著作権法

著作権法についてしっかり考えてみませんか。

デジタル・コンテンツ法

2006-07-03 03:18:10 | Weblog
 ■「デジタル・コンテンツ」新法の提案

 日本経済新聞の「経済教室(6月30日)」や「試される司法(7月2日)」に、デジタルコンテンツ法についての提案が掲載されています。コンテンツ流通の円滑化や昨今のデジタル化への対応ということで、任意の登録制度を新設し、一定の権利制限等を行うことによりデジタルコンテンツの利用の促進を図ること等をその骨子としているようです。
 確かに、デジタル化・ネットワーク化が急速に進展するなか、社会が求める著作権の秩序と、実際の著作権制度との間には乖離が生じており、そうした乖離は解消されなければならないものだと思います。そのための方策として提案されているのが、このデジタル・コンテンツ法なのでしょう。そのような法律を作るべきだとするその動機には私は大いに共感するところですが、具体的なその法律の中身となると、もっと十分な検討が必要ではないかと思わずにはいられません。

 ■コンテンツホルダーのみの意向で他の権利者の権利が制限されることは、問題

 法律は、登録を任意として、登録されたコンテンツについて一定の条件の下で自由に利用できるようにすることを狙っているようです。しかし、コンテンツには映画や放送番組の場合には非常に多くの権利者の権利が絡んできますので、コンテンツホルダーのみの意向でコンテンツが登録され、その利用に関し権利者の権利が制限されて利用が促進されるとなると、それは著作権の国際条約に違反することは間違いないと思います。したがって、登録の際にすべての権利者の権利がクリアされていることを要件とすべきであり、そうした権利者の同意がないと登録できないようにしなければならないと考えます。

 ■「登録制度」は魅力的か?

 もちろんこのような登録制度は、意義はないわけではないでしょう。しかし、どれほどのコンテンツが登録されることとなるのでしょうか。
 あちこちで使ってもらいたいと考える素材の創作者は、登録するかもしれません。しかし、放送番組など幅広い2次利用がもとめられているコンテンツは、登録されないでしょう。放送番組の権利を持つ放送事業者にとって登録するメリットはまったくないのですから。登録のコストもありますし、そもそも放送番組を利用しようという気がないのですから・・・・

 ■重要なのは、最初にしっかり取り決めておくこと

 放送番組の円滑な利用を考える場合には、結局のところ、番組にかかる権利者の権利をクリアしておくことと、コンテンツホルダーがコンテンツの2次利用をしようとする意思があるかどうかがポイントとなります。新たな登録制度が、これらのポイントを解決する手段になるとは思いません。結局のところ、番組制作の際にどれだけの番組利用を想定するのか権利者との間で決めておくのかということと、コンテンツホルダーが2次利用したいという環境を整えることが最も重要であると考えます。前者の問題の解決のためには、私は番組制作と放送にかかる特権を有する放送事業者のその特権をなくして、番組制作時にしっかり番組の利用について関係権利者との間に契約が取り交わされるようにすることと、番組の権利を放送事業者が保持している状況を改め、外部委託して制作された番組については、実際に製作した者が権利をしっかり保持できるようにすることが重要と考えます。
 登録制度があることで問題の根本的な解決になるというわけにはいかないように思います。国際条約に反しない形で、そこにどのような効果を付与するかが、重要であると思えます。