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“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「NLP子育て術~もっと幸せな育児8つのコツ~」

2010年04月03日 15時43分59秒 | 育児
著者:ダニエラ・ブリッケン、監修:堀井 恵、学研(2009年発行)
原題「ママ、ぼくだってイライラしているよ!」

以前、NLP関連本を読んで大変ためになったので、他の書籍を探して購入・読んでみました。
著者はドイツのNLP研究所代表、監修は日本のNLP研究所代表です。

「NLPってなに?」と疑問が最初に浮かびますよね。
私もこの堅苦しい単語に惑わされて、以前は敬遠していた口です。
NLPは「Neuro Linguistic Programming」の略称で、日本語に訳すと「神経言語プログラミング」・・・やはり堅苦しい(苦笑)。
NLPは現代心理学に於いて近年提唱された概念で、コミュニケーションについての学問と云われ、日常生活を円滑にするための貴重なヒントと手がかりを私たちに与えてくれる・・・そうです。
私のイメージは、コミュニケーションの方法を学問として解析し、スキル(=技術)として提供する手法、でしょうか。

読み終えて、今回も大変ためになりました。
子育てで行き詰まってしまったとき、理論的に解決する方法が示されているのです。
視点を変えるだけで、解決法が見えてくる・・・目から鱗が落ちました。
理論ですから、場面が変わっても応用可能です。練習問題も用意されています。
ポイントは「子どもが親を困らせることがあっても、そこに悪意はない」ということ。

実例を挙げた方がわかりやすいですね。目に止まった文章と共に抜粋します;

■ 子どもを伸ばす「ゆとり」とは?
 親が子どもの成長のためにできるサポートとはどういうものでしょう。子どもをガチガチに管理し、手を引っ張ることではありません。最も重要なのは「ゆとり」です。ここでのゆとりとは、自主性を尊重してのびのびと育てようという考え方です。間違えないでいただきたいのは、「ゆとりを持たせる=甘やかす、放任する」ではないと云うことです。子どもが自分で成長できるように、親が子どもに十分な余裕を持たせることです。

■ サポートとは?
 サポートとは援助することであり、代わりにやることではありません。いつでも親がそばで見ていると示すことです。何かあったらいつでも助けてもらえるという安心感を根づかせます。
 優れた庭師は、若木を無理やり曲げたりしません。自然の成長を助長し、良い木にするために、必要なときだけ当て木や矯正をします。親もこのように、必要なときにサポートできる体勢を整えておく必要があります。

■ 子どものリソース(=自分で成長するための力)
 親はつい、子どもができないこと、欠けていることに目を向けてしまいがちです。欠けているものではなく、子どもが今できていること、今持っている長所や能力に目を向けましょう。

■ 子どものお気に入りのミニカーが壊れたときにどう言葉をかけますか?
 親にとって、壊れたミニカーは興味の対象になりません。しかし、小さな子どもにとってお気に入りのミニカーが壊れることは、人生を左右するほど大きな、そして悲しい出来事です。そんなときに「新しいミニカーを買ってあげるから」という言葉をかけても、慰めにはなりません。それどころか、この言葉は親が自分の悲しみを全く理解していない、というメッセージにすらなるのです。
 親は先を見越して論理的にものを考えられますが、子どもは今の時間だけを見て、感覚によって物事を判断します。

■ 「いいかげんに起きなさい、学校に遅れるわよ!」
 よくある光景ですね(笑)。
 「学校に遅れる」という悪い結果を想像させることで、「時間通りに起きる」ように促していますが、このように起こされた子どもの頭には、朝から不愉快な想像が広がります。これでは一日が良い気持ちで始まりません。
 良い結果を想像させる言葉を考えましょう。
 「さあ起きよう。そうすればゆっくり準備ができるし、楽しく朝ご飯を食べられるよ。早めに学校へ行けば、学校が始まる前に友達と遊ぶ時間もあるわ。」
 この方が良い気持ちで一日をスタートすることができますね。

■ 親は悪い動機づけをしがち
 私たちは日常生活において、無意識のうちに悪い動機づけをしがちです。
 人前で騒ぐ子どもに「静かにしないと怒られるわよ」、道を走り回る子どもに「ケガをするから止まりなさい」と言って注意をしてしまいます。
 これを「みんなにお話が聞こえるように、静かにしよう」「歩いても間に合うから、ゆっくり歩こう」という言葉がけに代えたらどうでしょう。
 「~しないように」という否定形ではなく「~してみよう」という肯定的な言葉を使うと子どもの行動が変わってくるはずです。

例)おもちゃで遊んだ後ちらかしっぱなし。
 母:「パパが嫌がるから片づけなさい」→ 「パパが喜ぶから片づけたら?」

■ 願望とアウトカム(目標・成果)
 願望は他の人に期待を寄せて、他の人によって満たされるもの。
 アウトカムは、自分が努力することで達成できること。

例)子どもの兄弟げんかで家事が中断されてお母さんはイライラ。
 お母さんの願望(言い分)は「家事を続けられるように、子どもたちに静かに遊んでいてもらいたい」。
 これをアウトカムに置き換えてみると・・・「ケンカが始まっても口を挟まず、子どもが自ら解決法を見つけられるまで私自身が待てるようになる」あるいは「子ども同士が相手の意見を聞いてあげることができて、二人が話し合える時間を用意する」となります。
 子どもではなく、自分の努力によって達成できる目標が「アウトカム」。

例)夫から優しくしてもらいたい。
 これは願望です。この場合のアウトカムの例として「自分自身が優しくなって、夫と話す」というのはいかが。
 自ら優しい気持ちで向き合うことで、夫も優しい態度で接してくれる可能性が高まるでしょう。

例)子どもにお行儀良く食事して欲しい。
 これも願望。この場合のアウトカムは「親自身が食事のマナーを守る、食べ物を大切にする」など。相手に一方的に望むのではなく、まず自分が行動することで、思い描いた結果に近づくことができるのです。

 相手の態度に変化を望むならば、自分の態度を変えることで、相手の変化を促すことしかできません。私たちは、うまく行かないことがあるとつい、相手のせいにしたり、相手が態度を改めることを望んでしまいがちですね。

■ 肯定的意図について(ここがこの本の肝だと思います)
 人の行動には必ず肯定的意図があります。一見否定的に見える行動でも、その行動を取った本人には何かしらメリットをもたらすからその行動を取るのです。
 子どもは「満たされたい」「認めて欲しい」「自分を見て欲しい」という明確な願いを持っています。その願いを知っていれば、様々な行動の裏にある肯定的意図を導き出せます。肯定的意図は、子どもにとって根本的に良いものですが、その行動自体は最良の解決法ではない場合もあります。
 親は子どもの行動に反応するのではなく、そこに潜んでいる肯定的意図に理解を示し、反応すべきです。これをふまえると、顔をしかめたくなるような子どもたちの行動も違った視点で見ることができ、それに伴い親が取るべき的確な反応が自ずとわかってきます。
 親が肯定的意図を認めると、子どもは喜び、心を開いて受け入れてくれます。親が子どもの見かけの行動についてばかり言及していると、子どもとしては全く理解してもらえないと感じます。

例)大声で騒いで、周囲に迷惑をかける子ども。
 この子は周囲を困らせたいから大声を出すのでしょうか? 
 大声を出すことの裏にある肯定的意図は、親にかまって欲しいからかもしれませんし、周囲の注目を浴びたいからかもしれません。確かなことは、この子なりの肯定的な意図や思いがあって大声を出していると云うことです。

 昨今、少年による犯罪が問題になっています。少年たちは、生まれたときから悪い子だったのでしょうか。それとも些細なきっかけによって道がそれてしまったのでしょうか。きっかけは、行動に潜む本当の気持ちに気づいてもらえなかったためかもしれません。

■ 「本当はどうしたかったの?」
 子どもが問題を起こすと「なぜ、こんなことをしたの?」と問いただしてしまいがちです。子ども自身も失敗や間違いを望んだわけではありません。しかし「本当はどうしたかったの?」と聞くことにより、子どもは本当に望んだものを話し始めます。

■ 親子のすれ違い
 親子間でのコミュニケーションのずれは、親が子どもの世界を受け入れていないことで起こることがあります。
 それが顕著なのは、親が自分の意見や心配、助言を子どもに伝えるようとするときです。どんな行動も助言も、もちろん、子どものことを思ってのことです。しかし、どんなに一生懸命話しても、子どもに全然わかってもらえないとか、言葉が届いていない気がする、と嘆く親も少なくありません。
 これは、往々にして親が子どもに対して、一方的で威圧的になりがちだからです。「あなたによかれと思うからこう言うのよ」とは、親の一方的な理由です。そうした思いは時に意気込みすぎて、子どもにとってはただの一方的なお説教となります。子どもは説教には耳を貸しません。
 なぜ、大人の話は説教になってしまうのでしょうか。
 親が子どもの持つ世界を理解できていないからです。親が子どもの世界を受け入れ、さらに親の世界を飛び出して子どもの目線に立ってこそ、意思の疎通がかなうのです。

■ 子どもとコミュニケーションを取るためのスキル(技術)
 説明しきれないのでキーワードを列挙します(知りたい方は読んでください);
「ラポール」
「バックトラッキング」
「ミラーリング」
「ペーシング」
「リーディング」
「あなた的とらえ方」と「わたし的とらえ方」・・・「そんなことをすると誰かに叱られるわよ」と「そんなことをしたらお母さんは悲しい」

■ ストレスコントロールの手法
 ストレスの克服法ふたつ;「ストレスの要因を見極めること」「ストレス耐性をつけること」
 ストレスの悪循環を立つためには・・・深呼吸!
 「アンカリング」・・・う~ん、これができればすごい! 私もマスターしたい。

■ 最後に「良い親」とは?
 心身ともに健全に毎日を送り、自ら幸せであること。

・・・これが一番難しい。この本の内容が「良い親」を条件としているならば、すべて難しい・・・?!

初女さんからお母さんへ「命のメッセージ」

2009年11月29日 07時46分24秒 | 育児
著者:佐藤初女(はつめ)、主婦の友社、2007年発行

NHKで「初女さんのおむすび~岩木山麓・ぬくもりの食卓~」という番組を見て興味を持ち、購入した本です。
初女さんは1921年生まれですから、御年88歳。
眼鏡の奥の優しい眼差しが印象的な、凛とした女性です。

彼女は青森県津軽の岩木山麓に「森のイスキア」という「家」を立て、苦しみや悩みを抱える人達を迎えて一緒に食卓を囲み、食べることの大切さを伝えてきました。ある映画で取り上げられたことをきっかけに全国的に注目されるようになりました。
その象徴が「おむすび」。
食べる人を想い、心を込めて握るおむすびは心のふるさとになります。

TV番組で感じたこと。
初女さんの行為は「母性」そのものです。
人の気持ちを受けとめて・受け入れて寄り添うこころ。
しかし、訪問者は母性に飢えた子ども達ではありません。
皆立派な大人なのです。
幼少時に自分の気持ちを受けとめてもらえずに不安な気持ちを抱えたまま大人になってしまった人は、こころのトラブルを抱えがちなのですね。

日本全国、母性が不足しています。
子育て中のお母さんでさえ「私の気持ちを誰か受けとめて欲しい」と思っているこの国。

さて、この本はそんな初女さんが子育て世代のお母さん達へ送るメッセージ集です。
人間を見つめる優しい眼差し・・・やはり、私の尊敬する児童精神医学者の佐々木正美先生の言葉と共通点が多いと感じました。
「食」をより大切にしているところが初女さんの特徴です。
人間の生きる基本である食べることがしっかりすれば崩れた生活を立て直すことができる、まずはそこから、という考えです。

心に残った言葉を一部抜粋します。

■ おむすびは心のふるさとなんです。
 おむすびを握る、野菜を切る・・・ささやかなことでも、ひとつひとつ心を込めて、10の過程があるなら、すべての過程に手を抜かないで、ていねいにやったときに、人の心と魂に響きます。

■ 食は生命、食は生活の基本です。
 同じようなものを作ったり食べたりしても、食べ物を生命として生かすのと、ただ食べているだけでは全く違います。生命だと思って、慈しむように、育むように食事を作ると、絶対においしくなります。おいしくなければ栄養になりません。

■ 小さい頃から本物の味を覚えさせると、大きくなってからも、本物の味を求めて家に帰ってくるし、自分でも作るようになります。
 ぜひわが家の味を、小さい頃から食べさせてください。作り方を教えなくても、食べさせるだけで伝わりますよ。

■ 大人も子どもも、とにかく受けとめる。
 「イスキア」にみえる方は、それぞれ悩みは異なりますが、どなたも根底にあるのは、受けとめられた経験が乏しく、満たされずに心に傷を抱えているということです。社会でどんなに活躍されている方でも、男性でも女性でもみな、等しく受けとめられたいと求めているのです。

■ 子どものことを受けとめないで、子どもに要求してはいけません。
 子どもの言葉は、大人もきちんと受けとめましょう。子どもの言葉を感謝して受けとめなければ、子どもは素直になりません。

■ しつけには、周りの大人の行動すべてが反映されます。
 子どもに伝わるのは大人の言葉より行動です。何も言わなくても、子どもはお母さんの言うとおりにやります。しつけというのは、親の行動がすべてと言えるのではないでしょうか。

■ 離婚はいけません。
 「イスキア」では毎年、生活体験のために、養護施設に暮らしている女子高校生を2泊3日でお預かりしています。少女たちの多くは、幼い頃に家庭が崩壊した結果、親から離れている子たちです。
 少女たちは家庭への憧れが強く、やがて18歳になって施設を出てしばらくすると、結婚して子どもを産みます。そうすると、また子どもを手放しているんですね。自分自身の体験から、自分の子どもには同じ思いをさせたくない、と思うのではないかと考えますけれど、そうはいかないんですね。
 だからやっぱり、離婚はいけません。
 離婚問題を抱えた夫婦は、ほとんどが恋愛結婚です。

■ 子育てはそう長い期間ではありません。
 急ぐから、長いと感じるのではないでしょうか。
 待っていればちゃんと結果が出るのに、結果が出る前に動くからまとまらないのです。子どもが不登校になったときにも「学校へ行きなさい」と言うのではなく、じっと待つことが大切です。

■ 子どもを「よくしよう、よくしよう」と急ぐからダメなんです。
 調理と同じように、その素材の良さが、その子の個性が生かされるように育てればいいのです。
 お母さん、どうか子どもの芽を摘まないでください。


・・・初女さんが「イスキア」をいう試みを始めたのは、四半世紀前の弘前市内の自宅にて。実はその頃、私は大学生として同じ街に住んでいました(当然、当時は知りませんでしたが)。

「あなたの”子育て力”アップ」

2009年08月24日 08時04分11秒 | 育児
副題 ー子どもに浴びせてはいけないこんなコトバー NLP(神経言語プログラミング)活用事例集 VOL.3
編著:チーム・ドルフィン、発行:公人の友社(2005年)

知り合いの小児科の先生からNLPを勧められ、手元にあったこの本を読んでみました。
NLPというのはシステムとして確立したコミュニケーション・スキルのようですが、この本は堅苦しい理論には触れず、身近な話題を取り上げ、どう考えて対処すべきか解説する内容です。

とてもわかりやすく、役に立つ事例ばかり。
ありがちな以下の場面、あなたならどうしますか?

<乳幼児期>
・予防接種の際、ずっと泣き続けています。
 → お母さん:「そんなに泣くと、もうアイス買ってあげないわよ!」
・寝る時間なのに積み木を止めようとせずぐずり出します。
 → お母さん:「ダメ、ダメ、ダメ、さっさと寝なさい!」
・子どもが台所でうろうろ。お母さんを手伝いたいようです。
 → お母さんは「邪魔だから、あっち行って!」

<小学校低学年>
・日曜日の朝、一緒に朝食を摂りたいのに父親がなかなか起きてきません。
 → お母さん:「父親のくせに、全くしょうがないわねぇ」
・寝る前に宿題があることを思い出しました。
 → お母さん:「どうして宿題をやってから遊びに行かなかったの?」
・妹のゲームを横取りして泣かせてしまったお兄ちゃん。
 → お母さん:「お兄ちゃんのくせに、恥ずかしくないの!」

<小学校高学年>
・隠していたテストの答案がなんと30点!
 → お母さん:「いつもゲームばかりして、勉強をさぼっているからダメなのよ!」
・子ども同士のケンカでケガをさせてしまい、相手の親が怒鳴り込んできました。
 → お父さん:「ケンカの原因はそっちにあるんじゃないですか?」
・英語塾に行き始めたけど「つまらない」ともうやめたいという。
 → お父さん:「月謝も高いのに、やる気がないのならさっさとやめてしまえ!」

 どうやってこの場面を乗り切るか、知りたいですねえ。
 基本は「子どもの存在を認め、子どもの気持ちにより添う」ことが解決につながります。
 親の都合を優先すると子どもの気持ちは委縮し、あるいは反抗的になってしまいがち。
 私の尊敬する佐々木正美先生の著書に書かれていることとそう変わらないな、と感じました。

「育てにくい子」と感じたときに読む本

2009年04月12日 16時36分39秒 | 育児
佐々木正美著、主婦の友社、2008年発行

親子関係を上手く築く事ができない母と子どもの些細なトラブルを取り上げ、その背景を解説、アドバイスする内容です。
すでに佐々木先生の本は10冊くらい読んでいますが、題名に惹かれて購入したこの本もやはり「うんうん」と頷けることばかりでした。
私は小児科医ですので、診療中にいろんな子どもに出会います。
兄弟間の葛藤でもがいている子どもと親、ちょっと多動系でどうしてよいのかわからないお母さん。
そんな方々に良きアドバイスとなる珠玉の言葉がこの本には満ちあふれています。

著者には「育てたように子は育つ」という別の本がありますが、この表現に尽きる内容です。
・かわいい子はかわいがられているからかわいい。
・愛らしい子は愛されているから愛らしい。
・お母さんが幸せでなければ子どもは幸せになれない。
などなど。

印象に残るフレーズを列記します。

・「親の前でいい子、外では問題の子」を追いかけていくと、その多くが成長して反社会的・非社会的になることがわかっています。社会に適応できなくなってしまう・・・犯罪に走ったり、不登校になったり、社会に出られず家に引きこもったりする子もいます。一番安心できるはずの家庭で安心できないために、家の外で荒れたり、問題を起こしたりしてしまうのです。

・人間は「絶対に保護してもらえる」と思うとのびのび行動ができるものです。成長して自分らしさを余すことなく発揮できます。

・親が自分の願いを叶えてくれていれば、今度は親の願いを叶えたいと思うものなのです。子どもに親の言うことを聞いて欲しいなら、先に親が子どもの言うことを聞けばよいのです。

・私の言う「過保護」は「待っててあげるよ」というメッセージを子どもに伝えることです。子どもをダメにするのは「過保護」ではなく「過干渉」なのです。

・母性というものは子どもを「ありのままでいい」と包み込む「承認」の愛情です。「保護」の気持ちと言いかえてもよいかもしれません。確かに社会的ルールを伝える「父性」的なものは必要ですが、それは十分な母性が与えられて初めて子どもの心に入っていくものです。

・男女は確かに平等です。しかし、同じではありません。戦後、私たち日本人は「個人の人権」と「男女の平等」を手に入れました。しかし、戦後60年を経るうちに「自分を大事にしよう」という健全な個人主義が「自分だけを大事にする」という利己主義に変わってしまったように思えるのです。男性も女性も、人間関係を犠牲にしながら自己実現を果たしてしまった。それは家族の人間関係でも同じです。

・子どもを「親の都合」に合わせようとしているうちは、その子は感情をコントロールできるようにならないのです。逆に、親が子どもに合わせていれば、必ず親の言うことを聞く子に育ちます。

・おふろは「洗い場」じゃなくて「親子のスキンシップの場」。

・人間は誰しも攻撃性を持っていますが、欲求不満が強いほど攻撃性も強くなります。

・子どもに要求することをやめ、子どもの要求を聞いてあげてください。

・乱暴された子の悲しみはその場限りの悲しみです。少しのフォローがあれば立ち直れます。でも乱暴してしまう子、友達を泣かせてしまう子はもっと悲しい。もしかしたら、生まれてからずっと悲しいのかもしれない。その心を癒さなければ、その子の乱暴はやみません。

・不幸な事件を起こす少年達には「他者と共感する力」が弱いという共通点があります。共感する力がないから他人の悲しみを感じることができないのです。だからいじめることができるし、他人の命を奪うこともできる。
 「他者と共感する力」は幸福な人生を歩むための原点です。この力を最初に身につけるのは赤ちゃんの頃です。泣いたらあやしてもらい、一緒に喜んでもらう・・・そうやって親に共感してもらえた経験が「他者と共感する力」の土台になるのです。

・親自身が周囲に対して「こちらは迷惑をかけませんから、そちらもかけないでくださいね」という人間関係では、子どもは自立できません。「自立」とは「人に迷惑をかけないこと」ではなく「こっちも頼りますから、困ったときはいつでも頼ってください」という関係を作ることです。

・もともと幼稚園は4歳からの入園が一般的でした。集団に溶け込める年齢は本来そのくらいなのです。

・親の仕事は子どもの心を受け止めてあげること、子どものサポーターになることです。

・人は依存と反抗を繰り返しながら自立します。だから、お母さんへの依存や反抗が十分足りている子ほど早く自立するのです。けれど、十分に甘えられていない子はいつまでたっても依存したままです。依存が強い子というのは、依存経験が足りていない子に多い傾向があります。

・親は保護者です。教育者ではないのです。

・「仕事で疲れているんだから」という言葉を子どもに言ってはいけません。仕事で疲れているのは親の勝手なのです。

・育児の喜びは待つ喜びです。しかし、待つことはとても難しい。「こうすればいい」「ああすればいい」と助言したり鑑賞したりする方が親は楽なのです。でも、あれこれ言えば言うほど子どもは萎縮します。自信を失います。

・ADHDなどの発達障害は「発達の遅れ」や「心の病」などではありません。発達の様相の違いです。さまざまな発達の領域に凹凸があるのです。こういう子は「気が散りやすい」「集中できない」と言われますが、それは単に「大人が集中して欲しいと思っていることに集中していない」というだけのことです。
 「甘やかしてはいけない」と厳しくしかったり「周囲と同じにできる子」にしようとすると、その子の人格を破壊します。「こうしちゃだめ」というのではなく「こうするのがいい」と具体的に教え、できるまで手伝ってあげてください。何度も穏やかに言うのです。ゆっくり待ってもらう時間がこの子には必要です。
 こういうこの教え方には多少のコツがあります。「皆さん」と全体に向かって何かを言っているときには聞こえませんが、「○○くん」と名指しで言われると聞くことができるようです。あと、後ろの咳ではなく先生の斜め前あたりの席に座るといいようです。真正面より斜め前が良いようです。

・兄弟があるときは上の子に一番手をかけてあげましょう。「お母さんは自分を大事にしてくれる」という自信が持てると、上の子は下の子に優しくなります。「私より妹を先にしてあげて」なんてね。自分に自信がない人間は、他人に優しくなんてできません。

・子どもに期待をかけることが親の愛情だとはき違えているお母さんが多いように感じます。しかし、子どもは過剰な期待を愛情だと感じる事なんてできません。過剰期待を「自分への否定」と捉えるのです。今の自分ではダメなんだ、愛してもらえないんだ、と。

・母親への信頼感はすべての原点です。他者への信頼感も、自分への信頼感も、母親を信じることからスタートするのです。

・「共感する力」(他者を思いやる気持ち、相手の痛みをわかる気持ち)は生後半年くらいまでに育つと言われています。人はまず「喜びを共有する力」を持たなくては「悲しみを共有する力も持てません。
 学校で友達をいじめる子には他者の痛み、悲しみがわかりません。彼らは幼い頃、親と喜びを共有した経験が非常に少ない。だから悲しみも共有できないのです。しかられても説明されても人の悲しみは理解できません。誰かと喜びを共有して初めて思いやりの心が芽生えるのです。

・「社会のルールを守る気持ち」は生後6ヶ月から2歳頃までに育つと言われています。少年期になっても社会のルールを守れない子の多くは、赤ちゃん時代に「振り返ったときに誰もいなかった」という経験を積んできた子ばかりです。答えを求めたときに親はちっとも自分を見てくれなかった。にもかかわらず、親の都合で「これをしちゃダメ」「あれをしちゃダメ」「こうしなさい」を言われてきたのです。大事なことは、子どもが求めるときに見てあげることです。赤ちゃん気のしつけはそれに尽きると言っても過言ではありません。

・「自分を律する力」は幼児期前半(3歳頃まで)に身につきます。大切なのは親がこの時期を「待つ」とこです。わが子が何かをできるようになる、その一つ一つを親はただ見守りながら待つのです。厳しくしつければ、はた目には「いい子」が育つかもしれません。しかし、わが子を十分受け止める前に厳しいしつけに傾いてしまうと、最も大切な「母子の信頼関係」が損なわれることもまた事実なのです。
 ・・・信頼していない人から命令されても従えませんね。

・兄弟を同じに育てる必要はありません。親の愛情や手間、金銭的なものを「等分」に与えるのが良いとは思わないことです。こどもは皆それぞれ違う欲求を持っていますし、親をわずらわせる頻度も違うでしょう。親の手を、必要なときに必要な分だけ与えてあげることが「平等」なのです。

・兄弟が何人いても、どの子も一人っ子のように育てるのが良いと思います。こどもそれぞれの違いを比較するのではなく、その違いを十分に味わい楽しんでください。こどもとの一対一の時間も欠かせません。その子だけの要求を聞いてあげる「一人っ子の時間」がこどもには必要なんですね。

・「一人っ子だからワガママになるんじゃないか」とわざと厳しく育てようとされるか違いますが、それは大きな間違いです。もしそうなってしまった場合は、親がその子に集中する時間を持ててしまうあまり過干渉になってしまったのだと思います。余計なことを子どもに要求しすぎた結果、欲求不満になってワガママになったのだと思います。一人っ子の場合は過干渉にならないよう注意しましょう。上手に手をかけ、して欲しいことだけをなるべくするようにしてあげれば、その子らしさを発揮して伸び伸び成長できることと思います。

・「一人っ子だから早く集団生活を体験させたい」というのも間違いです。まずは親子の信頼関係をしっかり築き、次に親と一緒に他の子と交わり、その後で集団生活にはいるのがスムーズです。順番を間違えてはいけませんよ。特に「親と一緒に他の子と交わる」という部分は是非厚くしていただきたいですね。

・兄弟ゲンカで親がすべきことは「ちゃんと見守って」「口を出さず」「試合終了を宣言して」「気分転換をさせる」ことに尽きます。
 兄弟ゲンカは「スポーツ」です。いいも悪いもない。強い方が勝つし、何度負けてもまたやりたがりますよね。親が下手に価値判断すると必要以上にこじれるだけです。親の役目は「ノーサイド」と試合終了を告げるだけ。介入も仲裁も無用です。親が怒ったり、善悪を判断したりすると、親の愛情を求めて「恨み」になってしまいます。片方が片方に「謝れ」というなら、「ママが代わりに謝るからね」と言ってあげれば良いんです。
 お兄ちゃんだって手加減しています。偉いもんです。
 「泣いてもからかう」のはゲームセット後の攻撃ですから、親が「もうお終いよ」と言えばいい。それでもやめないなら、しかりつけるのではなく気分転換できる何かを与えればよいのです。

・上の子が下の子に意地悪する、優しくできないなんて良くあることです。上の子が下の子を思いやれないのはどうしようもない理由があるのです。まず上の子をたっぷり思いやってあげてください。
 お母さん自身が「公平にしている」と思っていても、上の子に見えている世界はまた違うのかもしれません。上の子を優先させてあげることも必要です。なんでも「まずお姉ちゃんね」と優先してあげると、上の子は「弟が先でいいよ」と言うようになりますよ。上の子を重視しているように見せかけて、実は下の子にやってあげているという育児テクニックです。

・「兄が弟を叩いていじめると、私が弟宇野代わりにやり返して叩き返してしまう・・・」
 乱暴は満たされない心の表れです。たたき返し、蹴り返しても、乱暴に拍車がかかるだけです。叩かない子にしたければ、まず親が我慢しなくてはいけません。もし叩いてしまったときには、お子さんに向かって「怒りすぎてごめん」と謝り次からは本当に我慢してください。
 幼稚園や保育園でも、乱暴な子や意地悪な子は何か心に傷を抱えていて屈折していることが多いのです。その欲求不満が乱暴な行動を生むのです。しかればしかるほど、あなたが悪いと言われれば言われるほど、欲求不満は大きくなるばかりです。
 そして、お母さんが夫との関係でくつろぐことができないと、子供に厳しく当たってしまう傾向があるようです。

・「上の子を可愛いと思えない・・・」
 かわいがれば、かわいい子になりますよ。お母さんにかわいがられると、上の子は下の子をかわいがるようになります。
 逆に「かわいい子になって」と願いすぎるとかわいくない子になるのです。求められすぎて上の子の中にたまった欲求不満は「退行(赤ちゃん返り)」や「攻撃性」という形で表に現れてきます。

・どんな人の心の中にも善意と悪意があるものです。自分にだって悪意がある。それでもなお、人の「善意の部分」をちゃんと信じられる人、そして自分の善意を発揮できる人に育てるのです。
 皆さん、わが子を信じることができますか?
 わが子を信じられなくなると、親は口うるさくなりますね。ガミガミ言ってコントロールしたくなります。
 親ですから「こうなって欲しいよね」と思う気持ちは当然ありますが、「でも、そうならなくてもいいよね」というスタンスも必要です。そういう視点があるだけで、子どもは安心して大きくなれるのです。

・罪を犯した少年達がいる少年院で親のことを聞くと「親の世間体やプライドを常に優先させて、自分の立場を考えてくれなかった。」と皆同じことを言います。
 守るべきは子どもの自尊心であり、親の対面ではありません。自分を大切に思うことができれば、他人のことも大切にします。悪いことはできなくなります。

・人間関係は相互依存関係です。私たちは皆、人間関係の中でしか幸福になることはできません。自分のことしか大切にできない人は、みな孤独になってしまい、いつしか心を病んでいきます。他者を大切にできない人は、自分の人生をも無為なものにしているのです。
 子どもを育て、子どもを幸せにすることでお母さん自身が幸せになっていくのです。夫を大切にすることで、夫からも大切にされるのです。親をいたわることで、子どもからもいたわられるのです。

・人をありのまま受け入れるためには、自分がまず受け入れてもらう必要があります。自分自身が受け入れてもらえてないから、子どものことも受け入れられない、幸せになれないのです。母親が幸せでなければ子どもも幸せになれません。

・「何やってるの」「早くしなさい」と始終怒られている子には、自制心や自尊心が育つ暇がありません。けなされ続けた子は自尊心が育ちませんから、自分の行動に自信を持つことができないのです。「待てない親」「イライラしやすい親」に育てられた子は、自制心や自立心が育ちにくい傾向があります。

・元気になるための一番の近道は、わが子の幸せそうな笑顔を観ることです。そしてその笑顔をつくれるのはお母さんしかいないんです。

・子どもが素直に「ごめんなさい」を言えないとすれば、その責任は親にあります。

・ADHDや学習障害、高機能自閉症(アスペルガー症候群)などの発達障害の子を持つ親たちは、非常に大きな葛藤を抱えています。「どうすれば『普通の子』になれますか?」「普通学級でトライさせてみたいのです」という訴えを聞くと、子どものためではなく、親が希望を持ちたいがためなのだと痛感します。しかし、それが障害児の親なのです。そこを乗り越え、受け入れるために、彼らは何年も何年も葛藤するのです。
 「その子をありのまま受け入れてあげてください」という話を親にすると、目頭を押さえる方がたくさんいらっしゃる。障害をうけいれられない、認められない、そんな人はたくさんいるのです。そのつらさや苦しさを周囲の親たちも理解してあげられるといいですね。

・育児に非協力的な夫に関して;
 愛情とは本来、相手を幸福にできることを自分の喜びとする気持ちです。
 大人になったときに、本当の意味で人を愛せる人というのは、幼い頃にたっぷり受容されてきたのです。結婚して妻を支えようという気持ちが持てない夫は、両親に本当の意味で愛されてこなかった人でしょうね。自分が思いやられること無しに、誰かを思いやることはできないのです。
 自己愛を求める幼児性のある夫を持った妻は、子どもがもう一人いると考える覚悟が必要かもしれません。

「病院出産が子どもをおかしくする」

2009年03月26日 06時57分00秒 | 育児
奥村紀一著、2008年出版、洋泉社

私がふだんから感じていることがそのまま本の題名になっているので気になって購入し読んでみました。
著者は医者ではなく哲学者です。
目から鱗が落ち、ウンウンと頷けるところがたくさんありました。
一方、医学的な記述に関しては「そう言う意見もあるけど逆の意見もあり、まだ議論中で結論は出ていない」分野にも自分の考えに合うデータを並べて断定的に書いてある箇所が散見され、すべてを鵜呑みにはできないなという印象も受けました。

著者の主張は本文の冒頭付近にある以下の文章に集約されています。

 「わが子を可愛いと思えないのは、育児関連ホルモンの分泌不良という生理学的な問題であって、本人の性格や意志とは何の関係もありません。
 哺乳類である人間の母親が子どもを可愛がって守り育てるのは、授乳と皮膚の接触に刺激されて分泌される数種類の育児ホルモンの機能によるものです。1950年代に母親の異変が現れ、60年代から子どもに異変が起きてきたのは、出産の場が家庭から病院に移り、出産直後から赤ん坊が別室に分離されたこと、ミルク保育と早期断乳による乳房刺激の不足、おんぶ・添い寝をしない様式育児法などに影響されて、親子の皮膚接触(スキンシップ)が激減したためなのです。
 育児に関係したホルモンの研究が進んだのは1980年代後半からです。哺乳類が子を育てる基盤が「乳房による哺乳」であり、これなくしては正常な育児ホルモンの分泌が保証されず、母子双方の愛着関係が希薄になることが判明したのはごく最近のことです。これを踏まえてアメリカ小児科学会は2002年に母乳育児の新しいガイドラインを出し、従来の方針を180度転換して、出産直後から母子が密着する育児法(つまり伝統的な日本の育児法)を強く推奨し、その普及に尽力するようになりました。
 戦後の日本は最良の伝統的な育児法を最悪の西洋方式に切り替えましたが、それが母親の異変を引き起こし、虐待を横行させる事態を招いたのです。」

さて、以降の各論中で「!」という箇所を抜粋します。

★ 出産方式の大転換(「自然」から「人工」へ)が起きたのは、1948年にGHQ(連合軍総司令部)の指令に基づいて、厚生省が「母子衛生対策要綱」という通達を出し、その中で出産の場を自宅から病院に切り替えるように勧告したからです。
 アメリカでは1930年代から出産を病院で管理する方式が主流となっていました。

★ すべての哺乳類は、出産直後から子が独り立ちするまでずっと親子が一緒に生活し、授乳期間中に分離されるようなことはありません。

★ 母性を発言させる3つの育児ホルモン

①オキシトシン(愛情ホルモン)・・・子どもを可愛がり、世話をさせる
 C. A. ペダーセン博士らの実験によると、このいない雌ネズミの脳にオキシトシンを注入すると、まるで母ネズミのように変身し、巣を作って近くにいるよその子ネズミを運び込み、舐めたり添い寝したりしてかいがいしく世話をするようになります。
 出産時に陣痛に伴って増大し、出産直後に最大となります。母乳の射出を促す機能もあり、母性の発現にとってもっとも大事なホルモンです。

②バゾプレシン(保護ホルモン)・・・子どもに注意し、外敵から守らせる
 出産後にバゾプレシンが分泌された雌ネズミは、臆病な性格を一変させて、子を守るために敵を攻撃する勇気を示します。このホルモンの受容体が多いアメリカの野ねずみ(プレーリーボル)は一夫一婦制を守ることで知られており、両親の協力による安定した子育てには欠かせないホルモンです。

③プロラクチン(母乳ホルモン)・・・母乳を生産し、育児に専念させる
 母乳の生産を促進するホルモンで、その分泌は出産が近くなった時期に急激に高まり、分娩直後に必要な初乳の生産を用意します。また、このホルモンはオキシトシンを補助して母親の関心が子ども中心になるように仕向けるので、母性愛の発現を多くの側面で促進・強化するものです。
 また、プロラクチンには抗ストレス作用もあります。母乳で育てている人はこのホルモンが豊富に分泌されるので、イライラすることも少なくゆったりと子育てができます。赤ちゃんを抱いておっぱいを吸わせれば幸せな気持ちになり、落ち着いて充実した毎日を送ることができるのです。ミルク育児の人はこのストレス緩和ホルモンが少ないので、不平不満が溜まりやすくなります。

「母性本能」といわれるものの実態は、この育児促進ホルモンの共同作業に他なりません。

・・・これらのホルモンの名前は医学生時代から知っていましたが、このような捉え方をした記述に初めて出会いました。

★ 日本の昔(1950年代以前)の母親は2~3年に及ぶ哺乳を当たり前のように行えていました。これは伝統的な育児法を守っている世界の民族すべてに共通していたことなのです。

★ 小泉武宣・群馬県立小児医療センター医療局長の研究報告によると、全国の新生児医療連絡会の施設において、低出生体重児または病弱児が退院後に虐待された事例49件のうち、その個別記録が残っている子どもの生後または退院後1ヶ月における授乳様式をみると、母乳で育てられた子どもは2人だけであり、群馬県内の同様の調査では、保育方法が確認された22人の被虐待児のうち母乳で育てられたのはたったの一人でした(「母乳育児は子ども虐待のリスクを減らせるか」『母子保健情報』第47号、2003年)。

・・・実は小泉先生は私の師でありました。この3月で定年退官です。長い間の新生児医療、ご苦労様でした。

★ アメリカ政府が1914年に観光した公式の育児ガイド「幼児の世話(infant care)」は「授乳の時間・回数」から「抱かせ方」に至るまですべて「一定の規則通りにする」ことを説き、とくに「抱く」「あやす」といった基本的な養育行動の価値を否定し、親子のふれあいを極力減らすように主張しています。
 この方式を参考にした日本の母子手帳の中の「育児の心得(1953年版)」には次のような記述が羅列されています。
イ.添い寝の癖は母子ともに安眠できませんからやめましょう。
ロ.大体決まった時間に十分にお乳を飲ませましょう。
ハ.子どもが泣いたらよく原因を確かめましょう。泣いたからといってすぐお乳を与えたり、抱いたり、おぶったりするのはよくないことです。
ニ.子どもの一人遊びは大切です。
ホ.食べることも着ることもそのほかのことも一人でできるように仕向けましょう。

・・・驚きです。今は「育児の誤解」とされていることの真犯人は、実は厚生省が作成した母子手帳だったのですね。その後西洋式育児法を見直し、1985年に大幅な内容改訂が施され、「添い寝」や「抱っこ」はマイナスからプラスへ180度評価が変わりました。

★ スポック博士の育児書ー家庭内の母子分離ー
 アメリカでは誕生直後から赤ちゃんの寝床は別にし、半年以内に別室に移すのが一般的です。夜中に泣いてもそばに行かず放置するのが原則です。昼間は4時間おきの授乳時間以外は泣いても乳を飲ませないし、甘やかし、抱き癖、構いすぎなどを厳しく戒めるので親子がふれあう機会が少なくなります。
 親子が一緒にいても抱っこはされずにベビーベッドかベビーサークルの中に置かれ、外出してもおんぶはされずに乳母車に座っているだけです。

★ 母乳育児が子どもにもたらす利点ー米国小児科学会編「母乳育児のすべて」よりー
①免疫力が強くなるので各種の罹病率が低くなる。
・アレルギーや湿疹はミルク育児の1/2~1/7。
・耳の感染症と胃腸炎は1/3。
・髄膜炎は1/4。
・尿路感染症は1/3~1/5。
・I型糖尿病は1/2。
・肺炎、下気道感染症は1/2~1/5。
・炎症性腸疾患は1/2。
・急性白血病、乳幼児突然死症候群、ホジキン病などにかかりにくくなる
②成長してから肥満になる率が低く、女子の場合は乳ガンの危険率が減少する。
③IQや認知能力テストの成績が高くなる。これは母乳に含まれている特殊な脂肪酸(DHAなど)が脳の発達に適しているため。
④心理的に安定し、他人との親密な関係を結びやすくなる。
★ 母乳育児が母親にもたらす利点
①乳ガン、卵巣癌になる率が下がる。骨粗鬆症と骨折の危険率が減少する。
②出産前の体型に戻りやすくなる。これは授乳で蓄積脂肪芽減るため。
③心理的に安定し大人になる。これは育児ホルモンの働きによって自己中心的な志向が薄れ、他人に親切で寛容な心情が養われるから。
④ミルクや哺乳備品が不要なので金銭的な負担が減り、旅行や外出の際にも手間が省ける。

★ 米国小児科学会の早期離乳に対しての反省
 他の多くの文化圏では離乳は準備のできた子ども達の方から始められるのに、米国では母親の方から始めることが多くなっています。世界的には離乳の平均的な時期は2~4歳で、母乳育児を6、7歳まで続ける社会もあります。
 母乳の成分は赤ちゃんが1歳を過ぎても変化を続けて優れた栄養として重要で、子どもの免疫組織の強化にも役立つことがわかってきました。また研究により母乳育児の効果が明らかになり、母乳育児を長く続けるほどに、子どもが母乳をたくさん飲むほどに子どもと母親の健康によいことがわかってきました。

★ 母乳がよく出るように栄養をつけようとする人が多いのですが、母乳の供給を増やすような食品や成分はありません。母乳を出すために牛乳を飲む必要もありません。ご飯と味噌汁と野菜中心のおかずだけで母乳はたっぷり出るのです。

★ ヒトの親子の生涯において、哺乳期間ほど強い親愛感を伴った体験を共有するのは他にありません。この貴重極まる機会を無味乾燥なボトル保育で失うのはあまりといえばあまりの損失なのです。
 乳幼児期にどれだけ親とスキンシップを持ったか、つまり親と子がどれだけ肌を触れあったかが本人の生涯における人間関係に大きな影響を与えるのです。

★ 満たされない「ふれあい要求」の弊害
 離乳が早すぎたり独り寝ばかりさせていると、そのふれあい不足を埋めるために特定のぬいぐるみやタオルなどに執着する現象がみられます。これは指しゃぶりと同じように母子接触の欠乏を示唆する自然な反応です。
 母親と分離されていると発育不良や性格異常になりやすい現象を「施設病」と呼びます。これは孤児院などの養育施設で育てられる幼児に「全身衰弱」や「発育不全」が多発するもので、19世紀からその現象は知られており、20世紀初期のアメリカの施設でも1歳未満のinfantile大半が死亡するほどひどいものでした。

・・・他の例をテレビで観たことがあります。チャウシェスク大統領時代のポーランド。人工妊娠中絶を法律で禁止したため、孤児が爆発的に増えて施設の狭い部屋に多人数押し込められて不十分な養育しか受けられない状況では子どもは皆異常行動を呈し、死亡する例も多いというおぞましい映像でした。

★ 乳児突然死症候群(SIDS)の増加
 SIDSの発生率はアメリカでは日本の20倍以上と高く、生後2週間から1歳未満の死因では第一位です。この突然死の原因については「うつぶせ寝」「寝具の不具合」「暖めすぎ」「親の喫煙」などが上げられています。SIDS研究の世界的権威であるジェームズ・マッケナ博士はこの病気の有力な発生源として「乳児を独り寝させる欧米流の育児法」を挙げています。
 この突然死は「ベビーベッド死」とも呼ばれていることからもわかるように、ほとんどがベッドで独り寝しているときに発生します。

・・・赤ちゃんの孤独死という側面もありそうですね。

★ 未熟な状態で生まれたヒトの赤ちゃんにとって、「羊水」の代わりが「肌の触れあい」、「胎盤」の代わりが「母の乳房」なのです。人工乳による保育は本当にどうにもならない場合の最後の手段であり、母乳と並べてどちらかを選ぶというような二者択一の対象ではないのです。

★ 夜泣きについて
 様様な人類学者の報告によると、原始的な生活を送っている集団の中では泣き続ける子どもの姿はめったに見られません。その理由は、母親がいつも子守帯でおんぶし、寝るときも必ず添い寝して泣けばすぐに好きなだけ母乳を飲ませるからです。
 近世の日本についてもモースが「私は今までに揺りかごを見たことがない。また、一人放り出されて目の玉が出るほど泣き叫んでいる赤ん坊も見たことがない。事実、赤ん坊の泣き声は日本では極めて希な物音である。」(『日本その日その日』より)。
 現代の日本に「泣きやまない子」が増えたのは、伝統的な育児法によって満たされていた「皮膚接触」を全く無視し、テレビやビデオに子守をさせる親が多いからです。

★ colic(疝痛)と指しゃぶり
 colic・・・泣きやまない赤ちゃんはお腹を痛がっているのだろうと考えて命名された。
 「疝痛を起こしている乳児は非常にお腹がすいているように見え、手当たり次第に何にでも一生懸命吸い付く」
 「疝痛を起こしている乳児は出蹴れたり揺り動かされたり穏やかに軽くたたかれたりすると静かになる。おしゃぶりも乳児を静かにさせる。非常に活発で落ち着かない乳児は布でくるんでやると効果的なことがある」(メルクマニュアル日本語版より)
 以上の記述からわかるように、乳児が欲しくて泣き叫んでいるのは「乳房を中心とした母親との接触」なのです。
 「布でくるむ」のは、全身が羊水に包まれていた胎児の状態を再現するものなので、子宮内に戻った感じで落ち着くのです。
 メルクマニュアルには「疝痛は生後3~4ヶ月で治まる」と記されていますが、その時期になると乳児が自分の指をくわえられるようになり、それをおしゃぶりの代用にするからです。欧米の乳幼児の写真を見るとベビーカーの中で指を吸っている子どもが非常に多いことがわかります。この乳児期における口唇面の欲求不満は大人になってから様様な代償行為を引き起こしますが、アメリカで「噛みタバコ」や「ガム」の愛用者が多いのもその一つでしょう。
 最近は日本でも指しゃぶりする子をよく見かけますが、昔はほとんどありませんでした。モンタギュー博士(※)は「一般に子どもが必要とする皮膚刺激をすべて与えている原始的な社会では、指吸いや指しゃぶりがめったにないのは興味深い事実である」と記しています。
※ アシュレイ・モンタギュー博士:皮膚接触が持つ重要性を多面的に解説した名著「タッチング」の著者。

★ 乳糖不耐症と日本人
 日本人は牧畜を続けていた欧米人とは違って「乳糖」を消化できない「乳糖不耐症」の人が多いので、自分では気づかぬうちにミルクアレルギーによって便秘、喘息、アトピー、中耳炎、ただれ、鼻づまり、下痢などに悩ませれる割合が想像以上に多いのです。アメリカの白人では、乳糖不耐症の人は8%、デンマーク人では2%、日本人は85%にものぼります。
 群馬大学小児科名誉教授の故・松村龍雄氏は「アメリカの小児アレルギーの第一人者であるグレーザー博士は乳児のミルク栄養について、『人類がかつて受けた実験のうちでもっとも規模が大きく影響力が大きく、しかもその被害が医師にすら気がつかれないでいるもの』と批評している。」と書き残しています。

★ 「ふれあい」体験の減少による弊害
 人間は一生涯のうちに様々な「皮膚接触(ふれあい)」を体験します。その最初のものが母親などの保護者によるおんぶや抱っこ、添い寝であり、次が子ども同士のじゃれ合いや遊び、そしてスポーツや男女の交わりへと進みます。
 「三つ子の魂百まで」といわれますが、この「三つ子」は満三歳ではなく数え年で「満二歳前後の子ども」のことです。昔の日本では3歳頃まで授乳するのは一般的でしたし、おんぶも添い寝も当然でしたから、「ふれあい」が保証されていました。心身ともに健やかな子どもが巷にあふれ、モースその他の外国人から「世界一よい赤ん坊」と称賛されたのです。
 しかし、戦後の日本ではアメリカ式育児の影響で「おんぶ」などによる親子の肌の触れあう機会が激減し、さらにテレビ・ビデオ・テレビゲームなどの登場により子どもの遊びが屋外の集団行動から室内の一人遊びに変わったため、子ども同士の皮膚接触も非常に少なくなってしまいました。
 現代は「ふれ合い」のない「孤独」な人々が増えており、その寂しさを紛らわすためにギャンブル、酒、ドラッグ、暴食、非行に走ったり、ふれ合う相手として「人間」の代わりに「ペット」を飼ったり、「人形(フィギュア)」や「物品」を買い集めたりするのです。

★ 発達障害(自閉症、ADHD)は対人関係の障害
 発達障害者は「精神病ではないけれどもどこか普通の人と違ったところがある人たち」です。その違いの要点は「社交性」つまり「対人関係」にあります。発達障害は他人とつきあう際の「社交能力」の発達が不十分な症状なのです。
 その「社交力」の低下程度に応じて、重度では「自閉症」となり、中度なら「アスペルガー症候群」その他の「広汎性発達障害」や「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」などになり、さらに軽いと「引きこもり」や「ニート」となるのです。また、もっとも軽症な例として「自己チュー」を挙げることもできるでしょう。

★ 日本の「親子」「夫婦」「社会」における人間関係の崩壊
2000年「児童虐待防止法」制定・・・「親子関係」というもっとも基本的な人間関係の崩壊が多発していることを意味する。
2001年「配偶者からの暴力防止および被害者の保護に関する法律」制定・・・家庭の最小単位である「夫婦関係」に崩壊が起きていることを示す。
2004年「発達障害者支援法」制定・・・「社会性・社交性」に欠けた各種の人々の出現により「社会的な人間関係」が色々な形で崩壊し始めたことを意味する。
 これらはいわば「日本の崩壊を示す三法」とでも呼ばれるべきものです。

★ 世界各国の帝王切開率
 お産に関する訴訟を避けるために防衛的な医療措置として帝王切開が増加しています。
アメリカ:25%以上、韓国:40%(世界一!)、日本:20%

★ 「人工難産」による発達障害児の増加
 正常分娩に麻酔などの医療が介入してかえって難産になることがあります。このようなお産管理法で生まれた子どもに自閉症が多いと日本でも報告されました(Lancet, 1991年、「全身麻酔分娩後の自閉症と発達障害」(熊本大学医学部他))。
 アメリカでは家庭出産から病院出産への移行は1920年代から急増し、1930年代末には病院出産の割合が50%に達し、産科医療も監視や鎮痛剤・麻酔剤の使用率が高まっていったのですが、それと符合するかのように1930年代にチャールズ・ブラッドれーらによって子どもの多動性障害が報告され、1940年代にはカナーが幼児自閉症の症例を、アスペルガーが小児自閉症の症例を発表しました。
 戦後に始まった日本の病院出産はアメリカをモデルとして、①投薬、②麻酔、③器具分娩、④手術、⑤陣痛促進剤などを併用する人工分娩が一般的となりました。

★ 家庭出産が多いオランダ
 先進国の中ではオランダが伝統的に家庭出産が多く、今日でも三割以上が助産師に解除されて自宅出産をしていますが、母子双方の安全性に関する数値は病院出産と変わりなく、ほかの先進諸国に比べても遜色ありません。
 すでに世界の大勢は産科医に管理された受け身の出産から助産師に支えられた主体的な出産へ移行しつつあり、多くのヨーロッパ諸国では妊産婦の選択に基づいて助産師が介助する自然出産が主流となっています。


・・・書いてあることは一理あるとは思います。しかし、小児科医でNICU勤務経験のある私にいわせると・・・・「安全」を優先するなら有事の際に対応可能で小児科医も待機する病院出産の必要性も存在すると思います。「お産は病気ではない」のですが、トラブルは一定の確率で出てきます。明治初期のお産の実態はお産1000件に対して妊婦・新生児死亡などのトラブルが10件以上あったというデータを目にしたことがありますので。


「子どもは和食で育てなさい」

2009年03月02日 07時07分55秒 | 育児
著者:鈴木雅子、株式会社カンゼン、2005年発行。

著者の肩書きは「NPO法人 日本食育協会理事、医学博士」とのこと。
最近よく耳にする「食育」について、一般図書にはどんな内容が書いてあるのか読んでみました。

書名の通り、「和食」の良さを根拠を上げてわかりやすく解説しています。
一言で表すなら「菓子パンにジュースよりご飯に具だくさん味噌汁が好ましい」。
目から鱗が落ちた箇所を抜粋してみます。

★ヒトとサルの食生活の違い
ゴリラやチンパンジーなどは多くが植物性のもので、その種類も限られたものでした。
ところがヒトは動物性・植物性のものを同じくらいずつ食べたのです。ヒトは雑食性の動物と言えます。
雑食により色々な食べ物から色々な栄養素を取ることが可能となり、この結果脳も大きく育てることができました。
つまり、ヒトは約500万年という長い間雑食を続け、動物性・植物性の色々な種類の食べ物を食べて、色々な栄養素を体内に取り入れ、脳や体を発達させていったのです。

★風土はFood(フード)・・・これは他の本でも見たことがあるフレーズですね。
現在の日本人の食卓には世界の食材があふれていますが、ほんの100年前までは身近な食材しか手に入りませんでした。
その食材により体つきも異なってきて世界を見渡すと民族間で体格が違います。
食料がタンパク質やカルシウムの多いものである地域の人たちは体の大きな人種となり、イモ類や穀類などの糖質が多いものであれば身長があまり高くない人種となりました。米類を主食としてきた日本人の小腸は1.5mありますが、肉類を主食にしてきたヨーロッパジンは1.0mしかありません。
日本人の食生活はこの50年間で劇的に変化し、一気に西欧化しました。1000年分の変化である、との説もあります。

★「食育」の語源
「食道楽」の著者:村井弦斎(1863~1927年)が「知育よりも、徳育よりも、体育よりも、食育が大事」と述べたことが始まりです。

★栄養不足と脳の発達
・脳の発達に必要な栄養素が不足すれば、知能が遅れ、精神状態が不安定(イライラする、すぐカッとなる、無気力、集中力が無くなる、ちょっとしたことにも耐えられない・・・)な子どもを作ってしまうことが1970年代の研究で明らかにされました。
・「好きなときに好きなものを好きなだけ食べる」という現代っ子の食生活・・・その内容は高カロリー、高脂肪、高タンパク、高糖質(特に砂糖など)で、ビタミン類とミネラル類それに食物繊維が少ないことが特徴です。ビタミン・ミネラル不足は脳の栄養失調に直結します。

★味覚と偏食
・苦味や渋みなどのあるものには、健康を損ねる物質(アルカロイドなどの毒物が多い)が含まれることが多く、人間には好ましくない味として考えられてきました。ところが、こういう味も人間は少しずつ体験し、害のないものにするという服をして受け入れるようになりました。コーヒー、お茶、チョコレート、山菜などの飲食物がそうです。今でもこの味は、それぞれのヒトが少しずつ体験して初めて受け入れるようになります。母乳は乳糖が含まれほのかな甘い味。赤ちゃんはにがい味のものを初めて口にすると吐き出します。
・・・苦いピーマンが嫌いなのはワガママではなくて本能によるものなのですね。

★運動による消費カロリー
・体重を1kg減らすには6000キロカロリーの消費をする必要があります。これを運動でやろうとすると、
  テニス  :12~20時間
  クロール :6~10時間
  ジョギング:10~12時間
 と大変なことになります。

★子どもの便秘は食事で治す
・子どもの便秘のほとんどは繊維の少ない食生活が原因です。「かまないで飲み込む」食品の特徴はほとんど線維芽服kまれていないことです。繊維の多いものとして海藻類、豆類、キノコ類、イモ類、野菜類があります。
・昭和25年と平成10年の日本人の食生活を比較すると、肉類は2.5倍、油脂類は7倍弱、乳製品は3.2倍に増えています。増えているのは皆食物繊維が乏しい食品です。
・食物繊維は水に溶けるものと溶けないものとがあります。溶けるものとして次のものがあります;
  果物中のペクチン:ジャムをイメージしてください。果物中の食物繊維はわずかです。
  海藻中の多糖類:昆布などを水に入れておくと溶け出てくるドロリとしたもの
 便秘予防には溶けない食物繊維の方が効果的です。
・野菜サラダでは思っているほど食物繊維は摂れません(湯通ししたり炒めると量がほんの少しになりますね)。火を通してかさを減らしてできるだけ量を多く食べられる方法(ギョウザ、ハンバーグに入れるなど)がよいでしょう。
・食物繊維の効用は便秘の予防に限らず、大腸癌の予防、高血圧、動脈硬化、糖尿病、肥満の予防と色々です。さらに食物繊維は腸内で有害物質を吸着して便と一緒に体外に排泄するという大事な働きもあります。

★不足するカルシウム
・現在の日本では、牛乳の消費量が少なかった50年前より骨折するヒトの数が倍以上多い。
・1週間寝たきりでいると全骨量が1%減る。

★ペットボトル症候群
糖分の多い清涼飲料水を1日に何リットルも飲んでいると高血糖を起こして脱水症状になります。するとさらに喉が渇くのでペットボトルを抱えて飲むことになり、この悪循環から高血糖が悪化して意識障害をきたすのです。
小さい頃から甘いものばかり食べさせていると味覚が十分発達せず、フランスで言う「味覚の障害者」になってしまいます。その結果、大きくなってからも甘いものが中心の食生活になりがちです。

★日本型食生活の勧め
日本の米の生産は縄文時代に既に始まっていたそうです。米は雨の多いこの国の気候によく合った作物で、収穫量が多く味の良い優れたものです。
米の栄養価は、白米でも良質なタンパク質が6.8%も含まれ、タンパク質の良さを決めるアミノ酸スコアは穀物の中では日本そばと並んで65という最も高い数値を示しています。脂質は玄米で約3%、白米で1.3%、さらにミネラル類としてカルシウム、リン、鉄、ナトリウム、ビタミン類はB1、B2、ナイアシンなどが含まれています。
この米を主食に、野菜類、豆類、魚介類、海藻類などを組み合わせ、日本独特の食文化を形成し、江戸時代後半には日本型食生活の基盤が完成しました。
食パンと比較すると、同じ100グラムの持つカロリーはパン264キロカロリーに対してご飯は148キロカロリーです。

★マクガバン・レポート
1977年アメリカの国民栄養特別委員会が発表したレポートで、その内容は「増加する生活習慣病のガン、心臓病、肥満などを減らすために、肉と砂糖を大幅に減らし、穀類と青野菜を摂るべし」という警告です。そして理想は「昔の日本食」と指摘しています。
その改訂版では子どもの食生活にも言及しています。
「現在あまりにも多い添加物などのchemical agents、脳の栄養バランスを崩すような加工食品の急増、また食品の過度な加工によるビタミン、ミネラルの不足、こうした様々な現代社会に特有の食品環境は子どもの頭脳と心の働きを崩すことが明白となった。現代社会では間違った食事によって子ども達の心まで狂わされている。しかし食事内容の改善は子どもの心を健康に導くことができるしその方法もわかってきている。」

★ADHDと食生活
1973年、アメリカの免疫学者B.ファインゴールド博士は「暴れる、イライラする、勉強が嫌いという状態は食事に含まれる合成添加物が原因」というレポートを発表しました。これに基づき、合成着色料・酸化防止剤・サリチル酸などを除いた食事に変更すると子ども達の「いらつく」行動を50%以上改善させることに成功しました。

★食品添加物について
現在日本では化学合成添加物が345種類、天然添加物が488種類許可されています。
私たちは毎日10グラム、約60種類の食品添加物を食べているそうです。

★遺伝子組換え食品
ある作物に他の生物の遺伝子を組み込み、外注や農薬に強くしたり栄養素を増やしたりしたものが遺伝子組換え作物で、この作物を原料にして作られたのが遺伝子組換え食品です。
近縁種(種類が似た作物)同士を交配して品種改良したものはこれまでにもたくさん作られていて問題ないのですが、遺伝子組換え作物というのは種類の違う生き物、微生物と農作物などの間で遺伝子を入れ替えているのです。
このように生物の間で異種の遺伝子が入れ替えられることは、自然界では絶対にありません!
何が起こるかわからないのです。

★輸入食品の問題点「安全より経済性」
日本の法律では農作物に対し246品目の農薬が残留しているかどうか調べることになっています(2005年)。
外国から遠い距離を長い時間をかけて運ぶ必要のある食材を腐らずカビないよう鮮度を保とうとすると、どうしても薬品を使うことになります。冷凍・冷蔵はコストがかかるため品物が高くなり、薬品の方が安上がりというわけです。
ここで特に問題なのは、日本に輸出するために収穫後もさらに農薬を使っていることで、これを「ポスト・ハーベスト・アプリケーション(収穫後の使用)」といい、一般的にはポスト・ハーベストと呼ばれています。

★フード・マイレージ
輸入食材をわかりやすく比較する方法として考え出されました。
「食料輸入量」×「生産地から日本までの距離」で表されます(単位はトン・キロメーター)。
遠いところからたくさん食料を輸入するとそれだけ高い数値になります。
2001年の日本のフード・マイレージの総量は9000億トン・キロメーターでした。世界の中で最高値であり、フランスは日本の約1割という結果でした。

★野菜ジュースは体に良い?
100%野菜ジュースは大変体に良さそうですが、「これを飲んだから野菜は食べなくてよい」と考えないでください。ビタミンやミネラルはともかく、ジュースでは食物繊維が十分に摂れません。入っていたとしても水に溶けるタイプの繊維だけなので、質的にも量的にも不十分です。「飲まないよりまし」程度の位置づけであって、野菜ジュースだけでや佐産即を解消することはできないことを覚えておいてください。

★ファーストフードの正体
ファーストフードはビタミンやミネラルなどの微量元素が不足しています。
子ども達に人気のハンバーガーの特徴は脂質が多いことです。自分でハンバーグを作ってみればよくわかりますが、ハンバーグは本来あんなに柔らかいものではありません。脂質が多量に含まれているから柔らかいのです。

★トンカツ屋のキャベツ
トンカツ屋さんのキャベツは妙にしゃきしゃきしていることがあります。千切りにしたキャベツを水にさらしているからです。こうすると栄養素が水に溶け出して大幅に減少してしまいます。こんなキャベツをたくさん食べたとしても、摂れるのはわずかの食物繊維と水だけといっても良いでしょう。

「やすらぎ子育てアドバイス」

2008年12月01日 00時27分27秒 | 育児
こころの名医が教える「やすらぎ子育てアドバイス」ー「自分が好き、親が好き」な子は必ず伸びる!
佐々木正美著、三笠書房(知的生き方文庫)、2007年発行

久しぶりに佐々木先生の著書を読みました.
今回も「ウンウン」頷きながら読み終えました.
思い起こせば、もう5年以上前に「子どもへのまなざし」「続・子どもへのまなざし」を読んで感動し、私にとって子育てのバイブルとなっています.

子育ての根っこは「そのままでいいがな」という相田みつをさんの言葉に凝縮されると記されています.
ホント、その通りだと思います.
子どもの存在を受け止めてあげられれば子どもは「自分は大切にされている」ことを実感し、「自分は大切な存在なんだ」と自己肯定感が育まれていきます..
でもそれが今の大人はできないんですよねえ.
子どもに自分の理想を押し付ける親はいつもイライラ.
子どもにやかましく言うのは「子どものため」というよりは「親の自己満足のため」なのです.
そのように育てられた子どもには「自己否定感」が芽生え、これは一生厄介な存在となります.

佐々木先生の本を読むと「自分という人間の成り立ち」にハッと気づかされることがあります.
今回は体罰についての記憶が甦りました.

小学生のとき、担任の先生に殴られたことがありました.
理由はちょっとしたこと(ラジオ体操の終了後に整列が遅れた)なのですが、ツカツカと近寄りいきなりガツッと.
何が起きたのかわかりませんでした.
元々「口より手が早い」先生だと噂されていたようです.

その先生の思い出はこれしかありません.
思い出そうと思っても、何も出て来ないのです.
「体罰はトラウマを残す」という意見に頷く私.

佐々木先生は体罰を無条件に否定していません.こう書いています.
「信頼している人から叱られても納得できる、しかし信頼していないヒトから叱られると敵意を抱く」
そうだったのか・・・私はその先生を信頼していなかったんだ.
確かに信頼している恩師に叱られても、反省はすれど反発はしないなあ.

それから世間をにぎわす少年犯罪について.
「こうした事件が起こるたびに、家庭での幼児期のしつけができていなかったからだとか、親が過保護に甘やかし過ぎたからだという人がいます.」
「しかし、それはむしろ逆なのです.親が自分の期待を無理に押し付け、子どもの自尊心を傷つけているからなのです.そのように育てられた子どもには自己否定感が生じ、社会を破壊することにひそかな喜び、いわゆる屈折した自虐的喜びとでも言うしかないような感情をつくってしまいます.少年犯罪の背景には、非常に厳しい母親、過剰期待する母親がいるケースがよくあります.」

例えば、オウム真理教の信者.
佐々木先生は3名の信者と面会したことがあるそうです.
皆、親が「自分の勲章になるような子ども」にしようと一生懸命育ててきたのだな、と感じ、実際に彼らの親と話してみると肯定して悔いていたそうです.

最後に女性に向けて.
「最近は男女平等にばかり気を取られ、育児に価値を見いだせなくなってきているお母さんたちが多くなってきているようです.こんな割の合わない仕事を押しつけられてイヤだ、と.確かに子育ては収入に結びつかないかもしれません.でも、自分がどう生きるか、よりも、次世代の人々がどう生きるか、を思いやれる生き方のほうが人間的価値があると思います.」
御意!

「子どもの心のコーチング」

2008年10月13日 14時17分44秒 | 育児
「子どもの心のコーチング」ーハートフルコミュニケーション・親にできる66のことー
菅原裕子著、2003年、リヨン社発行(二見書房発売)

これは数多ある子育て本とは一線を画す、ちょっと毛並みの違う子育て本です.
著者の元々の仕事は「人材開発コンサルタント」です.ご存知のように組織や企業において、社員の潜在能力を伸ばし、より働きやすい環境を作る仕事ですね.人の能力を開発する事を「コーチング」と言いますが、それを子育てに当てはめたらピッタリだったというのが「ハートフルコミュニケーション」という活動であり、ずばりこの本の内容です.

とういわけで、少々違和感を覚える導入部分ですが、読み進めるうちに頷ける事がたくさん出てきました.
感情論に走りがちな「子育て」論を分析してコーチング理論として再構築しており、むしろその展開・解決法は見事と言うほかありません。

子育てで陥りやすい間違いは「子どもは教えなければ何もできない」という認識.
逆に「子どもはなんでもできる可能性を持っている、親はその過程を見守るだけ」と考えると全てが上手く回転しはじめる.
・・・確かにそうですね。

「ヘルプ」と「サポート」の違い.
「ヘルプ」 → 「できない」人のために、その人に代わってやってあげる事.保護者がするヘルプは親の自己満足でありその時に愛しているのは子どもではなく親自身でしかない(グサグサッ).
「サポート」 → 人を「できる」存在と捉えてそばで見守り、より良くなるために必要な時に手を貸す事.サポートこそが親の仕事.
ここまで言い切られると困ってしまいますが、真実をついていると思います.

他にも「なるほど!」と感心した文言がたくさんありました.
・子どもは、親がこうしろと言う子どもにはなりません.親がやっている通りの子どもになります.
・子どもが育つプロセスには母性と父性の両方が必要.包み込んで優しく愛する母性(そのままの自分が最高だと教える母性)と、距離を置き本来学ぶべき事を学ばせる父性(自分を抑制することを教える父性)です。母性と父性が一つになった時、子どもの自立は促されるのです.

また、「聞く技術」のところでは、自閉症に行う教育プログラムである「インリアル・アプローチ」を思い出しました.
その基本は「SOUL」
S:silence・・・静かに彼が話すのを待つ
O:observation・・・彼が何を考えているのか観察する
U:understand・・・彼の事を理解しようとする
L:listen・・・彼の話を聞く
すると、自発的な行動、言葉が生まれてくるのです.共通するものがありますね.
「待つこと」「聞くこと」・・・親が苦手なことです。その前に「ひとこと」言ってしまうことの方がなんと多いことか。

しかし、現在社会をにぎわす子ども関係の問題が、子育ての姿勢を見直すことで解決するのでしょうか.
「話を聞いて気持ちを受け止める事が大切」と書いてありますが、受け止める側の母親自身はどうでしょうか.
彼女が夫に「話を聞いて気持ちを受け止めて」もらっていないと難しいのではないでしょうか.
その夫はどうでしょう.会社で自分の考えを受け止めてもらい充実した仕事をできているでしょうか.ストレスまみれの中間管理職だったら家庭に帰り妻の話を聞く心の余裕なんてないのでは?
 つまり、現代社会が「人の話を聞けない」心の余裕のない状態です.社会が病んでいるとそのツケは弱い子どもにのしかかるのだと思います.