12月も中旬を過ぎると、一気に年の瀬を感じてくるものです。こういった雰囲気には、やはり「第九」が似合います。この時期、あちこちで演奏会が行われており、年末の風物詩の如くになっています。19世紀ベートーベンが、肉体の困難さと闘いながら、創り上げた人類の進歩の賛歌「第九交響曲合唱」は、今尚我々に感動を与えて止みません。この名曲は幾多の演奏家による作品がある中、フルトベングラーの指揮による演奏で聴くのが、格別です。まさに空間芸術の最高の醍醐味です。この名指揮者は、祖国ゲルマンの精神の捉え方で、独裁者ヒトラーと内面的に戦い抜き、第二次大戦後戦犯の汚名から立ち上がった人で、いわゆる「政治と芸術」といった問題の議論で、登場してきましたが、現代にその真価が、定まっていると思われます。
それにしても、今の「耐震構造偽造事件」に見る惨状に見るに、人類の進歩どころか尊厳までもが、どこへ行ってしまったのでしょうか。人権を戦い取るといった歴史を持たないわが国での、思考の貧困さから行き着ついた最低限のモラルの欠如の問題といえましょう。骨抜きマンションを売った悪事がばれても、まだ言い逃れようとする金満家の醜態を見るにもはや恥ずかしさを覚えます。