櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

藤井健仁展(日本橋・高島屋)

2016-07-03 | アート・音楽・その他
彫刻家の藤井健仁の展覧会が日本橋高島屋で開かれている。素材は鉄ばかりで30年は経つ。広い世の中で向き合い寄り添い続けるべき何か一つのことを見つけて続けている人の仕事だ。もはや鉄の男である。
鉄は血中成分であり資源であり建築や工業や武器にさえ欠かせない、言わば外側の身体だ。
そのせいもあるのかどうかわからないが、藤井の場合、作品が作家の身体の延長と見えてくることがフッとある。藤井は僕には初公演の舞台美術家でもあり、かつ長い悪友だが、日頃から狂気や諧謔が奇妙なダンディと混在する男で、その熱が作品になるのか、彫刻と玩具と叛逆がないまぜになった作品を量産する。叩き、火で溶かし、また叩く。叩き出されネジ止めされる幻は、総じて一種の笑い声を滲ませている。テロリスト・政治家・スター・愛猫・女子高生・スカート・自転車・ハンマー、など変幻自在のモチーフは議論や人気を挑発したが、今回それらに加えてサイコロ大の極めて小さな作品があり、それは何のカタチにも未だ成らない、どろりと溶けて固まった鉄のカケラが一つポツリとガラスケースに収めてあるのだったが、僕には藤井の面白さがその小さく危うい「何か」に密集して見えた。向き合う素材に対する、ある種の畏敬さえあるのは異形をまといながらも彫刻家のクラシックを継ぎ、芸術家でありながら仕事師の心をもつ藤井独特の優しさかもしれない。鉄たちは藤井に鋳造され油で磨かれながら、しかしすでに淡く錆びを予感させ始めている、つまり、サクヒンという何かを担いながらも鉄は鉄自身を生き続けていて、生成されながら同時に朽ちてゆこうとしているのだ。笑い声をたてながら危うさとエロチックな滑らかさを纏う鉄の化身ども。作品によっては鉱物と動物の境目が、あるいは生起と崩壊の境目がぼやけて無情を誘う。
ご紹介が遅れ明日7/4までになってしまったが、お買い物のお供に、ぜひ目撃されたし。
藤井健仁展「GIRLSLIFESMITH」
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