COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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日本のコシヒカリ生産を支える種もみ栽培農家

2006-10-23 00:37:07 | Weblog
 たべもの新世紀という番組がある。国内のいろいろな優良農産物と、たゆまぬ生産者の工夫と努力を紹介しており、日本でこんなに素晴らしいものが作られているのかと、見ていて感銘を覚える。22日早朝には、富山県入善町の種もみ栽培農家が登場した(27日(金)12:00-12:35 NHK教育で再放送有り)。日本の伝統的食品の生産について、今まで知らなかった面を見た思いなので、その概略をまとめてみた。
 伝統的農業では、農家が翌年に蒔く種もみを取っておいたが、近年のブランド志向で8割近くの農家が、種もみを買って使うようになった。富山県には5ヶ所の種もみ産地があり、県内は勿論、東北から九州までの36都府県に供給する全国一の産地である。
 50年前、品種交配で作られたコシヒカリの場合、大元の種もみは全国34ヶ所の農業試験場にマイナス15度Cで冷凍保存してある。富山県の場合、県の農業試験場から1年に350g供給される大元の種もみを、厳密に管理された圃場で栽培し、150kgの種もみ(原々種)を作り、これを栽培して作った20トンの原種を種もみ農家に供給している。肥料、農薬使用などの栽培手順も細かく決められている。
 入善町では、町の農協が優れた技術を持つ人を選んで、種もみ栽培を任せている。種もみには、90%以上の発芽率のほか、他品種の混入と伝染性病害の両方とも無いことが求められる。番組で紹介された若手生産者は、通常の米つくりより少なく苗を植えることで、稲が密集して伸びすぎないようにしている。伸びすぎたコシヒカリは稔ってから倒伏しやすく、倒伏すると食用に問題なくても発芽率が落ちてしまうそうである。稲が穂をつける真夏の陽射しの中を、毎日長時間かけて稲を見回り、様々な原因で紛れ込んだ他種の稲を見分けて取り除く。8月中に県担当者による圃場審査が2回あり、問題が見つかると種もみとして出荷できなくなったり、栽培担当から外されたりする。
 収穫前に刈り取り用コンバインの内部を、一粒の種もみも残っていないよう丁寧に掃除しておく。収穫後は10月の生産物審査で異品種の混入と発芽率がチェックされ、12月の農産物審査で外観、汚れなどがチェックされる。
 種もみは農協で生産者ごとに別々に包装され、後で調べる必要が生じた時の為に、サンプルが保存されている。最近は消費者に生産者の顔が見えるような関係が求められているが、種もみ農家と一般生産農家の間でも追跡可能なシステムが作られている。美味しいコシヒカリ生産には、種もみ生産農家のたゆまぬ努力があったのである。
 話は変わるが、鶏卵はどう生産されているかというと、米国の会社が日本の細かい要求に応えて品種改良したひな鳥(種鶏)を輸入して育て、その交配で生まれたひなを育てて生ませた卵が大量生産されているのである。種鶏同士を交配しないとよく卵を産む鶏は得られないから、種鶏を輸入し続けねばならない。飼料も輸入に依存している。残念ながら、これが国内自給率ほとんど100%の実態である。米までこんなことになって欲しくないものである。

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