櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

息をきく場所(ほびっと村学校のための記事)

2021-04-12 | レッスン・WSノート
 

《踊り入門》というタイトルで舞踏クラスを担当している「ほびっと村学校」のために書いた文章があり、ご紹介させていただきます。

 成果主義にならない、結果を急がない、味わう稽古というか、とにかく「自分なるもの」と思い切り「ゆっくり・緩く・のんびり・じっくり」向き合う、ある意味で実験的なダンスのレッスンを、ここで続けていて、心に残る瞬間に何度も出会ってきました。

 

 

photo=ほびっと村学校(この奥のドアを開けると畳敷きのスタジオになっています)

 

ほびっと村学校と私 第1回『息をきく場所』  

書き手:櫻井郁也(ダンサー、舞踏クラス講師)

  僕にとってここは息をきく場所です。踊りのクラスを開いているせいか、ここに来ると、いろんな呼吸がきこえてくるような感じがしてなりません。きっと、いろんな人の息が染み込んでいるんだと思います。ここには面白い歴史があり、色んな人の気配や温度が残っています。落ち着く場所です。

 自由学校とでも言えばいいのでしょうか、ちょっと寺子屋みたいかも。あるいは道場みたいな、寄り合い所みたいな、いや、そのどれでもなく、そのどれもでもあるのかしらん。ふだんは何かしらの講座やレッスンが行われていますが、トークやミニコンサートにも、プライベートな話し合いなどにも、いいかもしれません。畳のお部屋の白い天井には月や星が浮彫りになっていて廊下の窓は星のカタチ。数人でのんびりするのも良し、みんなで熱気(あ、いまはちょっとがまん?)も良し、という空間です。

 僕がここで舞踏クラス〈踊り入門〉を始めたのは2007年春、前年にポルトガルでおこなったダンス公演とワークショップの指導経験が原点です。遠い国で、人生の一日一日を心から楽しもうとしている人々と出会い、こんなふうに心を開いておおらかに踊り楽しみ合う場を、舞踏が生まれたこの東京にも開きたいなあ、と思ったとき、この「ほびっと村」のお部屋がふとアタマに浮かんだのです。

 「ほびっと村」とは3回出会いました。上京スグ、初めての子育て、そして、上記のクラス開講、いずれも僕には変化のときでした。

 初めて訪れたときは、このビルの階段が気に入りました。1階から3階までの手すりに隙間なく、びっしりと珍しいチラシが吊り下げられていました。あらゆる種類のワークショップの、図書の、映画の、舞台やライブのチラシ。それを手に取って眺めているだけで、ちょっと世界が広がってくるような感覚がしました。

 ネットがまだ無くて「街」が情報そのものだった頃、たしか1983年の春でした。寺山修司が亡くなり、土方巽が最後の舞踏シリーズを始め、新宿では唐十郎の赤テントがまだまだ評判で、芝居も踊りも言論も、いいえ、世の中全体が、良くも悪しくも大きな転換期を迎えていました。

 2回目の出会いは初の子育てのとき。阪神大震災のあと地下鉄サリン事件が起き、世の中がぐらつき始めていたなかで、安全な食べ物をさがし、信頼できる子育てや生活の智慧をさがしたのです。

 そして3回目の出会いがクラス開講です。僕はすでに舞台活動をしながらあちこちでレッスンを開いていましたが、上述の海外経験を通じて、よりユルくて、より振れ巾のある、「教室」というより「踊り場」を開きたくて、ここを訪ねました。

 明確でないもの、あいまいなもの、定まっていないもの、ぼんやりしたもの、めちゃくちゃなもの、だけど、なんだか気になるもの、そのような、ある種のカオスに光を当てることができる場所。泣く人も笑う人も、いっしょくたに居ることを受け止めてくれる空間。いつでもフラリと踊りに来れる場所。

 そんなイメージを勝手に思いえがいて、それでクラスを開かせていただき今に至るのですが、世界はとてつもなく変化し始め、あの東日本大震災をへて、いまこのコロナ禍に直面し、もう大変なことになっております。

 危機をいかに乗り切るか、いかに復活してゆくか、いかに人間らしく手をつなぎ直すことができるか、というこの時期に、あれこれアタマを悩ませながら、この、まとまらぬ文章を書いております。書きながら、思います。ほびっと村学校、この場所で試行錯誤されてきた底知れない学びや遊びや行為や対話について、それらを通じてこの場所に息づいてきた無限無数の思いや言葉について、、、。

 アタラシイ◯◯、とかいう言葉がちまたを跋扈して久しいけれど、世の中はこれからどうなるのかなぁと、すこし不安でもあります。「ほびっと村」も「ほびっと村学校」も、今はとても大変なのですが、これからは、こういう自由のための自由な場所が、本当に必要な時期が来るように思えてなりません。

 コロナがやわらぎ、本当に色んな人が、一人また一人と集まって、真剣に世の中や人間の未来を探して話し合ったり、楽しく学びを広げていくことができる日に向けて、がんばってこの場をつないでいかなければと、とてもとても思います。ぜひぜひ、遊びに学びに、おいでください!! (ほびっと村学校公式HPより転載)

 

 

 

 

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stage 櫻井郁也/十字舎房:公式Webサイト

次回公演(2021年7月)の開催情報を掲載中です。

 

lesson 櫻井郁也ダンスクラス 

スケジュール・予約   

平日昼間のフリークラス(火・14時)が加わりました。

 

 

 

 

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