殺虫剤で殺されたハイエナの肉を食べたハゲワシが少なくとも10羽、中毒状態になっていた。弱ったハゲワシたちを救おうと、ペレグリンファンドのヴァレリー・ナソイタ氏はレンジャーたちとともに6時間、作業に当たった。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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アフリカ、ケニアの保護区で、ハイエナの死体とそのそばに倒れている10羽ほどのハゲワシたちが見つかった。レンジャーたちには、何が起こったのかがすぐにわかった。毒にやられたのだ。数羽には、まだ息があった。
ここは、マサイマラ国立保護区の中にある民間管轄のオルキニエイ保護地区。管理人のサイモン・ンコイトイ氏は直ちにヴァレリー・ナソイタ氏を呼んだ。
「ワシたちを救いに来てほしい」
ナソイタ氏は、ハゲワシを保護する非営利団体「ペレグリンファンド」の保護地区連絡係である。
7種のハゲワシが絶滅の危機
アフリカ大陸には11種のハゲワシ(ヒゲワシ類を含む広義のハゲワシ類)が生息しているが、このうち7種が国際自然保護連合(IUCN)によって近絶滅種(critically endangered)または絶滅危惧種(endangered)に指定されている。保護団体や大学の研究者らが2015年に発表した論文によれば、過去30年の間にアフリカのハゲワシ8種の個体数が平均で62%減少している。(参考記事:「ハゲワシ “嫌われ者”の正体」)
「これは完全に、危機です」と、ケニアの猛禽救護団体「ケニア・バード・オブ・プレイ・トラスト」のサイモン・トムセット氏は語る。
同氏やナソイタ氏らが素早く連携することで、助かる鳥もいる。しかし、彼らにとって何より頭の痛い問題は、いかに毒を摂取させないかということだ。
ナソイタ氏が中毒のハゲワシの救護にあたる。同氏は中毒の事例に素早く対応するかたわら、地元のコミュニティでハゲワシたちの重要性について教えている。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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ハゲワシが毒で死ぬ理由
アフリカにおけるハゲワシの中毒死には2種類ある。主にアフリカ南部では、密猟者が死んだゾウやサイに毒を塗り、意図的にワシを毒殺する。ハゲワシの動向によって、密猟行為が国立公園のレンジャーにばれるのを防ぐためだ。6月に発生した特に陰惨な事例では、ボツワナで毒を塗られたゾウを食べたことで、530羽を超える絶滅危惧種のハゲワシが死んだ。
アフリカ東部ではどちらかというと、ヒトと捕食動物の間の対立に巻き込まれるケースが多い。ライオンやハイエナなどに家畜を殺された牧畜民たちが、復讐のため、やられた家畜の死体に毒性の高い殺虫剤を振りかけるのだ。毒は捕食者を死なせるが、同時に捕食者の死体を食べに来たハゲワシも死なせてしまう。(参考記事:「ライオンが毒殺される、アフリカで深刻になる問題」)
ケニアの人口増加とともに、マサイマラは復讐のための毒殺が特に頻発する場所になったとトムセット氏は言う。保護区を管理する「コッターズ野生生物保護基金」によれば、2カ月に1度はこうしたことが起こっているとみられる。
一番恐ろしいのは、人間です。。人間が自然を壊してる