アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

2020 FILMeX & TIFF<DAY 9>(下)

2020-11-08 | アジア映画全般

昨日見た映画の続きです。有楽町朝日ホールの『デニス・ホー』@FILMeXから移動して、六本木のTOHOシネマズで「台湾電影ルネッサンス2020」の2本を見ました。有楽町と六本木は、地下鉄日比谷線1本で移動できるので比較的楽ですが、電車に乗るまで&降りてからの歩きも含めると、最低でも40分はかかります。というわけで、お店でゆっくりランチもしていられないことから、今日も自家製サンドイッチが昼ご飯です。中身やパンの種類は数種類用意してあるのですが、そろそろ飽きてきました...。そこで、いつも飲み物を買うコンビニで肉まんに浮気。チキンサンドと一緒に食べて、バナナサンドは残すことにしました。台湾映画を見るんだし、雰囲気が出ていいですよね。六本木ヒルズは野外にたくさんベンチというか座る場所があるのでありがたく、またゴミ箱もちゃんと用意されているので助かります。有楽町側で食べる時は、ゴジラ像の下のベンチで食べて、サンドイッチを包んだラップ等ゴミはお持ち帰りだったのです。さてさて、では肉まんパワーで見た2本をちょっとご紹介します。

『愛で家族に~同性婚への道のり』
2020年/台湾/北京語、英語/90分/原題:同愛一家/英語題:Taiwan Equals Love
 監督:ソフィア・イェン(顏卲璇)
 出演:ウー・シャオチャオ(呉少喬/ジョヴィ)、チウ・ミンジュン(邱明[王匀]/ミンディ)、ワン・ティエンミン(王天明)、ホー・シャン(何祥)、リョン・チンファ(梁展輝/アグー)、ティン・ザーイェン(丁則言/シンチー)
画像はすべて©Portico Media Co., Ltd.

3組の同性カップルを主人公に、台湾で同性婚を認める法律が成立するまでの歩みを捉えたドキュメンタリー映画です。3組のカップルは、幼い娘のいるジョヴィと、その娘をわが子のようにかわいがるミンディという、多分30代の女性のカップル、初老男性のワン・ティエンミンとホー・シャンでのカップル、マカオから台湾に来てジャムの小さなデリバリー店をやっているアグーと、台湾人シンチーの20代男性カップルなのですが、それぞれに問題を抱えています。

ワン(右)とホー(左)はもう30年にわたる仲なのですが、最近ホーに認知症の症状が出てきて、病院に通っています。2人はゲイバーで知り合い、やがて同居し始めたのですが、ホーにはその前に結婚した妻との間に息子もいて、ワンは何とかホーと息子の関係も修復しようとしています。

ジョヴィ(右)とミンディ(左)は、ジョヴィが人工授精で産んだ娘ミャオミャオ(中)をはさんで、本当に仲のいい一家なのですが、自分たちが正式な家族とならない限り娘の将来は暗い、と考えています。そのため、同性婚が法的に認められるよう、ジョヴィはその中心となって活動をしています。

アグーとシンチー(一番上の集合写真左端の2人)は自分たちの作るジャムをネット販売している起業家なのですが、まだ軌道に乗ったとはいえず、苦闘が続いています。また、アグーが外国人だということがひっかかり、たとえ台湾で同性婚が認められたとしても、アグーは外国人としてその恩恵に浴せないのでは、と心配しています。

こういった、年代も性別も異なる3つのカップルを選んで、それぞれの事情を見せていくのですが、その間に同性婚を巡る台湾での反応も紹介していきます。当事者たちと共に同性婚を支持する人も多いのですが、その反対に「結婚は男と女がするものだ」という言葉を投げかけたりする人も多く、同性婚を認める法案はなかなか成立しません。2017年にやっと成立する見通しがつき、実際に成立したのが2019年5月17日で、これで台湾はアジア初の、同性婚を認める国となったのです。その後に行われた、本作の主人公たちの結婚届シーンなどを映して、このソフィア・イェン監督作は終わります。少し綺麗にまとまりすぎの感があるものの、日本の状況なども考えさせられる作品でした。

 

『足を探して』
2020年/台湾/北京語、台湾語/115分/原題:腿/英語題:A Leg
 監督:チャン・ヤオシェン(張耀升)
 出演:グイ・ルンメイ(桂綸鎂)、トニー・ヤン(楊祐寧)
画像は下のポスターを除きすべて©Creamfilm Production

 ID-2848853

ギョッとするような邦題ですが、まさに言い得て妙のタイトルです。原題は『腿(レッグ)』だけで、上のポスター(あまりに素敵だったので、ネットからコピペしました)にあるトニー・ヤン扮する男の切り取られた足を探すストーリーとなっています。よくできたブラック・コメディで、今年の金馬映画祭のオープニング作品に選ばれた、というのも納得です。冒頭部分でトニー・ヤンが死んでしまうので、あらら、カメオ出演だったのかしら、と思っていたら、その後随所にフラッシュバックが差し挟まれ、トニー・ヤンもたっぷりと見られますので、ファンの方はご心配なく。

ダンスの名手である妻チェン・ユィイン(錢鈺盈/グイ・ルンメイ)を看板に、ダンス教室を経営するジェン・ズーハン(鄭子漢/トニー・ヤン)はふとしたことから足の傷を悪化させ、病院にかつぎこまれた時には「足を切るしかない」と医者に言われます。泣く泣く右足のふくらはぎの下あたりからを切断したものの、その甲斐もなく、次の日ズーハンは帰らぬ人に。寝台車に遺体を乗せ、家に連れ帰ろうとしたユィインでしたが、気がつくと遺体は足がないままでした。切断された足を持ち帰ってズーハンの遺体に付けてやろうと思ったユィインは、病院に掛け合ったのですが、あちこちたらい回しされた結果、やっと主治医を捕まえたものの、その後2人で出向いた病理検査室でも発見することができません。ユィインが手術前の誓約書に「切断された部位は不要」とチェックを入れたため、どうやら廃棄処分になったようなのです...。

このストーリーが展開する合間合間に、2人が最初に出会った時から、結婚してダンス教室を開くに至った経緯、そこで起きたヤクザがらみの事件やズーハンの浮気等々のフラッシュバックが差し挟まれます。そこに登場する人物たちも、クセのある人が多くて面白く、一瞬たりとも退屈しない作品に仕上がっています。台湾にはこの手のコメディ映画も多いのですが、その中でも上出来の作品です。さらに、脇役にも個性豊かな人が出演していて、院長役には大ベテランの金士傑(ジン・シージェ)、病院内で出会うスタッフで最後にユィインを手助けする青年には劉冠廷(リュウ・クェンティン)~FILMeXの『無聲』の先生役~、病院で騒ぐユィインを逮捕しにやってきた警官には陳以文(チェン・イーウェン)が扮しています。ほかに納豆も出ていたようなのですが、どれかわからず残念でした。

チェン・イーウェン(上写真の腕を組んでいる警官)は、以前は『ジャム』(1998)や『運転手の恋』(2000)の監督として知られた人なのですが、近年はすっかり俳優業に転じたようで、昨年TIFFで上映された『ひとつの太陽』ではいろんな演技賞を獲得していました。『ひとつの太陽』の監督が鍾孟宏(チョン・モンホン)で、彼は『足を探して』ではプロデューサーとなっています。そして、本作の監督チャン・ヤオシェン(張耀升/下写真)は、『ひとつの太陽』の脚本家だったのです。というわけで、本作は小説家であり脚本家としても活躍するチャン・ヤオシェンの監督デビューに際し、チョン・モンホンとチョン・モンホン組の俳優たちが全面協力した作品である、と言えそうです。金馬奨でも何部門かにノミネートされていますので、その結果次第では日本公開もあるかも知れませんね。ご期待下さい。

 


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