COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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国内メディアが報じない一大事が福島に迫る中でのオリンピック招致に苦言

2013-10-21 15:09:59 | Weblog

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目次
1.はしがき
2.ワッサーマン氏が報じた深刻な状況
3.安倍総理、ついに国際的協力の必要性を表明
4.過去と未来のオリンピック
5.何でこの時期にオリンピックなのか
6.あとがき
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1.はしがき
 国内の大マスコミはほとんど報道しませんが、アメリカの歴史家で反核の戦略家、活動家でもあるハーヴェイ・ワッサーマン(Harvey Wasserman)氏は海外メディアに福島第一原発4号機の深刻な状況を深く憂慮した記事を掲載し、国連とオバマ大統領に世界的科学者、技術者を動員するよう嘆願書を送りました。本稿ではワッサーマン氏の記事の概要を紹介したあと、オリンピック競技大会のあり方と、このような状況にある東京に2020年の大会を招致することへの疑念を述べてみました。

2.ワッサーマン氏が報じた深刻な状況
 9月20日付のグローバルリサーチに、ワッサーマン氏は福島第一原発4号機の深刻な状況を深く憂慮した記事(原題:Humankind’s Most Dangerous Moment: Fukushima Fuel Pool at Unit 4. “This is an Issue of Human Survival.” The world community must now take charge at Fukushima)を掲載し、国連とオバマ大統領に世界的科学者、技術者を動員するよう嘆願書を送りました。嘆願書は英文ですが、こちらのサイトにアクセスして、氏名、e-mail、国籍、住所を入力して送信できます。原文も勿論英語ですが、枝廣淳子さんが配信している[enviro-news 2262]にその概要が紹介されています。本稿では原文参照の上、[enviro-news 2262]掲載の概要に若干の加筆を行ったものを以下に挿入します。
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 キューバミサイル危機以来の最も深刻な危機が、2か月以内に起こる可能性がある。東電が、60日以内に、福島第一原発4号機の燃料プールから1,300本以上の使用済み燃料棒を取り出す作業を開始するからだ。地上約30メートルにあるプールとそれがある建屋の両方とも損傷が酷く、次の地震で容易に崩壊する恐れがある。プール内の約400トンの燃料から広島原爆のときの1万5,000倍を超える放射線が放出されるかも知れない。
 ジルコニウム合金で被膜された使用済み燃料棒は、空気に触れると発火する。被膜が失われた燃料棒から放出された放射線を近くで被爆すれば数分以内で死に至る。火災が起きれば全員避難せざるを得ず、電子機器の運転ができなくなる。
 燃料棒取出し作業は技術的にも科学的にも非常に難しいが、100%完璧に行う必要がある。失敗すれば燃料棒が空気に触れて発火し、恐ろしい量の放射線が大気中に放出される。プールが落下崩壊すれば、プール内の燃料棒で核分裂が起こって爆発し、発生した放射雲が全人類の健康と安全を脅かすかも知れない。東電にも日本政府にも安全に燃料棒取出しを完結させる実力がないことは確かだ。喫緊の課題はできるだけ早く安全に燃料棒を取り出すことであり、そのために全世界が協調して最高の科学者や技術者を動員しなくてはならない。
 また、東電は原子炉へ冷却水注入を続けており、数千トンもの高濃度放射能汚染水が発生している。汚染水は4号機の燃料プールを支える構造物をはじめ、福島原発の残存構造物を蝕む一方、太平洋にも流入している。汚染水の大半は原発構内の急拵えの巨大タンク約1,000基に保管されているが、すでに汚染水漏れを起こしたタンクもあり、次なる地震で全てのタンクが壊れ、半減期の長い放射線物質を含む数千トンの水が太平洋に流入するかも知れない。
 4号機からわずか50メートルにある脆弱な共用プールには、現在、プルトニウムを含む核燃料集合体6,000本以上が保管されている。このプールを格納する設備なく、冷却水のロス、周辺構造物の崩落や自然災害に無防備である。福島原発には、1万1,000本超の核燃料集合体が散在し、放射性セシウムの量はチェルノブイリの85倍以上になるとも言われる。チェルノブイリからの最初の放射性降下物は、10日以内にカリフォルニアに到達した。2011年の福島の事故の後は1週間もかからなかった。4号機で新たな燃料火災が起きれば、生物を死に至らしめる放射性物質が数世紀にわたって放出され続けるかもしれない。
 これは世界中の環境と人類文明の破壊につながる、人類の生存にかかわる問題だ。そして、行動するための時間は2か月もない。目下、私たちは、燃料棒を安全に取り出すために世界的な科学者・技術者を動員するよう、国連と米国のオバマ大統領に嘆願している。
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 ワッサーマン氏の記事は、人類の命運がかかっている4号機の燃料取り出し作業にも紹介されています。

3.安倍総理、ついに国際的協力の必要性を表明
 ネット上に掲載されたInternational Business Times邦訳版「原発汚染、ついに世界に協力を依頼 2年半後・・・遅すぎる日本の対応(Reporter Name: DAVE SMITH 翻訳者: 加藤仁美 | 2013年10月9日 0時51分 更新)によれば、日本最大規模の国際会議となる「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)」第10回年次総会が6日、京都市の国立京都国際会館で開かれ、開会式に出席した安倍首相は、汚染水処理が難航している東京電力福島第1原発事故への対応について「みなさんの知恵と専門知識を必要としている」と述べて国際的な協力を求めたそうです。9月上旬に、2020年の夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定された後、首相は福島の状況は「制御下にある」と繰り返し国際オリンピック委員会に語りました。しかし6日の演説の中で、首相は福島が「制御下にある」という確証は何も示さなかったそうです。国際的協力依頼といっても政府が前面に立って実態は東電任せでは効果を期待できないでしょう。政府が一歩も二歩も下がって、国際急力チームに全権を委ねるような体勢つくりが急務でしょう。

4.過去と未来のオリンピック
 日本が高度成長前の1964年に開催された第16回オリンピック東京大会では、新幹線を初めとした様々なインフラ整備がその後の国民生活に便宜を与えました。北朝鮮の大会直前参加取止めがありましたが、それまでで最多の93カ国が参加しました。当時分裂状態にあった東西ドイツは、ベートーベンの第九交響曲合唱部分を国歌にした統一チームとして参加しました。大会期間中に独立したザンビアの選手団が、閉会式で新しい国旗を掲げ、颯爽として行進した姿が思い浮かびます。テレビの衛星放送がなかった当時、肌色の違う選手達が様々な色彩のユニフォームを着て競う姿を目の当たりにしたり、各競技場で表彰式に掲揚される国旗と演奏される国歌に並み居る観衆が自然に立ち上がって敬意を表したりしたことは、お金の額では計れない啓発効果を生みました。今のように商業主義にスポイルされない、素晴らしい大会でした。
 衛星中継による国際放送が当たり前で、情報が一瞬で飛び交う2020年の世界、商業主義にどっぷり浸かった大会は随分違ったものになるでしょう。安倍首相のウルトラC発言で、東京が2020年オリンピック開催権を獲得し、関係業界は沸いています。様々な施設やインフラの新設や整備による巨大な経済効果が期待されるからです。しかし、新国立競技場構想には著名な建築家達から疑問が提示されました。それほど巨大な施設が必要かという疑念と、明治神宮外苑の景観保全の観点からです。筆者は現国立競技場建設前の、明治神宮外苑陸上競技場と前日本青年館が、競技場内や周囲の緑とマッチした景観がまぶたに浮かびます。鉄筋コンクリート造りの建造物は完工時に壮大に見えても、50年もすれば相当老朽化が進みます。筆者は都の職員時代、東京都の建物は30年で建替えになると聞きました。土建業界には随分美味しい話です。都の財政事情が後退してからは、その通りには進まなくなりました。バブル期の1990年、鈴木元都知事が執念で約1500億円の巨費を投資して建設した東京都庁舎は、15年で雨漏りなど不具合が目立ってきたそうです。補修しようにも独特なデザインのため余計な手間がかかり、全面改修には庁舎を造り直せるほどの金がかかるそうです。2020年の大会に向けて新設された施設が、大会後に巨額の維持費を食い物にしないか懸念されます。

5.何でこの時期にオリンピックなのか
 懸命に招致活動に邁進し、招致成功で大いに盛り上がっているアスリートの皆さんには大変申し訳ないのですが、2020年に東京でオリンピック大会を開催することは本当に適切でしょうか。前述のように福島の状況は安倍総理が強弁したこととは程遠い状況にあります。その尻拭いのため酷使される、現場作業員の健康と人権が大いに懸念されます。現場の実態を体験せず、快適なオフィスで行程表を立案している人々には、琵琶湖疏水工事を指揮した田邊朔郎氏のような作業員に対する心遣いを持ち合わせて欲しいものです。華のある仕事になりませんが、1964年の大会当事に整備されたインフラの老朽化対策も急がれます。加えて、都市直下型地震や、激化する豪雨災害が有明など臨海地域に大災害をもたらす可能性も深く憂慮されます。筆者は2020年の大会は返上、開くにしても規模を縮小したものにすべきではないかと考えます。返上なんてとたじろぐ必要はありません。東京は1936年に獲得した第10回大会の開催権を、日中戦争(当事は支那事変と呼称)の長期化を理由に、1938年に返上したのです。

6.あとがき
 第10回大会の代替地はヘルシンキに決まりましたが、第二次世界大戦の激化で中止やむなきに至りました。1964年の第16回大会の東京開催は、10回大会の返上を心底から悔やんだ人達の懸命の奔走で実現されたものです。2020年の開催権を返上し、幾年か後に福島の状況を安全なものにしたうえで招致が叶えば、素晴らしいオリンピック大会になるでしょう。

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