコースティック・レーベルのウィンダム・ヒル社長によるソロ・ギター。シンプル&ノスタルジックな雰囲気で、彼のギターを聞いていると子供の頃の記憶が呼び覚まされます。
□ 「ジョン・コルトレーン/Ballads」
 云わずと知れた、モダンジャズの名盤中の名盤。
□ 「菊地雅章/LOVE SONG」
 愛称「プーさん」のソロ・ピアノ。分野はジャズですが、印象派に通じる深みがあります。
□ 「長屋和哉/千の熊野」
 鐘を叩いてニコニコ幸せそうな長屋さんの初期の作品。日本より世界で評価されている「和の響き」です。 

 等々。
 実際に視聴してみると・・・自分の求める音がどういうものであるか、改めて気づかせてくれたのでした。
 私が求めるスピーカーは、音場型ではなく音像型だったのです。

①のJBL S4800は自分のシステムでも下位機種のS3800を使用しているので、違和感ないサウンドでした。ジャズのエネルギーが伝わってきて好ましい。しかし個々の音に魅力を感じませんでした。クラシックのソロ楽器は焦点がぼやけて魅力的というには程遠い印象。音の密度・定位が悪く、やはりマンゼのバロック・ヴァイオリンのかそけき息づかいは残念ながら聞こえませんでした。お店で用意してくれた室内楽も各パートが独立せずに塊として聞こえしまう始末。

②のソナス・ファベール クレモナM はクラシックに定評のあるイタリアのブランド。音場型のスピーカーで、音の広がりを優雅に再生してくれました。弦楽器のつややかさはとてもよいのですが、原音再生/分解能は今ひとつで室内楽が塊で聞こえてしまいます。まあ、目指す方向が違うので仕方ありません。

③の TAD E-1 はパイオニア→ エクスクルーシブ(昔憧れたブランド)の流れをくんだ、国産のハイエンド・オーディオ・メーカーです。
 目からウロコが落ちました。今まで聴いたことがないような音が出てきたのです。
 特にウィリアム・アッカーマンのギターがこれほど魅力的に聞こえた経験は皆無。音の密度が桁違いで定位も素晴らしく、手の位置・動きさえ見えてきそう。自分のシステムで聴くと高音がうるさく感じるのですが、あくまでもなめらかに再生してくれます。
 室内楽も各パートの音が分離し、各音のキャラが見事に立っています。決して塊になって押し寄せてきません。ああ、室内楽ってこんなに聴いていて楽しいんだ・・・。
 値段も視聴した中で最高額の200万円! ひと桁違うんじゃ・・・と聞いたらあっさり否定され、ちょっと興奮が冷めてしまいました(笑)。
 欠点というものではないのでしょうが、原音に忠実すぎて、中低音がよく云えばタイトに、悪く云えば痩せて聞こえる傾向がありました。ジャズ愛好家には今ひとつ受けないかも知れません。ピアノはツブツブした音でよいのですが、サックスの音の広がりが減ってしまうのです。
 CDに記録されている情報を裸にしてしまう凄さ(怖さ?)がある驚異のスピーカーです。

④の B&W 804D は今、ベストセラーだそうです。印象は音像型+音場型。一つ一つの音を忠実に再生する一方で、中低音も痩せていない、つまりソロ楽器はもちろん、ジャズのエネルギーもしっかり再生できる逸品です。
 う~ん、いい感じ。
 ただ一つ気になったのは、高音が金属音に近くなる傾向があること(あくまでもTADとの比較ですが)。よく云えば「輝かしい音」と表現できるかも知れません。私にとっては「長時間聴くと疲れそう」な音でした。
 このスピーカーに100万円はとても出せないなあ・・・ただ、アキュフェーズのシステムはB&WとJBLのスピーカーを基準にチューニングされているという噂を聞いたことがあり、捨てがたいのですが。

 以上、簡単な感想を記してみました。

 ソロ楽器を原音に忠実に再生することと、ジャズのエネルギーを伝えることはスピーカーの設計上、真逆の方向であることを理解した午後でした。
 視聴した中で云うと「TAD E-1」の高音と「B&W 804D」の中低音を合わせたスピーカーが理想ですね。両方を満たすスピーカーはなかなか存在せず、数百万円クラスでしか実現しないようです(涙)。
 TADの上位機種に「R-1」というのがあるらしい(価格は高級セダン1台分)。機会があったら是非拝聴したいものです。

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